アルバムレビュー:『Q』 - Mr.Children
ryotaroがなかなかマニアックな講義を繰り広げているところですが(よもや前後編に分けてくるとは。後編が待ち望まれます)、そこへ対抗して僕は超メジャーなバンドのアルバムについて語りたいと思います。そんなん今さら紹介するまでもなかろう、という声は置いといて。
さて今回はこちら↓。
・『Q』 - Mr.Children (2000)
はい、ミスチルです。説明不要のビッグネーム。カラオケで履歴を眺めると、どこかしらで彼らの歌の歌われた痕跡が見つかりますね。歌い手はさぞかし喉をつぶしたことでしょう。
そんなミスチルの華々しいキャリアの中で、わりかし売れなかったアルバムと言われているのがこの『Q』(まあ売れないといってもそこはミスチルなので「オリコン一位は取り損ねた」というレベルの売れなさですが)。しかし同時に、最高傑作との呼び声も高い一枚です。
ミスチルくらい売れるバンドだと、渋谷のスクランブルにでかでかと宣伝されたり、映画やドラマの主題歌になったりCMで使われたりと、作品が音楽業界を背負わされて、「売れるように作られた」という商業主義的な香りがしばしば染みついちゃうものですが(まあ売れるから仕方ないんですが)、『Q』にはそれがあんまり無い。ブレイクして数年経ち、名声も力も得たバンドが、自分たちの作りたいように作ったアルバム、という感じがします。
まずトップバッターの1. 『CENTER OF UNIVERSE』がのっけから素晴らしい名曲。(ライブでも定番曲のようで、Youtubeを漁ったらライブ動画がゴロゴロ出てきた↓)
宇宙とシュールに彩られたアルバムジャケットのアートワークを、そのまま音にしたような浮遊感を持つイントロ。遊園地のジェットコースターみたいな急激な曲調の変化の中で、奔放に歌い上げられる「あぁ世界は薔薇色 総ては捉え方次第だ」という野放図な言葉。
曲のテンポはダーツの点数で、コード進行はくじ引きで決めたという逸話もあるらしい。僕はこの歌がミスチルの中で三本指に入るくらい好きです。
そんな一曲目を引き継いだ2.『その向こうへ行こう』もすごい。アルバムのオープニングからこの二曲が続いたら、そりゃ売れるもんも売れなくなります。変態的なほどに開放感のあるサビが耳について離れない、そんな歌。
そうして次に控えるのが3. 『NOT FOUND』。
僕はMr.Childrenの最高傑作はこの歌だと思っています。桜井和寿さんのソングライティング、プロデューサー小林武史さんのアレンジメント、喉を絞り上げるような歌声を包むバンドサウンド、すべてが最高の形で結実した一曲。ついでに言えば、このミュージックビデオも大好きです。かっこいい。
その後、4. 『スロースターター』、5. 『Surrender』と癖のある濃い口の曲が続いてからの力強い名バラード6. 『つよがり』。ここで僕の個人的ミスチル三本指が埋まりました(どうでもいい)。ちなみに盟友the pillowsによるカヴァーバージョンもすごく良いです↓(動画の2:40から曲が始まります)
名曲のあとには迷曲(いい意味で)が続きます。7. 『十二月のセントラルパークブルース』、8. 『友とコーヒーと嘘と胃袋』がこれまた挑発的で面白い。特に『友と~』の間奏部でのセリフ回しなんて最高っす。この歌も個人的ミスチル五本指の常連なんですが、いいかげん指が足りなくなりそう。
それからまるで口直しのシャーベットのように9. 『ロードムービー』という爽やかなナンバーが挟まって、10. 『Everything is made from a dream』へ。この曲も1. 『CENTER OF UNIVERSE』とともに、アルバムジャケットを象徴しているように思えます。近未来SF感のあるサウンドです。
そしてまた素直な名曲11. 『口笛』が食後の紅茶のように供されて、アルバムがひと段落するかと思いきや12. 『Hallelujah』というリード曲が満を持して登場。曲者ぞろいのアルバムの部隊長を務めるだけの懐の広さを持った楽曲に思わずお腹いっぱいです。
それからやっとラストナンバー13. 『安らげる場所』。閉店間際の百貨店で流れてきそうなピアノのイントロで始まる名バラードで、アルバムの幕が降ります。拍手喝采。
おお、ついつい全曲語ってしまった。好きな曲の話になると熱くなってしまう。
僕は10代後半~20代前半にかけてミスチルを聴きこんで、その頃に聴きすぎて最近はちょい離れてしまったというステレオタイプな男なんですが、『Q』は今でも定期的に聴きたくなってしまう。
今までミスチルをちゃんと聴いたことがなくて、カラオケで先輩が叫ぶ『HANABI』や課長ががなる『シーソーゲーム』しか知らない、という方がもし居たら、ぜひこの『Q』のオープニング三曲を聴いてみてください。Mr.Childrenはただ国民的なバンドなわけではなく、カッコよく尖ったすごいバンドです。