読書途中感想 #14
司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』の7巻。
ようやく読み終わった。
7巻は、奉天の会戦から日本海海戦開始前までのお話。
いよいよ陸上戦の最終盤という感じ。大山巌総司令官の訓示でも『日露戦争の関ヶ原』と表現されている。まさに山場!
そんな最終決戦において日本は、兵力も火力も断然ロシア軍に劣っており、しかも、予備兵も全く持たないという状況だった。
一方のロシアはシベリア鉄道でヨーロッパ方面にいた新鮮な戦力がどんどん送られてくるような状況で、もちろん火力も十分。
ロシアが負ける要素はどこにもない。
といっても過言ではない状況。
それでもロシアは負けるのだが、その原因はクロイパトキン将軍という人間ただ一人に起因していると。
彼は『ロシア陸軍きっての秀才』と称されるほどの人物で、陸軍士官学校の時も陸軍大学校の時も実に美しい筆跡で答案を書いたらしい。
その秀才は小さいというか、心配性というか、とにかく自分で幻想を作りだし自分でその幻想に負けたという感じらしい。
どうみてもとんでもない兵力や火力差があることはわかるのに、主人公の一人である秋山好古が率いる小さな騎馬軍団が背後に回ろうとしただけで、過剰に反応し大軍を移動させ、はたまた、逆サイドが押してくるとそっちに行かせる命令を出すとか(笑)
勝手に踊って勝手にこけて負けったって感じ。
当時の両国の事情もあるのだとは思う。日本は『この戦争に負けたら国がなくなる』という前提で全員が国のために身を投げ出して戦っていた。
一方のロシアは、ここで負けてもまだ本国があるし、このクロイパトキン将軍は結局皇帝の評価さえ下げなければ戦争に負けようが悠々と暮らしていける。
つまり生きて帰りたいというロシア官僚将軍が保身のための判断をしたことが負けにつながったと。
私は戦争に参加したことないから、その時の心情やプレッシャーなどはわからないけど、それでも、こんなに大差があって、、、
とは思う。
まあ、この人のおかげで今の日本があるのだから、ある意味感謝しないといけない。
この奉天会戦で勝利をおさめた後、児玉参謀長が東京に帰る。これは『東京の連中に戦いの深刻さを説き、鞭を振り上げてでも連中を講和に走らせねばならん』という思いから。
そもそもロシアと戦争を始めるにあったっては『よくやって五分五分、よほど作戦をうまくやれば六分四分』と児玉さん自身が考えていたこともあり、この優勢なタイミングで講和するべきということ。
講和に向けてはアメリカ大統領ルーズヴェルトがいい感じで動いてくれようとしていたのに、ここでまた、やらかす日本人が登場する。
駐米公使の高平小五郎という人物が講和に向けて動き出した日本からの電報をどう読んだのか『日本は海戦を避けたいらしい』と読んだらしい。
しかもそれをアメリカの国務長官に話してしまう。
なんというまぬけさ。。
また、ロシア皇帝にはロシア海軍に信頼を置いているアレクサンドラというヒステリー体質の皇后がいて、この人が戦争を継続するべきという主張をしていたと。
結局皇帝とはいっても嫁さんはこわいのね(笑)
そんなこんなでこのタイミングでの講和はならず日本海海戦へと向かっていく。
次はようやく最終巻。
どんな決着のつき方なのか楽しみだ。