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今日パパが家出した。③(全3話)

最終話

それは、
「愛する」とは
どういうことかという
課題だったんだと思う。

僕はいつも間違う。

しかし、
僕は離婚届を書いた。

「今日パパが家出した。」


第3話

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「パパ、
今日は泊まっていって、、、」

小学校に入ったばかりの
息子が僕に言った。

家出をしたと言っても、
週に何回かは、

子どもたちの顔を
見に行っている。

最初は
子どもたちも、

実家にでも行っているのだろう
くらいに思っていたんだと思う。

しかし、
僕は家出をして、
一人暮らしをしている。

いよいよ帰ってこない僕を見て、
息子は心配になったんだと思う。

簡単な電化製品や、
食器、生活用品も用意した。

生まれて初めての
本気の家出、一人暮らしだ。

快適だった。

そもそもどうして
家出をすることになったのか。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
妻はイライラしていた。

妻は、4人の子育て、
家事、それにずっと
続けている仕事もある。

仕事も責任が出てきた頃だった。

僕は、
お互いに仕事もしているから、
当然、分担は必要だと考えていた。

とは言え、
最初のうちは、

やはりできることは限られていたし、
妻の負担は大きいと思っていた。

だから、
できることを増やしていったんだ。

少しでも
妻の負担を減らしたいと思って。

妻の帰りが遅い時や、
休みの日は簡単な料理を
するようになったし、

6人分の洗濯物を干すのも
5時に起きて、やっていた。

そのほか、
お風呂に入れることも、
宿題を見ることもしていたし、

他にもやれることは
ないかと聞いていた。

しかし、
妻のイライラは
負担が減っても解消されず、

やってもやっても、
成果を得られなかった。

まるで、
くだり坂のエスカレーターを
逆走しているようだった。

僕はあの頃、家に帰っても
気が休まらない思いだった。

会社では、
上司の顔色を伺い、
家では妻の顔色を伺っている。

ある日、食卓に
僕の食事だけ運ばれず、

「自分でやって」

と言われた時、
堰き止めていたダムは決壊した。

そうして、
家出をして、

僕は離婚届まで書く。

しかし、

僕は愛するということを
やはり勘違いしていた。

子どもに
「パパ、今日は泊まっていって」

と言われた時、

僕は「ただいるだけでいい」
必要な存在だった。

それを妻にも認めて
欲しかったんだと思う。

何かをしているから、
必要なのではなく、

「ただいてくれるだけでいい」
といって欲しかったんだと思う。

しかし、

本来、愛するということは、
無条件だ。

「ただいてくれるだけでいい」
というのは僕の方で、

言ってもらうことを
条件としたものではない。

「あれもやって、
これもやっている、
だから僕の存在を認めてくれ」

そういう態度だった。

そして、
僕はこれまでいかに
妻が僕のことを認めてくれていたか
に気づく。

妻と付き合ったのは、
大学の頃だが、

就職活動をなかなかしなかったし、

結婚も随分待たせた。

転職は3回もしたし、

そのうち1回は
会社に行けなくなった。

若いうちは酔っ払って
朝方帰ってくることは
しょっちゅうだったし、

外で溜め込んだストレスを
巻き散らかすこともあった。

休みの日曜日まで
会社に行って仕事をしたりもした。

なんともダメ夫な時も、
いてくれた。

そして、いつも
「この人はなんとかするだろう」
と信じてくれていた。

離婚届をどうだ、とばかりに
突きつけた時、

妻は、

「夫婦とは添い遂げるものでしょ」

とだけ言った。

僕のしたことは、
「愛する」ことではなかった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3ヶ月ほどの家出だった。

「愛する」ということは
どういうことかを、

ギリギリのところで
考えさせられた。

愛とはそこにあるわけじゃない。

愛するという働きかけが、
愛という状態を表していると思う。

愛する、とは動詞なんだ。

それは、
温かいもので、

それは、
安心に包まれるもので、

それは、
穏やかで、

それは、それ自体
愛おしく、

強さをもたらしてくれるもの。

そして、無条件に美しい。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これは、

「今日パパが家出した。」
の最終話です。

もし、この投稿がいいなと
思ってくれたら、
ぜひ、「いいね」をして。

僕は愛されるということ、
愛するということを、

勘違いしていた。

今でもわかっているのか
どうかわからないけど、

大切なことを見失って
しまわないように、

感じたことを書いておきたい
ということと、

僕の経験を通じて

たった1人の誰かに、
届ける手紙を書くこと。

本当に大切なことは
何だろうか?

という自分自身への
問いかけでもあります。

だから、
よかったらあなたの後押しが欲しい。

また「手紙」を書こうと思うんだ。

僕にとっても大切なことだけど、

僕が書くことで、
あなたに大切なことを
感じてもらうことが、

僕の仕事でもある。

僕にとっては、
大仕事のつもりなんだ。

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