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でも好きだった。

小学生の頃なんて魔の時代だった。

自分の正しさを頭のてっぺんから足の先まで詰め込んで生意気が服着て歩いているだけのペラペラな薄い偽もんの時代だった。

私は学年一の秀才といわれる友達と漫画の上手い友達と3人で仲良く新聞を作っていた。

小学校の6年のこと。

「ゆめ」なんてタイトルをつけた毎月発行の新聞を作っていた。

私たち三人は生徒の中で一番 帰宅するのが遅くなるほど新聞を作ることに夢中になっていた。

ある号などはUFOを見た!というネタで紙面埋めたり、校内のお知らせや飼育していたウサギや鶏の餌の募集などたかだかA4の藁半紙1枚の小さな新聞を作ることに夢中で他の何より楽しかった。

ある日、学校の授業で水泳の授業があったのだけど男女の着替えについて一悶着あった。ある男子が女子の着替える時間の方が長いのは不公平だとか何とか…そんな内容だった気がするが、もう詳しい内容はすっかり忘れてしまった。

とにかくそれが元で男子と女子とでクラスを二分する大きな問題になってしまった。

そこへよせばいいのに私はクラスの男子のリーダー格の男の子がした意見にピシャリとダメ出しをしてしまった。

…それで男子が引いてくれて一件落着したかのように見えていた。

 その騒動のあった日も私たち…秀才と漫画が抜群に上手いもう一人の友達との3人は新聞をやっていた。

そして、新聞を印刷し終わって下駄箱へ上履きを靴に履き替えに行った時のことだった。

下駄箱の周りにクラスの男子が全員残っていた。

私は「どうしたの?なんでみんなまだいるの?」と不思議な気がしながら上履きから靴に履き替えていた。

…なんとなく男子から伝わってくる空気から嫌な気配を感じていた。みんなの目が怒っているようなのだ。

その男子の中から例のリーダー格の男の子がつかつかと私のすぐ側まで来ると、いきなり私のほっぺたを手のひらで思いっきり叩いた。

ペシって音がした。

私は何が起きたかもわからなかったかもしれない。

だけどその男子の目を見た。

私は叩かれたほっぺに手をあてるとクルリとみんなに背を向けて走り出した。

背を向ける瞬間、私の後ろから来ていた女友達2人の驚いた顔が目に入った。

………………私は一目散に走ってその場から逃げた。何も言わずに。何も言えずに。

走って走って家に帰り着いた。

きっと息もしてなかったと思う。

もしかしたら時間をワープしたか空を飛ぶようにして帰ったかもしれない。

不思議なほど歩いた記憶がなかった。何も目に入らなかった。

何にもわからないほどものすごいスピードで帰った。

誰にも会わずに二階の自分の部屋に駆け込むとランドセルを投げ捨てて、畳に突っ伏して泣いた。オンオン泣いた。もう身体から水分が川のように出ていった。

それまで経験したことのない悲しみだった。

だけど私は家族に気取られまいとして晩ご飯の席に着いた時は平然とした態度で臨めていたと思う…。

晩ご飯を食べ始めてすぐに電話が鳴った。

母が出た。

母の話す声が全部聞こえる。

あのリーダー格の男子のお母さんからだった。

「え〜っ、そんなことがあったんですか?うちの子はそんなこと何にも言わないです。…………そうだったんですか、それはまあ、ご丁寧に。…………ええ、子ども同士のことですから。」

電話を切った母から「あんた何にもお母さんに話してくれんかったんね。今日何があったん?」って。

内心その男子に腹がたった。

要らないことを親にまで話して…って。

母から聞いたところによるとその男子が家に帰ってから様子がおかしかったらしく母親が問いただすと同じクラスの女子のほっぺを殴ったと白状したため慌ててお詫びの電話をかけてこられたそう。

私は母に知られたことの方が恥ずかしかった。

まだ何で叩かれないといけないのかもわからないというのに。

それよりも私の中にあったのは

「好きな子に嫌われていた。」という事実の方が激しくショックだったことだった。だって、私は密かにその男の子に片思いをしていた。

きっとだから生意気にもその子に絡んで意見をしたのだと思う。自分がその好きな男の子のプライドをひどく傷つけていたとも知らないで…………。

はるかな時を経て再び再会するのだけどその話はまた………


兎にも角にも子供の時代は不器用で残酷である。

子供はそうやって野生の時を生きてきた。

大人になった今、ときどきその野生の風に吹かれたくなる時がある…

あの時の男の子の目に焼かれたように。






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