250118 2台のローライ35
パーフェクト・デイズ 023
昨年秋、ローライ35AF(オート・フォーカス)が販売されたと最近知りました。フィルム・カメラです。いまさらAFにしたからって、はたしてどれほど売れるのか。いや、それでも売れるとメーカーが考えるぐらい人気があるとも言えるわけですね。
元祖は1966年に発表されました。35mmフィルムを使う世界最小をうたっていました。それを実現するために、ピント合わせの装置を備えていません(よくAFにできたもんですね)。被写体までの距離を目測し、レンズの目盛りを合わせて撮影します。デジタル全盛の時代に、そんな不便なカメラが家に2台もあります。
1台は父の遺品です。ローライはドイツのメーカーですが、1971年からシンガポールで製造をするようになります。父の35Sはゾナーというレンズを付けて、1974年から260,000台生産されたうちの1台です。当時の販売価格は250ドル。レンズなどにローライ自社製を採用した廉価版でした。
父は公社に雇われた建築士でした。建築士はカメラ好きが多いそうですが、薄給だったので廉価版にしたのでしょう。でも、もっぱら使っていたのはボクでした。結構よく写ります。中学校の時、現像に出した写真屋のオヤジがボクの写真を勝手に出品し、賞をもらったなんてこともありました。修学旅行にも持って行ったし、思い出深いカメラです。
もう1台は元義父の遺品です。別れた妻の父は田舎から出てきて一代で財を築いた立志伝中の人物でした。余裕ができてからカメラを趣味にしていました。ハッセルブラッドからライカまで、すごいコレクションです。多分、ボクのことは頼りなかったと思いますが、たまたまローライ35の話になったときに、棚から取り出してきてポンとくれました。
1991年にドイツで復刻された35classicです。レンズは同じゾナーですが、ボディの上下はチタン・コーティング、他はプラチナ・コーティング、シャッター・ボタンなどは金メッキという金満モデル。6,460台しか生産されず、1,400ドルで発売されました。もったいなくて、まだ一度も撮影したことがありません。
正反対の生き方をした2人は、正反対の仕様だけれど同じカメラが好きでした。3年前に元義父が天寿をまっとうし、ともに泉下の客となりました。あの世で一緒にローライ35の話でもしてくれていたらうれしいのですが。