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チョコミント

今からの文章は私の妄想であり、現実の事項とは一切関係ありません。

2023.5.18のyawnzzn投稿からインスピレーションを受けて。

あの日街で彼と会った。彼というのはハイスクールのクラスが一緒でほとんど喋ったとこのない彼である。
彼はいつもクラスでは話題の中心にいる。冗談を言ったり大勢の友人に囲まれて過ごしている。ちょっとやんちゃな彼はいわゆるクラスカースト上位の一軍である。反対に俺はというと・・・教室の隅で何とか一日が過ぎるのを待っているだけである。容姿も良く明るい性格の彼とはまるで住む世界が違う。俺もあんな風になれたらなあと思ったこともあるが、あんなチャラい奴にはやっぱりなりたくないなとも思う。

その日は土曜だった、学校は休みで俺は家でやることも特にないし暇つぶしに最寄りの図書館に行こうとしていた。ついでに街でそろそろ無くなるノートも買いに行こうかなと思っていた。歩いていける距離なので俺は歩いて向かっていた。そこで彼と遭遇した。
彼は頭にはビーニーを被り、Tシャツにグレーのスウェットパンツ姿で手には何か飲み物を持っていた。いつも友人たちに囲まれているイメージが強い彼は、一人で歩いているのが新鮮だった。そもそも同じ町に暮らしながら学校以外では会ったことは無かったが。俺は彼に気が付いたが、彼は俺には気が付いていない。休みの日に知人に会うのは、なにか気まずい。親しくないなら尚更で、気づかれないならそのほうが気楽だ。
そうして彼のあとを歩く俺、たぶん目的地は違うであろう。
そうこうするうちに彼が急に振り返った、なるべく気が付かれないように少し離れて歩き気配をなるべく消したつもりだったが。
『クラスのKよな』とこちらへ走ってきて声をかけられた。俺は「おおう」しか言えず鳩が豆鉄砲を食ったように驚いていた。すると彼が
『お前今からどっかいく?』
「ちょっと図書館まで・・・・」
『ふーん。俺さ今から公園に行こうと思うんだけどさ、お前さ一緒に行く』
「いやぁ、図書館に行こうと思うし、急に言われても・・・・」
『俺の知り合いのおじさんが、公園の近くで最近アイス屋を始めて、来いって言われてさ。俺がお前のアイスおごるからさ行こうぜ』
「ああ、じゃあまあ、別に図書館は暇つぶしに行こうと思ってただけだからいいよ」
『マジ?それ決まりな!!』
と輝いた瞳で言われ急遽俺は予定変更し、彼と彼の知り合いがやっているらしいアイス屋に行くとになった。アイス屋に着くと彼はアイス屋のおじさんと親しげに話していた。本当に知り合いらしい。偶然にもアイスの好きな味が同じで二人ともチョコミントを選んだ。
アイスを買い、近くの公園のベンチで座りながら食べた。
『あーやっぱりチョコミントっていいよな、でもチョコミント好きってなかなかいなくてさ。お前っていいやつだな』
と口角を上げながら嬉しそうにアイスを頬張りながら話す彼、俺っていいやつか?チョコミント食べてるだけだが?といいやつの意味がさっぱり分からなかったが、彼はとても嬉しそうであった。
その後は俺は特に話すことが頭に浮かばず、ただただおごってもらったアイスを食べ、彼の話を相槌を打ちながらぼんやりと聞いていた。
アイスをお互い食べ終わると俺は再度彼にアイスのお礼を言い、解散した。

俺はあの時間は何だったんだろうと思い帰路についた。
イレギュラーな出来事に動揺したのか、図書館に行く事も無くなりかけのノートを買うこともせず家に帰った。
ノートを買ってない事に気が付いたのは、月曜の授業が始まってからであった。
「あっ、ノートもう書く場所が無いな」

終わり






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