バナナフィッシュ
配信で初日と千秋楽を見ました。舞台化が決まり、ずっと迷って、戸惑いながら迎えました。
私はアニメから入った作品で、とても綺麗で儚いけれど、二度見るのは辛くて、あまり見返したりできなかったし、原作を読もうと思っても、踏み出せずにここまで来てしまっているので、にわかがほざくな、と言われたらそれまで。
私が確実に見よう、と決めたのは、シアコンで配信されたトーク番組の史也さんの言葉でした。
演劇で死を描くことにおいて素晴らしいところは、そのあと役者がカーテンコールで再び現れることができること(ニュアンスなので本来のコメントとは異なると思うけれど)
これを聞いた時救われて、よし見てみようと思った。
消えないでいなくならないで、どうか幸せでいてくれと、見ている間中ずっと願い続けてしまうような作品なので。
アッシュのセリフにもあるけれど、大して意味も理解せず、意識もせずに生きているくせに、人間は本能的に死を恐れているんだなあ。
今回も始まってみるとやっぱり綺麗で儚くて、なくならないで、とずっと願っていたのでした。
間違いなくアッシュは17歳の少年で、ものすごく弱い部分と悲しいほど強い部分が同居していて、願ってもいないのに誰も追いつけないところまで来てしまったような孤独を感じます。語弊があるかもしれないけれど水江さんが演じるのにぴったりだったなあ。クールでかっこよくて、でも本当は純粋で少し心が不器用で人懐こい、仮面を取ればすぐに崩れ落ちてしまいそうなところが、これ褒めてるんですけど、失礼なところがあったらすみません。
寄り添う英二はどこまでも純粋で真っ直ぐで底抜けに明るく優しかった。怖いくらい真っ直ぐで真っ白。何も勘繰らない、思ったことは相手に愛を持ってすぐに言葉にできる、言うなれば怖がらせてやろうと思っても脅す隙がない。とても強い。岡宮くんの持って生まれた見えない力がこれまたぴったりだった。意識して隠そうとしているわけでもないけどそこに至るまでに越えてきた涙や苦労を感じさせない。純粋に喜んで何事も楽しそうで、それは本当に楽しんでいるからで嘘じゃない。
長年一緒にやってきた2人の作る空気感も、周りの役者のプロフェッショナル具合もすごかった。何も邪魔になるものがなかった。殺陣もパルクールもすごすぎる。
いわゆる見どころ、のシーンがやっぱり印象的だった。その他のシーンも含め配信でアップで表情を見てしまうのは、反則だと思った。見てはいけない気さえした。目の前で劇場で見た人はどんな気持ちだったろうか!
アッシュの子どもに戻った時の顔、苦しくて見せたくなくてでも溢れてしまう見えない恐怖との戦いや絶望、ずっとだと言って下を向いた英二の声色と目と汗か涙かわからない光と、全部が綺麗で苦しくなった。
どーーーーーーーにかしてくれよこの気持ち
あんな運命を背負った子たちをこの世に生んではいけないと思いながらもこうやって綺麗だと思って見に来てしまうのは、もはやパパディノと一緒だよなぁ!?!?罪深い、罪深い!!!!
もう二度と見たくない気持ちと、いつまでもずっと見ていたい気持ちが共存するはずないのに共存する作品だと思ってた。
そんな作品がそのままに舞台になってリアリティを感じて、また見たくなくてずっと見ていたいと思えたこと、見てよかったと思いました。
誰に言うのも戸惑ったので、読んでくれた人にだけ届けばいいです。気分を害した方もいたらすみません。