読書途中感想 #13
司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』の6巻。
6巻は、旅順後の黒溝台での会戦から奉天の会戦開始前夜までのお話。
ここでもまた、総司令部による『思い込み』で現場が大変なことになる。自分一人のことだけでさえ『絶対』なんてありえないのに、ましてや、戦争という相手もいる極限の状態でなぜそう思い込めるのか?
そんな中、久々に主人公の一人である秋山好古の騎兵部隊が登場する。しかし、完全なる防御戦で、ほぼ負け戦という展開。読み手としてはあんまりスッカとはしない(笑)
この時期は、日本としては、どうにか早めに和平交渉に持ち込みたいという時期で、ロシアとしては、まだまだ兵力はたっぷりあるし、その兵力をどんどん戦地へ送り込んでいるって感じの時期。
なので、戦争の様子の描写よりも、裏側の描写が多い感じ。
その中でも、諜報、つまりスパイ活動に関する記述が結構ある。『明石元二郎』という方が当時の100万円という予算を渡されてヨーロッパを飛び回りロシア内部の混乱や革命の支援などをしている。
ロシアと西側で国境を接していたフィンランドやポーランドが、やはりロシアに侵略されとんでもない被害にあっていたらしい。
その支配に抵抗する人達も色々な組織に分かれていたらしいし、なかなか手を組むまでには至らなかったらしいが、この明石さんという方が、このような組織のトップをパリで密会させることに成功したとか。
それにより、実際の戦闘とは別の方面からの支援が増えることになる。スパイなんて映画でしか見たことない平和な時代に産まれた者としては、その苦労はなかなか理解しにくいが、途方もない強運の持ち主だったのだろうなと思う。
この巻で心に残ったのは2点。
まずは、アメリカ大統領のルーズヴェルトが「専制国家はほろびる」という理由から日本の勝利に賭けてくれていたという点。
「専制国家はほろびる」の理由として「二流もしくは三流の人物(皇帝)に絶対権力を持たせ、その人物が英雄的自己肥大の妄想を持つとき、何人といえどもそれにブレーキをかけることができない」ということらしい。
読んでいる方としては、痛快で気分が良い文章(笑)
でも、これを理由に今のロシアや北朝鮮は本当に滅びるのかなとも思う。世界史をちゃんと学んでこなかったつけがこういう時に出るね(笑)
2点目は、当時の日本の新聞について。
日露戦争後も当時の日本の新聞は「ロシアはなぜ負けたのか」という冷静な分析を一行たりとものせなかったと。
司馬さんは「もしそういう冷静な分析がおこなわれて国民にそれを知らしめるとすれば、日露戦争後に日本におこった神秘主義的国家観からきた日本軍隊の絶対的優越性といった迷信が発生せずに済んだか、たとえ発生してもそういう神秘主義に対して国民は多少なりとも免疫性をもちえたかもしれない」と書かれている。
「敵を知り己を知れば」だし「勝って兜の緒を締めよ」ってことだよね。様々な好運や偶然が重なって手にした勝利に酔いしれ総括をしなかったことで後々損をするって、よくある話しだよね。
2点とも企業経営にバッチリあてはまるし、教訓として活かしていかないといけないと思っている。
物語はあと2巻。
決算時期と重なりなかなか読み進められないけど、合間を縫って読んでいこう!楽しみ!