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小粋なジョークも面白い『アントマン』

久しぶりにわかりやすくストレートな物語で、とても面白かったです。もはやMCU作品のゾーンに入っている気すらします。


ダメ夫が娘のためにヒーローになる

主人公はさえない男スコット・ラング。セキュリティの厳しい建物に侵入したことで捕まり、服役していました。出所したら前科のために職探しはうまくいかず、妻と離婚したことで自由に娘にも会えません。そんなダメ夫が娘のためにヒーローになります。博士の発明でヒーローに変身する構図は仮面ライダーのようだと思いました。(偶然どちらも昆虫がモチーフ。)元々スーパーパワーを持たない人物がヒーローになるのはMCUでもめずらしいですね。日本人からすればなじみ深いですが、やっぱりさえない主人公が力を手にする流れは王道でやっぱりわくわくします。


すごくスケールの小さい物語

2つの意味でスケールが非常に小さい物語です。一つはストーリー。簡単に言ってしまえば博士の設立した会社が危険なスーツを作ろうとしているのでその研究を盗むというストーリー。前作の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で世界の命運をかけてヒーローたちが戦っていたとは思えません。主人公がアントマンになるモチベーションも、世界平和のためというよりは娘と会うためです。しかしだからこそ簡潔ですしスコットやハンク博士のパーソナルな部分も深堀されていたのはよかったです。MCUシリーズを見ずにこの作品単体で見ても十分に面白いと思います。

もう一つはそのままの意味で、サイズ感。アントマンはアリを使役することで、基本的に他に大きな機械や武器を使って戦いません。サイズを小さくするスーツとアリと交信できる装置だけで逆に大きな戦力を得て、相対的に可能なことの規模が大きくなるというのは面白かったです。サーバールームで羽アリに乗って飛ぶ様子はビル群を飛んでいるようでした。

またアントマン視点では激しい戦いが起きていても、実際のサイズではそうでもない。トーマスのおもちゃに轢かれても大事故ですが、実際は「カタン」とトーマスが倒れただけ。緩急のつけ方が面白かったです。

小規模でも大きく見せることができるのは表現の幅としては広がって面白いですが、アントマンにできないことと言えば人命救助などでしょうか。キャプテンのように、瓦礫から人を守るようなことはおそらくできません。そういった意味でアントマンの活躍の場は限られますが、他の作品とクロスオーバーすることを考えると局所的な能力を持っていた方が活躍の機会はあるかもしれません。

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小粋なジョーク

物語序盤から笑いを誘う演出があり、しかも粋なものが多かったです。特に好きだったのは仲間のルイスが口笛で「イッツ・ア・スモールワールド」を吹いていたシーン。それも「口笛なんか吹くんじゃないぞ」と言われた直後でした。

もう一つはスーツケース内でヴィランのダレンと戦っているシーン。戦っていたら偶然iPhoneのホームボタンを押してSiriが起動し、ダレンのセリフに対して「お気に入りを再生」していました。聞き取る能力が低いというネタは海外も共通なんですね。

ディズニープラスでは音声と字幕を変えられるのでせっかくなので日本語と英語でどう表現が違うのか確認してみました。

まず日本語音声では「今日は最低だ!」に対してSiriが「the Cureを再生します」と返答します。日本語字幕では「どこを蹴ってんだ!」に対して「お気に入り再生」と字幕が出ました。英語音声と字幕ではどちらも「I'm gonna disintegrate you!」に対して「Playing Disintegration by the Cure.」でした。日本語音声は文脈的にも違和感のないセリフですしSiriが間違えるのもわかりますが、字幕はちょっとわかりずらいですね。


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