211
2月11日。この絵が生まれて丸一年が経った。
今日までに思った以上の反響を頂き、仕事に繋がる話にも発展した。この先もたくさんの方々に届いて欲しいと思いシリーズ名を付けようと早一年。「211」と名付けることにした。
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数字の形を分解して再構築すると、斜線の入った四角の形になる。枠はキャンバスの四角、斜線は"死角"。
斜線は、表などで空欄や余白を強調する「無い」を示すもの。空白、余白として存在しているものを、無い、見えないものとして表す。存在しているのに、見えない範囲。死角。それはまるで、人の心のように思う。
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一年前の今日、一枚の絵を描いた。
普段は下描き以降の作業は全てパソコンを使うが、この日は何となく、筆圧を感じたかった。
「感情と同じ圧で描ける」それがアナログ画の醍醐味だと思っている。うまく描くつもりも、完成できる絵を描くつもりもなかった。ただ感情をぶつけたかった。筆だとどうしても柔らかくなる。もっと圧に耐えられるものを。
思いついたのは、期限の切れたカードだった。
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言葉に成れない感情は無いかもしれないけれど、言葉にできない感情はたくさんある。人のコミュニケーションの主が言葉である限り、それをうまく使えないわたしは感情が滞留し、たまに気が狂いそうになる。
わたしの狂いそうな気はその日、ひとつの作品に成れた。
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抽象画の魅力は、具体的な造形が無いところ。様々な要素を構成して表現するので、人により見え方や感じ方が違うところ。感想を聞き、新しい感覚に出会えることもある。わたしからは見えなかった、感情の「死角」だ。
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言葉にできなかった感情から生まれた抽象画たち。そんな抽象画たちのことを、わたしはやはり言葉に出来なかった。211は誕生日という"出来事"を表しているが、わたしにとってはこの3つの数字がひとつの動かぬ真実であり、これ以上もこれ以下もない表現だと思っている。
211という数字には「ネガティブを手放し、前を向く」という意味もあるらしい。誰かと共に前を向ける作品で在りたい。