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【考察】VTuber戦略 - VTuberとn次創作とファン創作【三歩未知】

皆さんおはみちっすー
 三歩歩けば未知の世界、設定迷子の三歩未知です。

 今回は3月15日の生配信のテーマ「VTuberとファン創作」を、精査してまとめたnoteとなっています。
 VTuberもやはりオタク文化に親和性の高いコンテンツですが、そうした性質を持つので二次創作・同人創作の持つ役割も大きなものです。
 VTuberにおけるファン創作の役割・現状・課題について考えてみました。
 ぜひ最後までお付き合いくださいなノシ

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■n次創作は起きないのか?

 VTuberでn次創作は起きないのか?
 n次創作とは、初音ミクないしボーカロイドが巻き起こした社会現象を説明する際に表れた言葉で、オリジナルの派生が二次創作なのに対して、二次創作の派生、また更にその派生といったような、創作の福次連鎖が巻き起こした文化活動のうねりのことを言う。

 VTuberのことを評価する時「ボーカロイド以来、久しぶりに日本から生まれた面白いコンテンツ」という言われ方をする。ただ、日本発の新しいコンテンツという以外でもボーカロイドとVTuberには類似点がいくつか見られる。
 例えばボーカロイドは「ボーカロイド」というジャンルの中でもJ-POPやクラシック、メタル、テクノなど様々な音楽が楽しめるごった煮の文化だったという言われ方をする。対してVTuberもそのジャンルの中でそれぞれのキャラクターや全く分野の異なる知識・技術を持つプレーヤーたちが集まっている。
 「バーチャル」という文脈も色濃く引き継いでいる。初音ミクらがバーチャルを切り拓き今日まで進化し続けてきたからこそ、VTuberは昨年のような音楽ライブの展開が急速に進めることができた。バーチャル×キャラクター×音楽は既に10年分の積み上げられたノウハウがあったのだ。
 
 このようにVTuberにはボーカロイドに似通った点が見られる。
 それを踏まえて、改めてVTuberについて見たとき、初音ミク・ボーカロイドが巻き起こした社会現象として語られるn次創作やUGCといった大きな創作のうねりは左程見られていないように思う。それぞれの創作活動が単一的で、リスナーベースの連鎖的な創作のうねりが巻き起こってないように感じられるのだ。

 果たして、初音ミク現象を象徴するような創作の連鎖のうねりはVTuberでは生まれないのだろうか?

■ファン創作の役割と現状

 ファンによる応援活動の中でも、ファンによる二次創作はVTuber自身のモチベーションにも繋がり、またそのVTuberの宣伝効果も期待できるなど、重要な役割を果たしている。

 ファン創作の代表的なものが、イラストやマンガを描いたファンアートだ。ライブやTwitterなどで実際にあったやり取りの1シーンをイラストやマンガにしたり、或いは独自のシチュエーションやストーリーに乗せた二次創作が見られる。
 3Dモデルを配布しているVTuberについては、幅広いジャンルのファンムービーも見られる。汎用性が高いために、映像作品のジャンルは多岐に渡る。
 人気のVTuberだと、VOICEROIDやUTAUを使ったファンミュージックも作られたりする。月ノ美兎イメージソング 『Moon!!』のように、もともとファン創作だったものが実際の音楽ライブでも歌われるなど、半ば公式化する流れも表れている。
 キャラクターよりもライバーの文脈から来る切り抜きもよく見られるファン創作の1つだ。VTuberは多くライブをすることで素材を供給し、切り抜き師が編集を加えることで、テレビ番組がやっていたような工程が各々の楽しみの中で回っているというのは実に面白い。
 このように、VTuber界隈におけるファン創作のジャンルについては、多岐に渡って多くの創作活動が行われている。

■「大きな本家」はn次創作を萎縮させるのか?

 大きな政府、或いは小さな政府という言い方を聞いたことはあるだろうか。簡単に言うと市場に政府がどの程度干渉すべきかという議論における言葉、だったはず。
 私はたまにこれになぞらえて、コンテンツの供給と同人創作の関係について「大きな本家」「小さな本家」という考え方をする。
 これについて例えば初音ミク・ボーカロイドの本家であるクリプトンは「小さな本家」である。僅かな設定しか持たない初音ミクの余白・自由さであったり、キャラクター利用ガイドラインを定めることでルールのもと自由化するなど、ある程度創作活動のしやすい環境整備はしつつも、初音ミクから想起される基本的なコンテンツ=音楽作品についてはユーザーが主体となって多く創作された。UCG(ユーザー生成コンテンツ)がこれである。

 私が思うのは、VTuberは多くが「大きな本家」かもしれないということだ。
 例えば、VOICEROIDキズナアイが登場したとして、自らゲーム実況をしているキズナアイに競合するVOICEROIDキズナアイゲーム実況は流行るのか?といったことである。
 あるいは、各VTuberがそれぞれ自分のファン創作に対する価値観に違いがあったり、それによって各々にキャラクター利用規約があるという現状の複雑さも課題かもしれない。
 VTuber黎明期に見られた、UGCをVTuber活動と連携させる取り組みは、全体として目立たなくなっているように思う。
 また、ファン創作という文化的行為の内情として、VTuber本人に見てもらったりファン同士で共有する動きはよく見られるが、一方で「うちの"初音ミク"」的な表現、本家とは切り離されたところでキャラの余白に独自解釈をを加えて醸成される在り方は、「大きな本家」の存在感が強いことによって生まれにくい土壌になっているのではないか、とも思う。

■「応援」があるから続けていける。

 VTuberでn次創作は起こせるのか?
 UCGの土壌を育むことはできるのか?
 VTuberはファン創作とどのように付き合えばいいのか?
 「うちの”初音ミク”」的表現はVTuberでも可能なのか?

 オタク文化においてコンテンツと同人創作の関係は切っても切り離せない。VTuber界隈のファン創作・同人創作の存在意義や価値、課題について考えることも、VTuberを文化にする上で重要ではないだろうか。

 「VTuberを応援したい」という尊い気持ち、その芽が自然に育っていけるような環境とはどんなものだろうか。よかったら一緒に考えていきませんか?

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 今回の記事はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました!
 3POMICHI PROJECTでは、未知と未来に一歩を踏み出すきっかけになる情報発信をこれからもお届けしていきたいと思います。

 それではまた、次の散歩道で会いましょう。またね。

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