「フランスのシェリー酒?」
僕の好きなお酒はスペインのシェリー酒ですが、なんと在庫処分と数百円でフィノやモスカテルが売ってたんで、備蓄してしまいました。
そして、そこに、ちょっと贅沢、やっと意味がわかったチーズ、コンテです。
コンテの食べ方ですが、外皮から中心に近付くほどに味が強くなりますので、こいつをチータラみたいに細めの短冊状に切り、外皮の方からゆっくりねぶります。
決して噛まずに、忍耐強くねぶるのです。
塩分の控えめなこのチーズの真骨頂「UMAMI」とナッツ感をロケットに、ベンチャー企業気分で脳から天国へと打ち上げます。
舌の上でもろく溶けていくので、そろそろと先へ進めていきます。
味の強まりと共に、だんだんと溶けやすくなっていきます。
そこに、差し挟む、この安かったけどミネラル感強めの独特なフィノが、そんなに打ち上げなくともいいんだよと、もはや天国へと設置された軌道エレベーターのように囁くのでした。
しかしまた、奇妙なことにですよ、このスペインの強化ワインと、コンテというフランスのチーズ、なにゆえに国境を越え愛し合えるのでしょうか?
不思議に思い調べてみるとすぐに思い出しました。
そうなんです、このコンテチーズが作られる、フランスのジュラ山脈あたりには、僕なんかには少し手の出ない、やや高級で特殊なワイン「ヴァン・ジョーヌ」があったのです。
この風変わりな黄色い白ワインは、なんと意図的に空気に触れさせて熟成させるという工程を経て作られる、フランスワインとしては、かなりの異端児なのです。
普通はですよ、酵母にアルコールを作らせようと思えば、酸素を遮断した状態でなければ上手く働いてくれませんし、それどころか、酢酸菌に醸されて、お酢になってしまうやもしれません。
そこをスペインのシェリー酒というやつは、独自の産膜性酵母というやつで、樽の中に空間を残して酸素に触れつつも、しっかりと酒になっていくのですから、あっぱれなもんです。
まさにそこ、フランスの山岳地帯ジュラ地方の「ヴァン・ジョーヌ」と、スペイン南部のヘレス名産「シェリー酒」の共通点なのです。
だから合うんだとか、そんな安易なことではないんでしょうけども、僕はスペインチーズも
好きでありますから、なんにせよ、どこかしらに共通点が眠っているのではないでしょうか?
そんな偶然の出会いが、この日本の食卓で起こり得るわけですから、和洋と分けたとて、洋食も計り知れないもんですよ。
とまぁ、そんなコンテのせいで、他に晩飯もなく、ただただねぶるだけの日でしたが。