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23.あんた、もっと笑いんしゃい



祖母に言われた言葉が、ずっと心に残っている。
「あんた、もっと笑いんしゃい」


見事に無愛想な初孫だった。
笑顔の写真は少なくとも、祖母が持っていたアルバムには無かった。自分の笑った顔が嫌いだったわたしは、カメラを向けられてもガンを飛ばすことしかできなかった。
今更だけど、少しずつ笑えるようになったんだよ。写真に残せなくてごめん。


通夜と葬儀を終え、祖母の家の周辺を散歩していると、建物の隙間から運良く月食を見ることが出来た。祖母が見せてくれたように思えた。


暫く月を眺めていると、近所の人も外に出てきたので「綺麗ですね」なんて言いながら一緒に月を眺めていたら、わたしの話になった。祖母は生前、近所の人たちに、わたしのことを話していたらしい。

「たまに新聞に載っとんしゃろ、記事。読みよるよ。」「心にぐっとくるともあったよ。今もドラム叩きよると?」

なんとバンドのことまで近所の人に知られていた。

恥ずかしさと、切なさと一緒に、大切にしてもらってたんだなぁという、あたたかい感情が一気に体内に流れ込んできて、どうしようもなくなった。ごめんね、ありがとう。それしか出ない。出たところでもう伝わらない。でもごめんね、ありがとう。


川向かいで開催されていたライブ会場から「見上げてごらん夜の星を」が聴こえてきた。きょう祖母を見送る際、葬儀場で流れた曲と同じだった。

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きょうは祖母の一周忌でした。
仏頂面の初孫は、不器用ながらも笑ってます

笑うと少し、回復するよね、凄いよね、笑顔。

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