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対談:光瀬指絵さん×佐久間麻由「これは俳優です。これは演劇です。」
今回の対談のゲスト、光瀬指絵さんとは?
俳優。スイッチ総研所長。カムカムミニキーナ、猫のホテルを経て、2006年に福原充則、森谷ふみとニッポンの河川を旗揚げ。2015年に「スイッチを押すと始まる一瞬の演劇」を上演するスイッチ総研を俳優の大石将弘と結成。同団体では脚本と演出を担当。各地でその場ならではの作品を上演し好評を得ている。
俳優として「劇団、本谷有希子」「快快」「財団、江本純子」「劇団かもめんたる」「ミクニヤナイハラプロジェクト」などに出演。
<1月初旬、都内某所にて>
ーー2人の出会い
光瀬 …一番最初ってなんだろうね?
佐久間 多分、私が京都に、『大地をつかむ両足と物語』(’13年 ニッポンの河川 作・演出:福原充則)を観に行った時に、ご挨拶したんだと思います。
光瀬 「あ、こんにちはー」とか言ってた、私?
佐久間 はい、多分。その時すでに、森谷(ふみ)さん(ニッポンの河川の劇団員)とは「庭劇団ペニノ」で共演していて、福原さんとも『墓場、女子高生』(’12年 ベッド&メイキングス 作・演出:福原充則)でご一緒済みで。
光瀬 言ったか。言ったかなぁ?「こんにちは」って?
佐久間 (笑)えっと…、はい。あ、いや、正確には、終演後の打ち上げに参加させてもらった時にご挨拶したので、「こんばんはー」か、「初めましてー」ですかねぇ…。あの、「初めまして」ですかね?やっぱり最初だったから。それで、その後は、劇場ですれ違ったり、本谷有希子さんのワークショップでご一緒したり…。
光瀬 ま、福ちゃんつながりってことだよね、結局。
佐久間 はい。あの、指絵さんと福原さんの出会いは何だったんですか?
光瀬 えっとね、福ちゃんの存在は知ってたけど、喋ったのは、ザンヨウコさん達がやってた「危婦人」って劇団で、役者同士で共演した時だよ(’03年)。
佐久間 へぇー!
光瀬 下北のバーみたいな所で、気軽な公演みたいのがあって、私がまだ「猫のホテル」にいた時で。そのせいで、稽古でまぁ滅茶苦茶やってたというか…、
佐久間 滅茶苦茶?
光瀬 「猫ホテ」の人達って、稽古でさ、毎っ回違うことするから。
佐久間 はい、聞いたことあります!
光瀬 私もヤングで先輩達の影響を受けまくってたから、稽古では毎回違うことしなきゃって、その公演でもアドリブっていうか、毎回違うことやってたら、福ちゃんが、「えらいですねー」みたいな感じで話しかけてきて。
佐久間 (笑)
光瀬 まぁそれで知り合いになって。で、福ちゃんの「ピチチ(ピチチ5 福原が主宰する劇団)」を見に行ったらむちゃくちゃ面白くって。それで、あの、森谷ふみちゃんが…、知ってる?
佐久間 あ、はい、共演してます。あの、「庭劇団ペニノ」で(笑)
光瀬 あ、私とふみちゃんで「なんかやりたいね、一緒に」とか話していたんで、2人の共通の知ってる人で、面白いって思ってる人に脚本書いてもらおうかって言ったら、すぐ「福ちゃんじゃない?」ってなって。
佐久間 へぇー。
光瀬 福ちゃんに連絡したら、「全然いいよ」って言ってくれて。で、どうせやるなら普通のことしてもつまんないよ、っていう感じで、あぁいうスタイルに。
佐久間 役者さんがウォークマンを操作して自分で曲を流しながら台詞を言いつつ、足でスイッチを押して、照明も自分でつけてというスタイルに!
光瀬 そうそう。見たことある?
佐久間 …あ、はい、あります、あの、京都で(笑)
光瀬 とにかく大変なスタイルで。怒られて。「あなざ(あなざーわーくす)の人なら、もっと上手くやるぞ」、とか言われて。
佐久間 「あなざーわーくす」大好きですけど、どうしてそこで…?
光瀬 河川は、「あなざーわーくす」の影響がすごい強いって、福ちゃんは言ってた気がする。
佐久間 へー!私も「あなざーわーくす」がやった『ヴェニスの商人』(’09年 『ヴェニスの商人〜逆襲のシャイロック〜』)を見たんですけど、すっごく面白くて。感激しました!あぁいうお芝居、憧れます。今でも、すごく見たいなーって思います。
光瀬 んー、んー、んー。そうだよね、私も福ちゃんから聞いて、見に行って面白かった。
佐久間 面白いですよねー!
光瀬 ねー、すごいよねー、ほんと。
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ーー光瀬先輩からアドバイス
佐久間 では、本題に…(笑)。えっと、今日はですね、福原作品の先輩として、
光瀬 (笑)
佐久間 そして、「ニッポンの河川」や「スイッチ総研」で、野外劇を沢山やっている野外劇の先輩として、指絵さんに色々とアドバイスをいただきたく思いまして。
光瀬 アドバイスなんてそんな恐ろしや…。
佐久間 お話聞きたいなぁ、と思いまして。
光瀬 その前にさ、この対談のタイトルとかテーマみたいなのは一応あんのかね?
佐久間 今のがテーマです(笑)。〝指絵先輩からのアドバイス〟
光瀬 (爆笑)そうか、そうなんだ、あ、そう。へぇ!
佐久間 指絵さんがやっている、「スイッチ総研」の活動とか指絵さん自身のバイタリティとか、憧れてもそう簡単に真似できないことだと思うのです!
光瀬 えー、そんな優しいこと言ってくれるんだ。
佐久間 演劇をやる上で、その、東京で作るのには、ある程度方法があるじゃないですか。劇場を借りるにしても、誰かの力をお借りするにしても。演劇を知っている方も沢山いて。…でも、私、小豆島で演劇をやった時に、
光瀬 あーそうだよね、やってたねー。
佐久間 演劇に触れる機会の少ない方達と演劇を作ったり、そこで演劇をするということが、すごく楽しいことだけど、大変なことだなぁとも実感したので、それを毎年、ずーっとやっている指絵さんのこと本当に尊敬します!
光瀬 ……(無心にアップルパイを食べる)
佐久間 …あの(笑)、「スイッチ総研」は、年間、どれくらいやってるんですか?
光瀬 ん?コロナ前は、一番多い時は年間10本ぐらい…、
佐久間 すごい!
光瀬 やってて、その時はちょっとやっぱ…
佐久間 …おかしくなっちゃいますよねー。
光瀬 おかしくなる。うひょう!美味しい!
佐久間 よかったです!(笑)作品数も、400作品くらいあるって聞いたんですけど、本当ですか?
光瀬 そうそう。まぁ、台詞をちょっと変えて使い回せる汎用性が高いやつもあって。でも、その場所でしか出来ないやつを作るのが楽しいから、毎回ほぼ新しく作ってーっていう。短いからね、すぐ作れるし。稽古も、1人の俳優の稽古は短くすむから(スイッチ総研は、野外に役者が点在して別々の短編を演じるスタイル)
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(’17年2月 上演)
佐久間 7年目ですか?
光瀬 んー、かな(笑)
佐久間 2013年に、前身の、『ゾウノハナスイッチ』を象の鼻テラス(横浜)でやって、それが後に、「スイッチ総研」に、
光瀬 そう、翌々年の2015年に、六本木アートナイトで、「スイッチ総研」としてやって、その時があまりにも壮絶っていうか過酷っていうかさ、36時間くらい連続でやっちゃったの。そのオールナイトで。
佐久間 出演者も募集してましたよね?
光瀬 してたしてた。
佐久間 すごく楽しそうって思って参加してみたかったんですけど、なんかちょっと怖くて…
光瀬 (爆笑)
佐久間 今よりも人見知りだったし、応募するの諦めました(笑)
光瀬 私達も応募してくれる人がいるか分かんないし、でも、あれって、オープンコールといって作品やアーティストを公募するっていうことをアートナイトが初めてやるっていうので、
佐久間 ふむふむ。
光瀬 大石(将弘/ままごと|ナイロン100℃)君が「これ出しませんか?」って言ってくれたから、じゃやろうかーって、出したの。そしたら、100組の中から10組選ばれて、公開でプレゼンするみたいな。それで、プレゼンなんて生まれて初めてだったけど、やって。
佐久間 えー!すごい!
光瀬 質疑応答みたいなのがあるの。その審査員が、当時の森美術館の館長の南條さんとか、日比野克彦さんとか、ライゾマティクスの齋藤さんとか。そこで、「24時間出来ますか」って聞かれたから、「勿論出来ます」って答えて。「シフト制なんで、うちの芸術は」、とか言って。
佐久間 シフト制の芸術(笑)
光瀬 で、通って、24時間やるってことになったから、(出演者の)公募もして、先輩とかにも片っ端から声をかけて、そしたら「みんないいよ」って言ってくれて。結局100人くらいでやったんです。
佐久間 それが第一回ってことですよね、すごすぎます。それは、制作さんはいらっしゃったんですか?
光瀬 いや、いない。全部自分達で。
佐久間 指絵さんが連絡したりもしてたんですか?
光瀬 あたしと、大石君とか、後、「青年団」の山本(雅幸)君とかが、まぁメインでやって。後、『ゾウノハナスイッチ』で一緒だった俳優とかも手伝ってくれたから。
佐久間 最初は、どうしてそのメンバーになったんですか?
光瀬 元々、「ままごと」が象の鼻(テラス)でやってた企画に私も客演みたいな感じで呼ばれて行って。そしたらそこで、私は柴幸男さんの劇をやるんだと思ってたらそうじゃなくて、
佐久間 (笑)
光瀬 台本も脚本もなくて、あ、台本と脚本は一緒か(笑)。台本も演出もなくて、「ここでやったら良さそうなことを皆さんで考えてやってください」って言われて。
佐久間 楽しそうですね。
光瀬 柴さんが「閉じた感じの劇にしたくないから、ここで普通に通りがかる人に向けてでもいいし、ここに似合いそうなことを劇じゃなくてもいいからバーって挙げて下さい」みたいな感じで、みんながラジオ体操とか、歌とか、コタツとか、紙芝居とか色々挙げて。…で、それももちろん楽しかったんだけど、「普通に芝居もやりたいなぁ」って言った人が5・6人いたの。その中に私と大石君とか、山本君とかがいて。でも、劇場じゃない場所で演劇を急に始めたら、結構迷惑にもなるっていうかさ、演劇のこと絶対誰もが好きでしょ?って思ってないから。
佐久間 中には、「えっ…」、って思う人もいますよね…
光瀬 大体の人が演劇なんか見ないし、別に寒いと思ってるだろうって思ってるし、自分自身がフラッシュモブとかが苦手だったから、みんなで、(演劇を)やって迷惑をかけたくないっていう話で。じゃあ、どうやったら劇場じゃない場所で演劇を見に来た訳じゃない人に、演劇やっても迷惑じゃなく出来るのかなーって考えて。じゃあ、なんかスイッチみたいなものを用意して、これを押してくれたら、見せますよ、っていう一瞬の短い演劇、押してくれたあなたの為だけに。押さない限り何もしないんで安心してください。でもその代わり、押してくれたら、演劇見せますね、っていう仕組みにしたらどう?っていう話になって、スイッチというものが出来て。
佐久間 あのー、ちゃんと了承を得て演劇を見てもらうっていうのが、素敵だなって思います!
光瀬 ありがとう!
佐久間 その、演劇に限らずなんですけど、公共の場でかかってる音楽とかも…。例えば、今、この建物でかかってる、この音楽とかも、ここにいるみんなが、聞きたいものではないじゃないですか?
光瀬 そうなんだよね、影響力、支配力あるしね、結構。
佐久間 そうそう。そういう気分じゃない時があったり…。思っている以上に影響力あるなぁって。それで私、音楽や演劇からの影響が大きすぎて、そういうものと距離を取りたくなった時期があったんですけど…。
光瀬 あ、そうなんだ。へぇー。
佐久間 というのが、ちょうど自分の中に合ったので、「スイッチ総研」のみなさんが大切にしているその想いは、素敵だなぁって、本当に思います。
光瀬 あら、ありがとうございます(笑)
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ーー「ニッポンの河川」と「スリーピルバーグス」、そして野外の失敗談
佐久間 あのー、少し聞きづらいお話なんですけど…。
光瀬 なになにどした?
佐久間 今回、「スリーピルバーグス」は、音響と照明を役者が操作するって福原さんが言っていて。HPとかにもそう書いているんですけど、
光瀬 ふむふむ。
佐久間 最初に聞いた時は、「ニッポンの河川に似たスタイルなのかなぁ…」と、私ですら思ったので、指絵さんとかはどう思っているのかなって。
光瀬 (同席していた福原に)え、一緒なの?(笑)
ー福原 いや、機材の構成は違うものになると思う。もっとシンプルに。「河川」は、機材操作ありきで、芝居の稽古より、操作の稽古だったから…。
光瀬 だね(笑)。演技にダメ出しされずに、機材の操作で延々怒られて。
佐久間 あのー、私もどう演出するのかまだ分からないので、聞きづらいんですが…。
光瀬 え?なに?
ー福原 「ニッポンの河川」に似てたらむかつく?
光瀬 あーそういうこと(笑)。いや、思わないよー。全然悪い意味じゃなくて、ちょっと似てる部分はあるなとは思うけど、でもだからって「面白そうじゃん」としか。あと、「ニッポンの河川」もまたやりたいなーとか、そういう、感じ。
佐久間 ほっとしました(笑)
光瀬 なんにせよ、大変そうなスタイルにはなるんでしょ?
ー福原 スタイルが大変かどうかはわからないけど、結局野外は大変だし。
光瀬 そうだよね。
佐久間 野外の失敗談みたいのを聞いておきたいです。「スイッチ総研」でも「ニッポンの河川」でも、
光瀬 …うーん、失敗談っていうか、「河川」でさ、葛西でやった時(’17年 『大地をつかむ両足と物語』 葛西臨海公園))に、11月の海辺で、あまりにも寒くて、お客さん全員が本当にぶるぶる凍えてる時に、お客さんで八嶋(智人/カムカムミニキーナ)さんが観に来てくれてて。
佐久間 はい。
光瀬 八嶋さんがカイロを箱買いして持ってきてて。そのカイロを、その場にいるお客さんに「配ってよ」って言ってくれてさ。で、「八嶋さんからのプレゼントです」って言ったら大拍手で。
佐久間 わぁーー!
光瀬 終演後に八嶋さんに、「こっそりくれたのに、みんなの前で八嶋さんの名前だしちゃって、ご迷惑だったらすいません」って言ったら、八嶋さんが、「俺、あぁいうの、だーい好き!」って。
佐久間 (笑)あ、私も、「劇団かもめんたる」で八嶋さんとご一緒した時に、
光瀬 そっか、共演してるのか。
佐久間 お稽古の後にみんなで飲みに連れて行っていただいたりしてたんですけど。その飲みに行ったお店で、他のお客さんが八嶋さんに気がついて、そしたら自ら話しかけて、全員と仲良くなって、最終的に、「舞台観に来てねー!チケット予約するから、分からなかったら連絡してね」って。
光瀬 すごいよねー。
佐久間 「観にきてね!かもめんたるも、カムカムミニキーナもね!」って。
光瀬 ほんっとに、尊敬する。
佐久間 はい。本当に!
光瀬 昔っからずっとそう。私が「カムカムミニキーナ」に、入った時から…、
佐久間 そうだ、「猫ホテ」の前は、「カムカム」なんですよね!
光瀬 あの頃からずっとそう。素晴らしい、素晴らしい。……長く話したけど、これは失敗談ではないね。
佐久間 「八嶋さん素敵話」!
光瀬 (笑)麻由ちゃんはなんかあるの?
佐久間 …私は、失敗談というか、ハプニングなんですけど。小豆島の大部というところにある、海沿いの造船所跡地で公演(’16年 大部のできごと『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』)したんですけど、
光瀬 坂手港の方?
佐久間 えっと、岡山県寄りなんですけど、大部にも港があって、岡山県の日生港からフェリーが出てるんですけど、そのフェリーが大部港に到着する時間に合わせて上演してたんですね。2匹の老猫のお話で、1匹が死んでしまって、もう1匹の猫がその猫のためにお葬式を挙げるお話なんですけど、最後、ボートに乗せて海に流してあげるんです。それをフェリーが到着する時間に合わせていて。日生港の方にもご協力いただいて、もし、出発が遅れたり欠航になったらご連絡いただくことになってて。
光瀬 ほぅほぅ。
佐久間 そしたらある日、大体いつも、この台詞になったら船が遠くに見えてくるなっていうタイミングになっても、一向に現れなくて。でも、日生港の方からも連絡はないし、どうしよう…ってなって。海に流してあげる前に、おそうめんを食べるんですけど、もう、それはそれはゆーっくり食べても、来なくって、しょうがないので、ただ夜空をボーッと見るだけの時間に…。必要以上に、「あぁ星が綺麗だなぁ…」、をアピールしてたと思います…。もう限界かなという、ギリッギリのところできましたけど(笑)
光瀬 へぇー。
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photo by 小豆島カメラ
佐久間 あと、これも失敗談ではなくて、感謝のお話なんですけど。小豆島って、劇場がないんですね。特に大部地区の方達は、演劇を観たことがない方も沢山いらっしゃって。せっかくだから地元の方達に、小豆島のみなさんに演劇に触れてもらいたくて、ほんと、島中をまわりました。色んなお店や町役場の方を紹介して頂いて、町内の集まりにも参加させてもらって、盆踊りの練習して櫓の上で踊らせてもらったり、
光瀬 あー、私たちもそれやったー!盆踊り大会行って、チラシ配ったりとかしたわー。
佐久間 (笑)屋台が立ち並ぶ1番端っこにチケット売り場を作ってもらって、手売りして、
光瀬 「あ、今度やるから来てくださーい」つって。
佐久間 はい!とにかく、人に出会い続けた日々で。滞在中の半分くらいは、あちこち動き回ってました。「お芝居、観に来てくださーい」って。それで、300人くらい観に来てくれて、
光瀬 すごいじゃん。
佐久間 すっごく嬉しかったです。観に来てくれるだけじゃなくて、本当にたくさん協力もして下さって…。客席に使う椅子は、ここから貸してもらったらいいよとか、造船所の足元には大きな石がたくさんあったんですけど、その石をショベルカーで慣らして下さったり、電気がもう通ってない場所だったんですけど、電気を通して下さったり…
光瀬 え、そんなことしたの?すご。
佐久間 本当にたくさんのことを…。それで、最後、協力してくださった大部のみなさんに、上演台本を刷ってお渡ししたんですけど、すごく喜んで下さって…
光瀬 へぇー。
佐久間 で、その場で台本読んで、「全部、伝わってたよ」って、「演劇観たことなかったけど、面白かったよ」って言って下さって。本当に嬉しかったです!
光瀬 なるほど、じゃ本番に向けて、地元の人達と一緒に、力貸してもらって、数々の苦労を乗り越えて、
佐久間 そうなんですよー。奇跡でした。失敗も多分あったと思うんですけど、それさえもいい思い出だったとしか。
光瀬 まぁでも今の話を聞いてもさ、劇場じゃない場所でやるってことはほんと0からっていうか、マイナスからっていうか、
佐久間 1回目だからこそ出来ることってありますよね。なんか、もう1回、同じことが出来るかっていったら…
光瀬 あー、「スイッチ総研」の大石さんもいつもそれ言ってる。1回目の六本木アートナイトの時のことは、「もう、今やれって言われてももう出来ないし、あの時、24時間上演の中でステージ数をさらに増やそうとしてた自分をぶん殴ってやりたい」、とか言ってて(笑)…
佐久間 ふふふ(笑)
光瀬 でも、あれじゃないですか、今回の「スリーピルバーグス」は、まだ聞いてないから分かんないけど、野外っていうとやっぱ、雨問題がつきものだけど。
佐久間 雨もそうなんですけど、今回、永福町でやるところは、3時間しか借りてないんですよ。
光瀬 ん?
佐久間 3時間の中で、50分のお芝居を、2回やるんですね。20分でお客さんに入場してもらって、
光瀬 それ、大石さんだったら怒るやつだよ(笑)私、いつも怒られてる(笑)
佐久間 (笑)50分お芝居して、30分でお客さんの入退場を同時にやって、で、また50分お芝居して、最後にお片づけ、というのを毎日…
光瀬 すごい…。屋根は、あるの?
佐久間 ないです、ないです。
光瀬 ないのか、雨降ったらどうするみたいなことって決めてある?
佐久間 頑張ってやります。
光瀬 頑張る、OKOK。
佐久間 京王電鉄さんからNGがでない限りは…。
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ーー光瀬指絵、最後に語る
佐久間 そろそろまとめの時間なのですが、「スイッチ総研」の今後の展望みたいなものは、ありますか?
光瀬 ないんだけど、なんか言わないと終わらないよね(笑)
佐久間 さすがのお察しで…(笑)
光瀬 うーん、色んなとこに呼んでもらえるようになっているので、どうせだったら全都道府県行ってみたいなーっていう気持ちはある。
佐久間 おぉー
光瀬 あと、これはやってく内に思ったことなんだけど…、スイッチ押してくれる人が「おもしれー」とか言ってくれて、その後に「でも、これってなんなんですか?」って聞かれる時があって。
佐久間 あ、すぐに演劇だとは思わないんですね。
光瀬 まぁ特殊だから。そんでいつも、「これは俳優です。これは演劇です。」って答えると、「わー、これが俳優!すごい!」とか言ってもらって、それがすっごい嬉しくて。
佐久間 嬉しいですね!
光瀬 うん。誇らしい気持ちになるというか。「でしょ?すごいでしょ、俳優!」って。「セットもなんにもなくて、自分だけで、一瞬でこんな世界を生み出せるんですよ、カッコいいでしょ」っていう気持ちがあって。それが「すっごい嬉しいんだな、自分は」っていうことが分かったのね。…でも、
佐久間 でも?
光瀬 「スイッチ総研」が、お陰様でいろんな場所から声をかけて頂けるようになって有難いんだけど、演劇のことをよくご存知でない方に、これで作品を作って上演するのはとても無理だぞというような制作費を提示される事もあったのね。その時に、「このくらいの額で演劇って出来る」って思われてるんだなって。好きでやってる事だけど、赤字が出ることとか全然考えて貰えないのかな?と思うこともあって。…だからやっぱり、えっと、こんなこと言うのお恥ずかしいあれなんですけど、ちょっとでも演劇の地位が上がるといいなぁーっていう、…これ、展望?
佐久間 はい。すごく大事ですよね。すごくすごく。
光瀬 よかった。
佐久間 そんな展望をお持ちの指絵さんから最後に一言…
光瀬 え、まだ何か言わせるの?(笑)
佐久間 最後にもう1個だけ(笑)。新生弱小劇団3人組に捧げる一言を…
光瀬 そっか、3人組。え、お2人(佐藤貴史、永島敬三)はゲストか?
佐久間 はい、お2人はゲストです。でも、お2人にも劇団員のように思ってもらえたらいいなぁと思ってますけど…
光瀬 …そうだなぁ、アドバイスっていうか、ここまで麻由ちゃんの話聞いてて、これからこのスリーピルバーグスに起こるであろうことを想像した私がさぁ、今、一番思うことは、「うらやましい」っていう。
佐久間 あ…
光瀬 すげぇ大変な思いが待ってんだよね、これから。それはもう「うらやましい」っていう。
佐久間 なるほど…
光瀬 あとさ、これは福ちゃんに言われたことなんだけど、河川で「ものすごい大変だー」ってなってる時に、「自分達でやることが一番大変じゃなかったら面白くないじゃん」、て。「ほんとそうだなー、でもむかつくなー。大変なことさせてる張本人に言われると」って(笑)
佐久間 (笑)でも、本当にそうですね。心して、頑張ります!
光瀬 だからもう、観にも行きますし、大応援していますよ!
佐久間 ありがとうございます!大、お待ちしてます!!
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<おしまい>
次週、3月1日(火)は、
対談:ゲスト×劇団員 第2回目
中山祐一朗さん×三土幸敏
「ニョキニョキと出てくる何か」をお届けします。
よければ、たのしみにしてもらえたら…