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富士山登山と滑落

過去にも多くの事故があった富士山ですが、装備が良くなっても亡くなる人は後を絶たない。閉山中でも構わず登山する人も後を絶たない。

片山右京さんのパーティー
2009年12月、元F1レーサーの片山右京は、南極大陸の最高峰・ビンソンマシフに登るために、仲間2人とともに富士山で高所トレーニングを実施したが、御殿場ルートの6~7合目あたりで幕営中に、仲間2人のテントが強風で吹き飛ばされるというアクシデントに見舞われた。
事故発生後、片山は現場から200メートルほど下方で破れたテントと2人を発見し、自力救助に努めたが、2人とも亡くなった。

京都府勤労者山岳連盟のパーティー
2013年12月1日11時15分ごろ富士山冬山登山で滑落事故発生
富士山御殿場口登山道9.5合目付近(標高約3500メートル)

6名のパーティーで富士山登山中
8合目で体調不良者2名が次々と下山、その後4名で山頂を目指しました。

京都府勤労者山岳連盟に所属する4人は1日午前、登山中に御殿場ルートの山頂付近から滑落。
互いの体をロープ(アンザイレン)でつないでいたため、4人が一緒に滑落したとみられる。

冬山の登山技術を習得するため、富士山を登っていた。
11月30日午前8時ごろに御殿場口から入山し、翌1日に下山する予定だった。

静岡県警によると、死亡した2人は京都市中京区の大工、矢野利明さん(61)と同市南区の教諭、高橋美明さん(55)。矢野さんは登山歴40年ほどで、エベレスト登山の経験もある実力者。高橋さんも登山歴20年ほどのベテランだった。

県の防災ヘリは定期点検中で出動できず、2012年3月に県と静岡、浜松両市で締結した相互応援協定に基づき、県の要請で静岡市のヘリが出動しました。
市のヘリとしては富士山での遭難者救助は初のケースで、風や気流など気象条件が厳しかったうえに、酸素が薄い中での救助活動でした。

消防航空隊のヘリコプターは、最大全備荷重の状態でホバリングできる最高高度が3109mであり、富士山9.5合目付近での救助活動には、人員ないし装備を減らす必要があった。
日没時刻が迫っていたこと、および現場付近の状況などから、救助員のホイストカット無しで救助活動することを出動前に決定し、ヘリコプターから不要な救助器具などを降ろし荷重を軽くして午後3時30分頃にヘリポートを離陸しました。

離陸から15分後に滑落現場付近の上空に到着した
現場の酸素濃度は通常の65%で、被告救助隊員は出動からわずか30分で標高3500m付近に達しているもので、いつ高山病の症状がでてもおかしくない状況下にあった。
更に現場で県警航空隊の救助活動が行われており、気流を乱さないように終了するのを待って救助活動をはじめざるを得ませんでした。刻々と夕暮れ時が近づいていた。

救助開始できたのは日没まで30分というタイムリミットが近かった。
隊員もビバーグ(緊急野営)の装備も技術もなかったので、要救助者に寄り添うことは難しい状況であった。

1日に静岡市消防航空隊のヘリコプター「カワセミ」が救出中につり上げる用具のデラックス・サバイバー・スリングが外れ、救助隊員2人が身体を張って支えながら、パイロットが1度地上に戻そうとしていた同12分ごろ、高さ約3メートルのところで、隊員の腕をくぐり抜け岩場に落下したという。

落下時には高橋さんは頭部を打ち付けていたが意識があった
再び降りた救助隊員は酸欠状態で作業が捗らず、気流の乱れでヘリも墜落しそうになった事から已む無く撤退することにした。

2日朝に心肺停止状態で見つかるまで行方が分からなくなっていた。
(落下位置不明)

県警の山岳遭難救助隊が午前6時ごろから捜索を再開し、高橋さんとみられる男性を心肺停止状態で発見、胸部および頭部損傷兼寒冷死と診断された。

御殿場署はまた、1日夜に病院に搬送された男女2人について、京都府亀岡市の教諭、畑和彦さん(58)、女性は京都府南丹市の販売店店員、宮崎愛さん(34)と確認した。2人は肋骨(ろっこつ)や骨盤を折る重傷だった。

事故をめぐっては男性の遺族が2015年12月、救助方法が不適切だったとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め提訴
市に約9200万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こしています。

1審では、消防航空隊の救助活動の過失は否定され、原告の請求は棄却されました。
京都地判平成29年12月7日 判例
-- 救助活動に当たっては、救助隊員の人数・身体状態・携行する装備・応援の有無及び二次遭難に遭うおそれといった種々の事情を考慮しなければならず、かつ、これらの事情のうちには刻一刻変化するものがある  -- 本件のような極めて高高度における山岳救助においては、救助現場の外気温・気圧が低く、また高高度への急上昇が必要となるから、これら外的要因が、救助隊員の身体能力や、思考・判断能力に大きな影響を及ぼす可能性は否定できない -- 救助方法の選択等は救助隊員の合理的裁量に属し、違法とならないと解すべき。

被告救助隊員が、ホイストカット無しでダウンウォッシュ下でも迅速な救助が可能な救助器具(DSV)を選択したことに過失はない。--とした。

危険な山岳救助隊を萎縮させるような判決が下らなくて良かった。

うざい弁護士
「救助ヘリが能力を超える救助活動をした」と指摘する弁護士が現れた
そう言われるのであれば・・・助けに行かない

静岡市は、富士山での遭難者救助ヘリをめぐり「3200m(間ノ岳を想定)以上は出動させない」と決めた。
決定は、田辺信宏市長が1月22日の定例記者会見で、死亡した男性の遺族が市を提訴したことについての質問に答える中で明らかにしました。

結果的に、救助隊の安全性が高まり、より高性能なヘリに買い替えられ救助装備も格段に良くなった。

ネット民の反応
SNS(Twitter)では、遭難した登山者の自己責任に言及し、静岡市の決定を支持する声が圧倒的に多かった。税金の無駄遣いという意見も多かった。加えて弁護士に対する批判が多かった。

パーティーの登山レベルを見極められなかったベテラン
パーティーはヘルメットも被っていなかったことも判明。
詳細が判明すると、アイゼンが刺さり難い硬いアイスバーン状の斜面を経験の浅い者がロープでつながって登っていたことと、滑落停止はベテランでないと無理という登山家の意見も出たことから、レベルに合わない無謀な冬山訓練をしていたと批判された。

「富士山救助ミス」と報じた毎日新聞も叩かれた。

山ではケガと弁当は自分持ち
ヤマレコでは登山家も救助隊を擁護するコメントを書いている。

静岡市と遺族は和解したという。

別件の滑落事故1
2019年10月に『ニコニコ生放送』でライブ配信をしながら冬の富士山を登り、足をすべらせて滑落死したTEDZU(テツ)さんの事故があった。
この頃から、富士山の冬季入山を規制する意見が増えた。

別件の滑落事故2

2024年6月26日、富士山山頂の火口付近で登山者とみられる3人が、心肺停止の状態で見つかり、全員の死亡が確認されました。他にも一人が死亡し、山開き前に遭難が相次いでいます。山頂の気温は夏でも零度近い。

2024年富士山の登山シーズンは終了しました。
下記登山道は冬季閉鎖中です。
・吉田、須走、御殿場:5合目~山頂
・富士宮:6合目~山頂
・山頂(お鉢めぐり)

冬山登山は違法ではありませんが、滑落や遭難すると叩かれやすい。
家族や多くの人に迷惑をかけないように安全第一で。

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