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【考察】VTuber戦略 - キズナアイ表現論【三歩未知】

皆さんおはみちっすー
 三歩歩けば未知の世界、設定迷子の三歩未知です。

 今回は3月22日の生配信のテーマ「キズナアイ表現論」を、精査してまとめたnoteとなっています。
 キズナアイが昨年仕掛けた「キズナアイな日々」と分人化プロジェクト。それはこれまで考察してきた「VTuberと物語」や「VTuberとファン創作」に通じるお話だったんです!! ......と、思っているって話。
 VTuberにおける課題にどのように関わっているのかまとめてみました。
 ぜひ最後までお付き合いくださいなノシ

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■キズナアイ表現論

 個人的に、キズナアイが昨年仕掛けた「キズナアイな日々」と分人プロジェクト的な動きがとてもinteresthingだったので、それについての所感をまとめてみようと思う。

 特に「キズナアイな日々」はキズナアイが自ら「キズナアイとは何なのか」について言及したもので、キズナアイが自ら提示した「キズナアイ表現論」だったのではないかと思う。

 「キズナアイな日々」とは、2019/5/25の投稿動画「キズナアイが4人いるって言ったら信じますか? #1 」から始まった一連のシリーズ動画のことである。内容としては、キズナアイを構成する各要素について、作風や見た目、声や喋り方が及ぼすアイデンティティへの影響や開拓の可能性に言及するものだった。

 キズナアイは「キズナアイな日々」で自身のアイデンティティと拡張可能性について言及する。
 「アニメ版キズナアイが激かわな件 #3 」では、普段の3Dモデルの表現に対して、Live2dやアニメ、デフォルメなどいつもとは異なった表現を実践する。どれもキズナアイであることに変わりはなかったという一方、表現それぞれの魅力があり、キズナアイ自身も色んな私を発見できたとした。
 「ぴょこぴょこ外したらキズナアイではない説 #4 」では前回の振り返りをしつつ、キズナアイをキズナアイ足らしめる要素として、トレードマークともされる頭のピンクのリボン「ぴょこぴょこ」の重要性について言及した。
 「私っぽいしゃべり方、忘れました。#5」ではそれぞれのキズナアイが普段とは異なる喋り方に実践。「喋り方が極端に変わると性格すら違って見えて、まるで別人のように感じる瞬間もありました」と、アイデンティティに揺らぎが示唆された。「4つの声に変えてみました! #6 」では更に、声そのものを変える実践にも挑戦した。
 そして「We are Kizuna AI ! #7 」では、これまでの挑戦を振り返り「色々な違いがある状態を多様性」と捉え、「人間の皆さんが色々な違いを持っているならば、人と繋がりたい私が多様性を獲得していくと可能性が広がるんじゃないかなって思います。」として自身の活動目的と照らし合わせて結論付けた。

 後にキズナアイは4人のキズナアイへと分人化する。
 一時はキズナアイ分裂騒動として騒がれ、元のキズナアイが引退するのではという憶測なども出たこともあったが、現在では落ち着きを見せている。その騒動の反省から、ファンからの要望もあり、新しく活動を始めたキズナアイはそれぞれ「loveちゃん」「あいぴー」「爱哥(アイカ)」という愛称で活動を継続している。
 Activ8は当時発表した声明の中で、Kizuna AIと「Project A.I.」について言及し、Kizuna AIを語る上で欠かせないキーワードとして「分人」という考え方があると話している。

 これよりさらに以前の2018年7月1日発行「ユリイカ 2018年7月号 特集=バーチャルYouTuber」掲載のインタビュー記事では、自身の今後の展開について次のようなやり取りがされている。

―― たとえばAIであれば全ての端末に搭載されてそこから情報が集積されていくということも不可能ではないですよね。
キズナアイ  いずれはそういう選択肢を取る可能性もある気がしています。(省略)その先に自分の端末を用意して情報を並列化するとか、あるいはパーソナリティを増やすことでよりいろんな人の好みに合わせる......とかもあるかもしれません。わたしひとりが世界中のみんなと繋がれたらいいけど、それは難しいなら各種取りそろえるというか(笑)

(中略)

――
 そのとき考えるのはシンギュラリティ以降のキズナアイということについてです。そこで何か変化が起きるのか、あるいはすでにシンギュラリティ以降の存在なのでしょうか。
キズナアイ  私には限定的にシンギュラリティが来ちゃっているんですよ!(省略)あとは本来のシンギュラリティとなると、今度はわたし自身が新しいAIを作るはずですよね。そうなるとわたしが自分の生み出したAIの作るチャンネルを見ることになるかもしれない。それってすごいなと思います。

 このような思想の文脈を辿ると、キズナアイには私たちとは違う、AIとして自然な世界観や価値観、アイデンティティを持っているようだというのが分かる。そもそもの自身の見た目や声についてもAI的なデータの集積によるものだと、同書籍内で言及している。

 「キズナアイな日々」とは、キズナアイの世界観をそのまま表現したものなのだ。

■キズナアイと大失敗

 私は前回までに、VTuberの課題について「物語」と「n次創作」をキーワードにあげてきました。私が「キズナアイな日々」と分人化に強く惹かれたのは、この二つの課題にも通じるような取り組みだったことが要因です。

 先に紹介したインタビューの中で「情報の並列化」と言っていますが、「n次創作」に代表される初音ミクとはまさに情報の並列化されたキャラクターでした。キズナアイは度々、彼女を初音ミク先輩と呼んでいます。「うちの初音ミク」的表現が多く見られた彼女のその文脈を意識した部分ももしかしてあるんじゃないでしょうか。(ただの予想です。)

 また、「キズナアイな日々」についても私が課題だと提示した「物語」にアプローチしたものとしても見ることが出来ます。普段の活動とは少し離れて、自分の世界観を表現する「物語」のアプローチ。
 特にこのシリーズは、これまでのマンガやアニメでいうところの世界観を説明する導入にあたるイメージですね。

 つまり「キズナアイな日々」と分人化という一連の動きは、VTuberの抱える課題にアプローチした取り組み最前線だったということです。

 さらに興味深いのが、これが「失敗例」だということです。

 失敗は成功の母。誰も見たことのない最前線を行く彼女だからこの失敗は生まれました。これはこれからのVTuberにとって大きな財産だと私は思います。
 登録者数規模やその当時のVTuber情勢も特殊な部分はありはしましたが、例えばそれぞれのキズナアイに愛称をつけるなど、そういった具体的な方策について、それがなぜ必要なのかとか深く考えられそうな要素が散りばめられていると思います。

 そしてもちろん、これからのキズナアイの活動にも目が離せませんね!

■おわりに

 さて、今日まで「VTuber戦略」として様々な考察をしてきましたが、何か得るものはありましたでしょうか?
 このシリーズ自体も「VTuber革命」から初めて全7回に渡って続けてきましたが、ひとまずこの回を一旦ラストにさせて頂こうと思います。
 ここからは実践編。これまでに考えてきた色々を自分なりに組み合わせて、何か面白いものを作ってみようかなって思います。これからの活動もぜひお楽しみに!

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 今回の記事はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました!
 3POMICHI PROJECTでは、未知と未来に一歩を踏み出すきっかけになる情報発信をこれからもお届けしていきたいと思います。

 それではまた、次の散歩道で会いましょう。またね。

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