共通テスト受験の「ステルス強制」が目にあまる、という話②
やってしまいました…。「noterあるある」かも知れませんが、記事を公開後、一部誤記を修正して「再公開」したつもりでしたが、うっかり「一時保存」していてホールド。仕事の方も忙しく次稿も書けないまま一昨日気がつき再投稿しました。
共通テストの『ステルス強制』については、コチラをご覧ください。
3.「共通テスト」の問題点は3年前にすべて指摘されていた
大学教授や予備校講師らでつくる「入試改革を考える会」が、2019年10月に結成された。同会は2021年5月21日に文科省で記者会見を開き、共通テストの出題方針の全面的な見直しを求めた。詳しくは、下記の記事をご参照頂きたい。
2021年5月というと、(「身の丈」発言で一世を風靡した)萩生田文科相が入試改革の「2枚看板」として打ち出した、あの(誰がどう見ても特定業者とズブズブの癒着が丸見えであることで)悪名の高い「記述式問題」と「英語民間試験」の導入が正式に断念される2か月前のことである。
しかし、2021年はコロナ禍まっさかりの時期であり、世界中の人が日々の暮らしをいかに維持・回復するかに精一杯で、入試改革の問題も、さしあたり最もデタラメな「2枚看板」の導入が見送られれば「メデタシ、めでたし」という雰囲気のまま世間の関心は薄れ「共通テスト問題」はウヤムヤになっていた。
だが、「入試改革を考える会」の2021年5月21日の会見は、コロナ禍のドサクサに紛れ文科省が何事もなかったかのように2021年1月に実施した「共通テスト」の問題点を、見事に洗い出していたのである。
当稿では(上記の引用記事からの孫引きになるが)「入試改革を考える会」のメンバーのコメントを箇条書きで紹介したい。
(なお、出典は明記しておりますが、引用部分の分量が多いため著作権法上問題がある旨著作権者からのご指摘を頂きましたら、誠実に対応させて頂きます。記事の公開から3年が経過してもなお、各メンバーの先生方のコメント内容が多くの示唆に富み、より多くの読者の目に触れる価値が高いと考えますので、幣ブログで紹介することをご了承頂けましたら幸甚です。)
「入試改革を考える会」代表 大内裕和・中京大教授(教育社会学)
阿部公彦・東大教授(英文学)
鳥飼玖美子・立教大名誉教授(英語)
紅野謙介・日大教授(日本文学)
大澤裕一・予備校講師(数学)
吉田弘幸・予備校講師(物理)
詳しくは、当稿はじめに紹介した朝日新聞(2021年5月21日記者会見)の記事をご覧いただきたいが、「共通テスト」の問題点に対して、各分野を代表する研究者・予備校講師から向けられた上記の批判は重い。
なお、スガ内閣以降、デタラメなやり方で政府が排除を試みている、わが国の正統なアカデミー「日本学術会議」も『大学入試における英語試験のあり方に ついての提言』(インターネットでPDF版を見ることができます)を2020年8月18日付で公表している。英語民間試験の導入に対する批判だけでなく、新学習指導要領がこだわる「4技能を大学入試で計測する」ことの問題点もバッサリ切り捨てているので、興味のある読者諸賢はぜひご覧ください。(上記の鳥飼先生は幹事として、阿部先生は分科会における協力者として同提言に名を連ねている。)
そして、このような批判が向けられている「共通テスト」は本質的な改善が全く加えられないまま、2022年から2024年にも実施され、来年2025年にも(さらにパワーアップして・笑)実施されるのである。
あまつさえ、このように多くの問題点を抱える「共通テスト」が、前稿で指摘したように多くの大学受験生に対しステルス強制されているとすると、その隠された意図・目的いかんが大いに気になる。
冒頭の大内代表の「学習指導要領の目標にここまで大学入試を合わせる必要があるのか?」とのコメントを補助線として、「共通テストのステルス強制(と思しき事象)」までを読みつなげれば、「隠された意図・目的」も自ずから形が見えてくるが、あくまでも推測の域を出ないので結論の明記は差し控えたい。
ただ、一つだけ言えることがある。
このような愚かな教育政策を、各分野の多くの専門家の反対を押し切ってまで断行することが、国の支えとなるべき未来の中間層を不可逆的に弱体化させることにつながるだろうことは論を待たない、ということである。
そのような国家に未来のあろうはずが無い。