野球選手が走り方を学ばなければいけない理由
先日、阪神タイガースさんの新人合同自主トレの講師として参加して来ました。阪神タイガースさんの走りの臨時コーチも7年目になりました。
「陸上競技と野球の走りは違うから」この台詞はもう何回言われたか分かりません。僕のような野球とは畑違いの人間が走りや盗塁や走塁を指導するみたいなことは野球関係者からすると「は?」となるのは自然です。当時はおそらく選手の皆さんもただでさえキツイ走りの練習に元陸上選手が来てまたキツくなるじゃんと少なからず感じたと思います。
もちろん速くはなりたい。でも、それって生まれ持った先天的なものなんでしょと感じている選手もいました。これまで多くの野球選手に質問してきましたが、走るトレーニングが好きな選手に出会ったことがありません。
この感覚をどう変えていくか。
1.速く走る
僕の肩書きでもあるスプリントコーチとは、人の足を速くすることを生業としています。当然ながら関わる人たちが速く走れるようになることが最重要事項です。このnoteでもどのようなアプローチをしているかは過去の記事で書いておりますので興味ある方は読んでみてください。
2.怪我予防
今日の本題はここからです。まず走りを学ぶことがなぜ怪我予防に繋がっていくかです。野球界のみならず、投げ込み、走り込み、打ち込み、といった「量」を重要視したトレーニングはよく見受けられます。アスリートとしてなりたい自分の姿。アスリートとしてできないことができるようにするために必要な技術(テクニック、スキル)の実現には基礎体力、基礎筋力はなくてはならないものだと思います。所謂、土台の強化にはどうしても「○○込み」はついて回って来てしまうと思います。野球界でも「○○球投げ込み」みたいな記事をよく聞きます。ここでポイントになるのが、その「投げ込み」をどういった「形」(フォーム)で行なっているかだと思います。走ることも然りで、陸上界でも「走り込む」練習は珍しくなく誰もが経ているものです。
陸上選手の場合、とにかく「形」(フォーム)にこだわります。野球選手も同じように専門的な投げる打つの時に一つ一つの動作を意識しながら、気にしながら行なっていると思います。そういった動きを試合で出すことがゴールだと思います。
投げ込むことが目的となり、形が乱れ、肩に痛みが出る。手段と目的が入れ替わってしまう。僕もたくさんその失敗をしてきました。僕は自爆系の怪我は自分自身の動きになんらかのエラーが発生して起こるものだと考えます。合理的な正しい動作習得をしないまま走る、投げる、打つ、が怪我の原因につながっていく、専門的な領域は正しく合理的な動作を指導してくれる人がいる。しかし、走りに関しては正しい知識がないまま〇〇込みが行われる。結果怪我の可能性が高まる。そういったことを防ぐためにも走り方を学ぶ必要があると考えます。
3.野球との接続
おそらく多くのスポーツの力の出し方の共通点としては「短い時間で大きな力を出す」だと思います。
バットにボールが当たる、その刹那にどれだけ大きな力を出せるか。まさに走りも同様なことが起きています。地面に足が着地したその時、その一瞬で大きな力を出す。日本人で初めて9秒台で走った桐生祥秀選手の接地時間は0.08秒だったと言われています。つまりは動作は違えど行おうとしていること、行なっていることに大きな違いはありません。
しかし、野球選手の走りを見ると強く地面を蹴るという動作が非常に多く見受けられます。地面を強く蹴るということは、その分地面に長く足が着地していることを意味します。先ほどの「短い時間で大きな力を出す」とは真逆の動きをしてしまっています。こういった説明を選手にすると腑に落ちる場合が多く、走りは別物であるという考え方に変化が出てきます。正しい走り方を習得することで、結局のところ力の発揮は同じだよねという考え方が野球と走りの接続をスムーズにしていくと考えます。
走り方を学ぶことで、足が速くなり、盗塁走塁にいい影響を及ぼすだけでなく、怪我予防や野球のバッティングやピッチング、守備などにもいい循環を与えられると信じてやってきました。
選手、監督コーチ、トレーナーさん達とどんどん意見交換をして選手にとって最善の走りのアプローチを目指します。
写真:スポニチTIGERSフォト
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