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自衛隊が市街戦を戦えないのは日本の縮図

先日、元陸上自衛隊の陸将補の二見龍氏が書かれた「自衛隊は市街戦を戦えるか」という本を読みました。
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背景として、パクスアメリカーナの終焉とともに、日本の安全保障環境が大きく変わり、日本が紛争に巻き込まれるリスクが大きいのではと感じているからです。実際、過去の歴史的に見ても、2度の世界大戦を含めて大国の終焉は大きな混乱をもたらしてきました。

「ポストコロナにはパクスシニカなのか?」https://note.com/3ryu_se/n/n6fc0a2d2bc7d

そんな中で以前、読んだ海上自衛隊の今について書かれた「国のために死ねるか」も非常に得るものが多かったのですが、今回の「自衛隊は市街戦を戦えるか」もいろいろな気づきがありました。
「国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 」https://amzn.to/2DRI1d0

本の中では、陸上自衛隊が置かれている環境の変化に対して、著者がどう取り組んできたか、これから陸上自衛隊はどう変革するべきか書かれていました。ともすれば、これは自衛隊だけの問題と考えがちですが、私はこれは組織されて時間がたった組織に共通する問題であり、そのような状況に陥っている原因は平和教育にあるのではないかと感じました。

①陸上自衛隊と社歴が長い会社の共通点
この本に書かれている、自衛隊の課題の多くは、社歴が長い会社によくある問題だと思いました縦割りの組織でお互いの領域を犯したがらない(行き過ぎた平等主義)、改革への抵抗が大きい、ルール至上主義になってなぜルールが作られたのか、それが市場環境と会っているのかという目的にたち帰ったルールメイクができない考えて行動することよりルールを守ることが重視される等、ある程度社歴が長い会社にいたことがある人は思い当たることが多いのではないでしょうか。

IT業界も似たところがあって、市場の変化に合わせて、顧客から言われたものを言われた通り作るのではなく、自ら提案し考えていく力が必要とされています。もう少し広く言えば、社員教育全体として、これからのVUCAの時代に必要とされるのは、激変する環境の中で、臨機応変に考え対応する力(アドリブ力)だと言われています。

また少し話外れますが、つい最近同じような話が、空手の関係者の間でSNSで話題となっていました。いわゆる伝統空手という昔からある空手が型重視、あるいはスポーツ化された競技になっていて実践性が落ちているといった話でした。これも柔剣道や競技主義になってしまっている陸上自衛隊の姿とダブると感じました。

話を戻して、軍隊の中のルール主義というのはスパイが相手組織の力を弱めるために使うテクニックの1つでもあります。スパイが怪しまれずにその組織の力を落とすには、慎重さ・細かなルール重視・指揮命令系統の徹底などを活用する事がCIAのマニュアルにも書かれています。

「CIAのスパイマニュアルに学ぶ「会社をダメにする11の行動様式」」https://www.google.co.jp/amp/s/chikawatanabe.com/2015/11/04/cia_sabotage_manual/amp/

そういった点も付け込まれるのではという心配も感じました。

②日本の平和教育が今の自衛隊を形作っている
小学生の時からとにかく違和感があったのが、日本の平和教育です。戦争を起こさないために深く考えなければいけないのは、開戦と敗戦の理由であり外交・軍事といった安全保障の分野であるはずなのに、日本では戦争の悲惨さだけが取りざたされます。そこには戦った相手の姿が全く見えず戦争が多くの国との関係性で起こることが分かりません。結果、一国平和主義に偏り、いつ、どこで、だれと、どうやって戦いが起こる可能性があり、それをどう防ぐかという、平和と国際状況のつながりをリアルに考える機会が少ないと感じます。有史以来の世界の歴史を見れば、常に戦争は周辺諸国との関係から定期的に発生し、継続的に平和であったことはありません。

また今だに戦争のイメージが、75年前の第二次大戦=総力戦でとまっています。これは昭和の第二次大戦のときに、幕末の戊辰戦争の話をしているのと同じで、現在の戦争からかけ離れています。現在でも世界各地で紛争が行われ、戦闘ドクトリンも世代が変わり総力戦からハイブリッド戦に戦い方も変わっています。
「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」https://amzn.to/3kczelC

戦争の悲惨さの話を聞くのであればそういった、現代の戦争を経験している人に話を聞くべきだと思います。それが次の戦争を防ぐとことにつながると考えています。

これは日本の平和教育の話だと感じていたのですが、「自衛隊は市街戦を戦えるか」を読むと、陸上自衛隊も同じ課題を持っている事を知りました。第二次大戦で多くの損害を出した銃剣突撃訓練の継続、最新の市街戦やハイブリッド戦に対応していない装備や訓練マニュアル等、国際関係を踏まえて次の戦争を想定し、また新しい戦争の形に適応できない姿は、日本の平和教育と同じだと感じました。

これは逆に、国民が自衛隊にそういったものを求めてこなかったことの結果であるとも思います。起こる可能性の低い冷戦下での東側諸国との戦争に備えつつ、災害派遣への対応を主務してきたことが、こういった状況を作ったと感じました。

冒頭都の繰り返しになりますが、大国の衰退は歴史的に見て必ず戦いを引き起こします。実際に今世界ではアメリカの力が及ばなくなったことで、アジア・中東・ヨーロッパで各国がかつてない動きを見せて覇権を争い、紛争の火種が世界で広まっています

これからの平和を考えるために、この状況下で日本が外交と軍事の両面でどうしていくべきかを、一歩踏み込んで、国民やマスコミが具体的に話し合う時期だと思います。そしてその前提にあるのは第二次大戦の体験であり、最新の研究結果の軍事と外交の失敗の教訓であるべきだろうと思います。
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以下、余談ですが、その他気になった点です。
・自衛隊の低学歴化
本でも触れられていましたが、以前そういった記事も話題になりました。近代化された戦闘では下士官も大学卒、大学院卒を獲得または現役自衛官を防衛大に通って学位を取るのもよいのではないかと思いました。
「自衛隊幹部が異様な低学歴集団である理由 」https://president.jp/articles/-/26144

・日本がお手本にすべきなのはアメリカなのか
隣国であり、最も関係性が深い同盟国、かつ最新の軍事技術を持っているアメリカから多くを学ぶのは必然と思います。一方で国際政治学者で戦略論・軍事史の専門家のルトワック氏の書籍では、近代化によってコストをかけすぎ、実際の戦争から乖離している部分がある米軍の問題が度々出てきます。そして日本がお手本にするべきなのは、小国でありながら緊張状態で自国を守っているイスラエルではないかと書かれていました。そういった多くの国から学ぶこともあるのではと思います。
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