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僕ら2人の想う先。【短編小説】

青ブラ文学部さんのお題【答え合わせ】にて、短編小説『花火とともに』の続編を書いてみました。
素敵なお題をありがとうございました!

上記『花火とともに』の続きになっておりますので、気になる方は読んでみてください。
ちなみに前作読まなくても、今作だけでも話が分かるようにしているつもりです。
(なってなかったら、ごめんなさい)

〈登場人物〉
上都かみと  春来はるき
箕里みのり  秋人あきと
海野うみの  夏凛かりん
真白ましろ  千冬ちふゆ

夏祭りのあの日、千冬と2人きりで花火を打ち上げた春来。春来はその事をつい秋人に話してしまう。それを知り羨ましがる秋人。てっきり秋人は海野の事が好きだと思っていた春来。秋人の想う相手はいったい。そんな2人の答え合わせが始まる。

親友である秋人との関係は…。


夏祭りの日、真白への僕の初めての告白は不完全燃焼のまま終わった。そんな僕は今日も真白を眺めるだけの日々を送っている。

「なに千冬ちゃんに見とれてんだよ。」と、ニヤついた秋人が僕の顔を覗いてくる。
「うるさい、別に見とれてないし。」
そう言って鬱陶しいハエを払うように顔を後ろへ引きつつ、秋人の顔を手で払った。

ふーん。というように秋人は僕を見る。
なんだよ。と、僕は目を逸らした。

「そういえばさ、夏祭りの日、俺らとはぐれた後、千冬ちゃんと2人でどこいってたんだよ。俺らめっちゃ探したんだからな。」と、少し不機嫌そうに秋人が言う。
どうやら、秋人と海野ははぐれた後、僕らが行列のできるリモコンに並んでいる間、必死で探していたらしい。
僕は「ごめん、ごめん。」とバツが悪そうに謝りながらも、真白と2人で過ごせたあの日の嬉しさから、つい話を続ける。

「それがさ、あの後ダイプレに並んでリモコンで打ち上げ花火することができてさ、マジ最高だったわ〜。」と、笑みがこぼれる。
すると、それを聞いた秋人が「うそだろ…。」と眉をひそめた。
「あ〜あ、大好きな千冬ちゃんと抜けがけかよ。ずりぃぞ春来お前だけ〜」と、秋人は少し項垂れている。

「別に大好きとか言ってないし。海野とはぐれたんだから仕方ないだろ。ていうか、僕はダイプレできたことを喜んでんの!」と真白への気持ちがバレるのが恥ずかしくて誤魔化した。

「秋人こそ、海野と過ごせて良かったじゃん。」
「はぁ?全然良くねぇよ。お前ら見つからなくて夏凛はキレだすし、なだめんの大変だったんだぞ?!」
秋人は激おこプンプン丸だ。
「そんなに怒んなよ。プンプン丸。」
「うるせぇ!プンプン丸じゃねぇし、プンプン丸って古すぎだろ!お前だけ千冬ちゃんとランデブーなんて許さねぇからな!」と、秋人はさらにムカ着火ファイヤーしている。
「いや、ランデブーもなかなか古いでしょ。」と、笑いながらツッコミつつ、お互い好きな子と居れたのならwin-winだろと思ったが、その思いはやがて疑念へと変わることとなる。

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秋人とは幼稚園が同じで、小さい頃から一緒に遊んできた。
海野と真白は、小学校の高学年辺りで名前に四季が入っているという共通点から仲良くなり、PTAで僕らの両親も意気投合し、それ以来家族ぐるみでも仲が良い。

僕は真白の少し恥ずかしがり屋で素直な所に少しずつ惹かれていった。気づけば真白の事を目で追うようになっていて、それで好きという感情を自覚した。

秋人とは小っ恥ずかしくて、恋の話は未だできていない。けれど、秋人は海野のことが好きだということは見てれいれば分かるくらいだった。
秋人はいつもバカして海野に叩かれて反発して、なんだかんだ楽しそうにやっている。
だから僕は安心して真白だけを真っ直ぐ見ていた。

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抜け駆けして悪かったよ。と秋人へ謝る。
すると秋人は机に突っ伏してため息混じりに窓の外を見た。
秋人が窓の外を見ながら、
「いいよなー、千冬ちゃんって。素直で可愛いし。お嫁さんにしたら最高だよな。」と話し出しす。

僕の心臓が一瞬ドキンとする。
交わることのないと思っていた恋路が重なったような気がした。
「まぁね、真白って、嘘つけなさそうだもんね。」僕は秋人の気持ちを探るように、それとない言葉を選ぶ。
「でも、海野も良いと思うけど、明るくていつも笑ってるし。」
僕は秋人が海野を好きだと確信できる言葉が欲しかった。真白を好きと言われるのを恐れて『好きな人』を直接聞くことができずにいた。

「ん〜、だって夏凛のやつ、いっつも怒ってくるしさ、それに比べて千冬ちゃんなんて天使じゃん。女神じゃん。」
まぁ、それは確かに同感である。
「海野は秋人がバカするから怒ってんだろ。てか、別に怒ってるってほど怒ってはなさそうだけどな。」
そういうと、秋人は分かってねぇなぁ、と言ったように首を振った。
「鬼だぞ、鬼。あいつは鬼だ。」と秋人は芸人ように鬼瓦の顔真似をする。
「鬼を嫁にしたら、鬼嫁だぞ?生きていけると思うか?」迫る秋人を分かった、分かった。と押し返す。
「秋人くらいの奴を操るなら鬼嫁くらいがちょうどいいと思うけどな。」と、それとなく2人がお似合いであることを伝える。
「マジ?やっぱ、夏凛しかいねぇのかなぁ。」そう言って秋人は顔を手で覆った。
僕は確信までもう一押しだと思った。
すると、秋人がすかさず言う。
「でも俺、やっぱり優しくされてぇ。大っきいおっぱい揉みてぇ。」
僕はすかさず秋人の頭を叩いた。
「いってぇ、何すんだよ。それが男のロマンだろ!」と叩かれた頭をさすっている。
結局、猿の好みは乳のある女神か、と思った。
そして、こいつとなら真白を巡って戦える気がした。というか、なんだか負ける気がしなかった。
僕はハイハイと笑いながら「まぁ、なんでもいいけど。そんな奴にだけは、真白を譲る気しないわ。」と秋人へ伝えた。

僕の言葉を聞いて、秋人がなぜかキョトンとしている。
「譲るも何も、そんな気はないけど…」と秋人は言った。
「え?今、そういう流れだったじゃん…」
僕らは時が止まったように見つめあった。
「え、うそ…そうだった?」と秋人は爆笑している。
どうやら僕は自爆したようで、一瞬で顔が熱くなった。まさか仕掛けていたつもりがハメられるとは…それもこんな猿に…と少し屈辱に思う。それと同時に、『え、真白のこと狙ってたんじゃないの?』と我に返る。

「え、秋人、だって、海野が怒るから優しい方がいいんじゃ…」僕の頭はフリーズしかけていた。

すると、秋人はうーん。と少し考えつつ、
「まぁ、でも夏凛は怒るし乳はねぇけど、なんだかんだ助けてくれるし、たまに可愛いところもあるからな。やっぱ俺には夏凛が居ねぇとダメなんだわ。」と、少し照れたように笑った。
それを見て、なんだか僕は少しほっとした。
「なんだよ、もっと早く言えよ。」と僕もたまらず笑いだした。

それからというもの、僕らはお互いの恋について話すようになった。
「今回も頼んだぞ。あいつ素直じゃねぇし、手強いんだから。」秋人は海野に気づかれないよう僕に耳打ちする。
「分かってるよ。協力するから、こっちもね。」と、僕も返す。
「おう、任せとけ。」と秋人は意気揚々と言った。

そう、僕らはあの日以来、恋のキューピット協定を結んでいる。




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メインの小説は堪能されましたか。

この後にデザートでもいかがですか。

ということで、私がこれを書くに至った経緯や意図、その時の思いや感情などを知りたいと思った方はぜひ以下リンク先の『ゆるっと日常系が好き。【デザート】』を読んでみてください。

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蒔倉 みのむし
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