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私の脳内に住み続ける何人もの菅田将暉



『主演 : 菅田将暉』

という文字を見た友人から「また菅田将暉、映画出るの?」と言われたことがある。なんかいつも映画出てない?と。



近年、2020年から言えば、

2020年8月 『糸』
2020年10月 『浅田家!』
2021年1月 『花束みたいな恋をした』
2021年6月 『キャラクター』
2021年8月 『キネマの神様』(二度、公開が延期になり本来は2020年12月公開予定だった)

そして、2021年10月には『CUBE』が公開を控えている。


まさに2ヶ月間隔、飛ぶ鳥を落とす勢いで新作の菅田将暉主演映画が公開されている。



恥ずかしながら、私もかつてはそう思っていた。あ〜また菅田将暉の映画やるんだ、世間は菅田将暉がそんなに大好きなのか?と。

でもその頃の私はまだ菅田将暉が出演する映画をしっかり観ていなかっただけであって、映画を観続けていくと気が付いた頃にはもう私の頭の中には『菅田将暉』であって『菅田将暉』ではない『菅田将暉』が何人も根強く住み続けていた。

菅田将暉のファンは『菅田将暉のファン』でもあり、『菅田将暉が演じた人物のファン』でもあるのだと理解した頃にはもう私は菅田将暉沼に両脚しっかり沈んでいて、もうこの沼を知らなかった頃には戻れない自分になっていた。


今回は #菅田将暉作品を語る という素晴らしすぎる企画に便乗し、その私の頭の中に住み続ける何人もの菅田将暉について簡単に紹介していこうと思う。


皆さまご存知の通り、菅田将暉はデビューした2009年から現在までに数々の映画作品やドラマ作品に出演している。

当たり前のことを言うが、演じた役は全て別人である。その作品の中にはそれぞれ違う顔をした菅田将暉がいるのだ。菅田将暉だけど菅田将暉じゃない。髪型や服装は勿論、喋り方、瞳、歩き方や走り方すら違う。

先日、行われていた「#菅田将暉を映画監督が語るというSHAKE企画で、『糸』瀬々監督と『浅田家!』中野監督と映画tiktokerしんのすけさんが、「論文が書けそうだ」と盛り上がっていた話がある。

「菅田将暉は、その土地で生きている青年を演じることができる」

その作品の土地で生きている青年を演じれるからこそ、生々しさがある。土地が変わればニオイまでそこに居る人になる。時代が変われば顔も変わる。現在公開中のキネマの神様では、しっかりその時代の人になっていて昭和顔の菅田将暉が見れる、と。




例えば、菅田将暉が出演する映画を三作品連続で鑑賞したとする。外見を含め、違う菅田将暉が三人、画面の向こう側に存在するのだ。そして画面に映る男は菅田将暉のようで、菅田将暉ではない。

したがって、菅田将暉作品を三作品連続で鑑賞しても飽きない。もう自分でも言ってる事がよく分からなくなってきた。

▼菅田将暉作品を語る

2012年映画『王様とボク』

この作品で菅田将暉が演じたモリオ。
モリオは6歳の時に事故で植物人間になってしまったが12年後、奇跡的に目覚める。体は大人の様に成長してるものの心は6歳のまま世間から取り残されてしまった。

仕草や身体の軽さ、瞳の真っ直ぐさ、演技じみた存在ではなく、純粋無垢な6歳のモリオがそこに居る。菅田将暉は自分の年齢でさえも操れるのかと、怖ささえも感じた。
この映画が仮面ライダーとしてデビューした3年後に公開されたというのも衝撃である。



2014年映画『そこのみにて光輝く』

菅田将暉と言えば、で必ず名が挙がるこの作品。
『#菅田将暉作品を語る』でも浅田家!の中野監督が菅田将暉出演オススメ作品としてこの作品を挙げていた。この映画の中で菅田将暉を観て、この人は誰だ?!と衝撃を受け、「この役を"ちゃんと"演じられる若い子が出て来たんだな」「絶対この人とやりたい!」と思ったそうです。


この作品で菅田将暉が演じた拓児は赤い短パンジャージ姿に髪はプリンでまばらな金髪、歯がヤニで黄ばんだ仮釈放中の貧困家庭で生きる青年。大きな声に品のない言葉遣い。パチンコ台の前に座るその風貌は、あ〜いるいるこんな地元のヤンキーって感じ。

そう、まさに拓児の姿は
「その土地で生きている青年」だった。

誰にでも人懐っこく素直、不器用ながらにもずっと姉ちゃん想いの拓児の優しさがこの絶望しかないのではと思ってしまうほどのキツい現実を、明るく映してくれているように感じたし、彼のギリギリを生きている危なっかしさや脆さ、生々しさを目の当たりにした私たちはパチンカス拓児を決して嫌いにはなれないのだ。
小学生のように達夫(綾野剛演じる主人公)に甘えたりちょっかいを出す姿、目つきが変わり怒りに震えながら呼吸を乱す姿、泣き叫ぶ姿も全て『函館の地で拓児として生きた菅田将暉』だから演じることができたのだと思う。

映画「男子高校生の日常」で黒髪もさ男な高校生のタダクニを愛でた半年後に、こんな拓児の正面衝突を受け止めねばならない菅田将暉ファンは確実にメンタルが強い。


ちなみに拓児の8ヶ月後には、つけまつげを付けたギャルメイクにミニスカートを履きこなす女装好きの美男子が映画「海月姫」で公開される。スカートを違和感なく綺麗に着こなす為に10kg以上の減量、骨盤矯正やエステにも通ったという菅田将暉の磨きがかかった美しさは眩しすぎて直視できない。私は女としての自信を失った。

ちなみに、「男子高校生の日常」でも菅田将暉演じるタダクニのミニスカ姿が見れるので、海月姫の蔵子のミニスカ姿と見比べてみて欲しい。


2016年公開の映画「ピンクとグレー」では、前半はきっと視聴者は皆、菅田将暉が演じたエバちゃんをニコニコしながら見守るが、後半はきっと彼に嫌悪感を抱く。突然と存在がなくなってしまった事に激しく動揺するほど、私は菅田将暉が演じたエバちゃんが好きだったのだ。今作品でも、菅田将暉の演技力に脱帽する。

2016年公開の映画「溺れるナイフ」で菅田将暉が演じたコウちゃんには、作品を観終わった今でもコウちゃんは浮雲町に存在し続けていると本気で思ってしまう程、浮雲町という土地に生きて生かされていて、触れてはいけないような脆さと儚さがある。現に、菅田将暉はこの役を演じる上で減量する為に絶食し、本人も「当時のことは栄養が足りてなかったからあまり覚えてない」と答えている。消えてしまいそうな脆さ、儚さ。でもそんな姿が、まさに浮雲町に生きるコウちゃんなのだ。

2018年映画「生きてるだけで、愛。」で菅田将暉が演じた津奈木は、ちょっと私、個人的に彼のことが好きすぎて逆に何も話せません。
私だって、買って来てくれた2つのお弁当を見せられながら「どっちが食べたい?」と津奈木に聞かれたいし、「あとで半分ね」と言われながら一緒に食べたい。

2018年映画「となりの怪物くん」では、純粋無垢な笑顔の菅田将暉演じるハルに会える。枯れた瞳から涙を流すハルがあまりにも美しく、ハルの垣間見る孤独感も全て受け止めながらこの映画を観終えると、頭の中はハルの太陽のような愛くるしい笑顔でいっぱいになる。

2019年映画「タロウのバカ」は気軽には人に進めづらい作品かもしれないが、YOSHIが演じたタロウも菅田将暉が演じたエージも仲野太賀が演じたスギオも、きっとこの日本の何処かに必ず居る。そんな痛々しい生々しさがある。
雑魚キャラの菅田将暉が徐々に狂ってゆく様は、映画「ディストラクションベイビーズ」でも目の当たりにしたが、エージには言葉では語らなくとも視線やふとした表情から大きな愛情を感じ、彼らの進む未来に救いを求めてしまう。
菅田将暉がこのタイミングでこのような映画に出演のしたことにも少し驚いた。


▼おわりに


ここまでダラダラ語って結局何が言いたいかというと、作品の中の菅田将暉は菅田将暉ではなく、作品の中で生きるぞれぞれの人物であるということ。

映画作品、俳優として当たり前の事なのかもしれないが、菅田将暉はそれを違和感なく、その土地やニオイなど色々なものと対峙して自分のものにし、表現する事ができる能力を持つ俳優であることは確かだ。前線で活躍する映画監督らからのお墨付きである。


そして私は、菅田将暉が演じた一人一人が好きで、一人一人に愛おしさを感じている。彼らがこの先も、それぞれの世界で幸せに生きてほしいと願ってる。これからどこの土地のどんな菅田将暉に出会えるのか。

まだ見ぬ菅田将暉を想像しながら、私は胸を高鳴らせている。




はい!!マクベス最高!!!!!!!(マクベスの亡霊)

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