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理想には程遠い。

俺の部屋には、小栗旬と松本潤と小学生の頃からモテていた同級生が1人。俺を含めて計4人がいた。

俺達は普段からつるんでゲームや菓子パなどをやっている仲だ。
そんな俺達4人は、俺の地元の高校へ転校することが決まっていて、それが今日だった。

学校の制服はブレザーで、ネイビーのチェック柄のズボンに、ネクタイを締める。
小栗旬も松潤も似合っていた。イケメンパラダイスや花より男子で見たままのイケメンオーラだ。

ふたりが喋っているだけで、なぜか輝いて見える。これがイケメン。恐ろしい。
俺だって、それなりに顔は整っているし、どちらかと言えば松潤みたいな濃いめではなく、手越祐也みたいな愛嬌のある顔だと思っている。

俺達は徒歩で登校した。
学校までの坂道を下る。

男女問わずすれ違う人々の視線が4人に向けられる。
潜めているようで全然潜まっていない黄色い声がちらほらと届く。
たぶん、俺じゃないけど、俺じゃないけど、俺も嬉しい。

校舎へ向かう途中、体育館の脇を通ると、体育館の中で学生が部活動をやっていた。
好きな先輩が真面目にラケットを振っている。本当はもう少し眺めていたかったけど旬達が立ち止まることはなくて、俺も後を追いかけた。

するとそこにボールが転がってきた。ボールは旬達を通り越して向かい側まで転がった。
旬達は周りの黄色い声援部に軽く手を振り応えているためボールへは見向きもしない。
俺はしょーがねぇな、とボールを拾った。
ボールを受け取りに来た人は好きな先輩だった。俺はつとめてクールにボールを渡した。

彼女は「ありがとう」と少し照れたように笑った。

ズッキューンと俺の胸に矢が刺さる。そのまま卒倒しそうなほどだったが、なんとか持ちこたえて俺も笑顔で「おぅ」と返した。

幸せいっぱいの気持ちのまま、みんなの元へ急ぐ。
もう崩れた顔の直し方が分からない。
そんな俺の肩に誰かが手をかけた。

振り返ると、そこには国宝級ブサイクがいた。どうしたらこれほどアンバランスな顔になれるのだろうか。

俺の顔は途端に引きつった。
国宝級ブサイクが一緒に行こうぜと馴れ馴れしく肩を組む。
俺はビビって旬達の元へ少し走った。

「旬、やべーよ、今やべー奴に絡まれてるって」
そう言って走る俺の横には相変わらず肩を組んだままの国宝級ブサイクがいる。
そして奴はそんな話のさなかでも何食わぬ顔で笑っていた。恐怖である。

旬は「おぉ、大変そうだな」と他人事として笑っている。イケメンは薄情だ。

国宝級ブサイクは校舎のグラウンドに入った辺りで「じゃあ、また後でな」と奇妙な走り方で去っていった。
俺は少し安堵した。

そして夢から覚めた。

鏡を見て思う。手越祐也はどこいった。
俺のどこにそんな要素があったんだ。
夢、それは現実で望んでも叶えられない理想と幻想。

俺はそこで全てを悟った。

そうか、あのブサイクが実は本当の俺だったのかもしれない。




#なんのはなしですか
#どうかしているとしか
#どうでもいいか



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蒔倉 みのむし
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