木彫り熊とビールと。
「北海道から来られたから木彫り熊を店に飾っているのですか?」
と、お客さまからよく聞かれます。
それは正しい理由ではないのですが、うまく説明できないことが多いので、今回木彫り熊たちへの思いを書きました。
北海道のお土産物の定番として周知されている木彫り熊ですが、一方で芸術として評価されている作家さんもたくさんいらっしゃったというのがあまり知られていない事実です。
黒く塗られて鮭を加えたスタイルの熊しか知らなかった私たちが熊彫の世界に魅了されたのは、見た目が好みだからというのは大前提ですが、それだけではありません。
作家さん毎に違う背景、例えば戦前〜戦後で大きく変化していく情勢だったり、一人一人のこだわりだったり、表現したいものの違いだったり。
さまざまな要素を全て含めて、熊彫を生業としていた(する)皆さんの生き方にも共鳴しています。
いつの時代にも需要があったというわけではない熊彫。それでも火を灯し続けた作家さんがいたからこそ、今の時代に私たちが楽しむことができています。
そしてそんな方々が木の中から削り出す熊たちは、作家さんの数だけ表情があります。
木目の活かし方や、表面の仕上げ方、手数、同じ作品は二つとないという奇跡を味わうのは、とても贅沢なことです。
さて、私たちは熊を彫るのが仕事ではなく、ビールをつくることを仕事として生きています。
ビールが必需品ではない人もいるだろうけれど、私たちにとってなくてはならないものです。2人で思いをぶつけ合いながら最終的に1つのビールを完成させます。
それが楽しくもあり、たま〜にしんどかったりしながらやっぱりビールが好きで、ビールとともに日々を進んでいます。
おいしいビールをつくること。
自分たちのイメージした味を具現化すること。
誰かを笑顔にする飲み物として、いつも、私たちにしか出せない味わいを目指して試行錯誤を繰り返しています。私たちの内側を表出化したものがビールです。
ものを生み出す側になり、改めて熊彫の素敵さに気付かされたりもしています。
内に秘めた熱を放ち、自身のイメージするものを作り上げる楽しさ。それが誰かに伝わる喜び。
熊彫でもビールづくりでも根本は同じかもしれません。
私たちは少しずつお気に入りの熊を買い集めました。
それらに癒されもするし、ものづくりへの姿勢みたいなものを定期的に思い出させてくれたりもする、ありがたい存在です。
さて、熊を飾る理由ですが、
私たちの所有する熊は骨董品として販売されていたものが多いです。
いろんな人と人生を共有し、巡り巡って私たちの元へやって来た熊です。
たくさんの人に愛されてきた熊たちを少しでも多くの人に見てもらいたい、そう思ってお店に置いています。
同じビールを飲んだ人と感想を共有しあえたら楽しいのと同じで、熊彫もたくさんの人に見てもらってナンボだと思うので。
そしてあわよくば、熊彫とビールの共通点を感じてもらえればいいなあと思ってたりします。
共通点というか、熊とビール、強い思いで出来たものが共存している場と知ってもらえれば。
とはいえ重い感じではなくて、ただかわいいな、とか、こっちの熊は強そうだな、とか思ってもらえるだけでも嬉しいんですけど。
ビールも同じです。おいしいな、楽しいな、そんな感想が嬉しいので、そのためにビールと向き合っています。
長くなりましたが、熊を店内に飾る理由に始まり、単なる趣味としてもものづくりを生業にするものとしても、熊に魅了されているというお話でした。
ビール飲みながら熊談義、ぜひやりましょう。
これを読んでくれた方がなんとなくでも興味を持ってくださったら嬉しいです!
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