読書感想 『プレカリアートの憂鬱』 「今でも届く叫び」
著者の名前は、知っていた。
テレビなどの討論番組でも一時期、よく見かけることがあった。
それも、バンギャル、右翼活動、フリーターという、当事者としての経験があるからこそ、その言葉には説得力を感じることもあった。
「この頃」とは、2007年頃で、たぶん、私が知ったのも同時期だったと思う。そして、著者にとっては代表作ではないかもしれないけれど、2009年に出版された本を随分と年月が経ってから読み、そして、自分自身も、収入が増えるあてがないのに、様々なものの値上げで悲しい気持ちになっている2020年代の現在、この著書の言葉が、強く目に飛び込んでくるような気がした。
『プレカリアートの憂鬱』 雨宮処凛
これは、2009年に出版された、この著書の紹介としてAmazonにも載っているのだけど、ここに登場する17人の、厳しい状況にいる人たちの声が、10年以上経っても、届いてくるような気持ちがするのは、今も変わらず社会が厳しいいままで、今後、さらに悪化しそうな状況だからだと思う。
今も派遣として働いていると、急に契約が切られる、ということもあると聞くけれど、こうした恐怖心は変わらないはずだ。
この著者の言葉が発せられたのが、2000年代の後半のはずだけれど、基本的には、それがずっと変わらなかったことが、2020年代にコロナ禍になって、改めて明らかになってしまったように思えた。
今でも届く叫び
この書籍には10人以上の人の言葉が記録されている。同時に、それに呼応するかのように著者自身の思いも書かれているのだけど、ここに登場している人たちは、その後、状況が好転しているのだろうか。
そんなふうに想像するのが難しいのは、社会構造全体が、どう考えても良くなっているとは思えないからだ。
現状に絶望しているから、戦争という変化を望む人もいた。今は、どうしているのだろうか。この10年間でも、突然、暴発するような通り魔事件は増えてきた気もするのだけど、それを擁護はできないとしても、絶望の先の行動なのだろうか。
こうした問題も、それから改善されたという話を聞かないまま、年月が過ぎ、コロナ禍に見舞われ、そして、立場が弱い人間が切り捨てられるような印象は強くはなっても、弱くなった気がしない。
最低時給についての論議がされたり、実質賃金のアップなどが話題になったりもするけれど、それよりも様々な値上げの方が先行しているから、現在でも、とても希望を持てる気がしない。
だから、この著書の叫びは、今でも届く言葉になっているのだと思う。
絶望の現在
この言葉が聞かれたのが、2000年代の後半だから、その10年後は、すでに過ぎていることになる。
その後、どうなっているのかはわからないのだけど、やはり、状況が好転しているイメージは持ちにくい。それは、10年以上経っても、様々な課題が解決していないからだと思う。
2009年出版の著書ではあるのですが、ここにある言葉は、今も聞くべきことだと思います。
(こちらは↓、電子書籍です)。
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