そんなはずがない。【ショートショート】
今日はあいにくの雨。
「圭太、早くしなさい。遅れるわよ」
「うん、今行くー!」
5歳になる息子は先日買ったばかりのオバケレインコートを嬉しそうに着ている。園のみんなに自慢したいのだろう、買った日からずっと楽しみにしていた。
通っている幼稚園は歩いて行ける距離にある。手を繋ぎ、できるだけ圭太が濡れないように傘を持った。
園に着くやいなや先生の元へ向かい自慢げに燥いでいる。
私は圭太を預け家へと戻った。
家事や仕事が一段落した頃にはあっという間に16時になろうとしていた。迎えに行こうと傘を手に取り玄関を出た。
薄暗い視界と雨音の先、見覚えのあるレインコートの小さな姿が目の前の通りを横切った気がした。
不審に思い家を出て、その子が向かった方へ塀を曲がる。
「このレインコート…」
私は道端に落ちていた1枚のオバケレインコートを拾い上げた。
園から一人で帰ってくることはない。私は言いようのない不安に襲われた。
無音の土砂降りに着信音が鳴るーー。
【410字】
《今回のお題》
たらはかにさん(毎週ショートショートnote)
▶︎【オバケレインコート】のお題で、霊的ショートショート
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メインの小説はどうでしたか。
この後にデザートでもいかがですか。
ということで、私がこれを書くに至った経緯や意図、その時の思いや感情などを知りたいと思った方はぜひ以下リンク先の『ちょっとホラー系に挑戦してみた。【デザート】』を読んでみてください。
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