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ヒトと歩く道
思い浮かべてみてください。
読者の皆さんには居ますか?
────名前も知らないけど、忘れられない人。
2018年10月24日
私は異国の地、香港の空港に居ました。
というのも、FJALLRAVEN Classic HongKongというロングトレイルイベントへ参加する為です。
英語力は中学1年生レベル。
言葉の壁・初めての海外イベント・初めてのテント泊でのロングトレイルと初めてづくめで、ガチガチに身構えていました。
不安は大きかったけど、スノーボードで鍛えた自分の脚を信じ2泊3日のロングトレイルへ臨みます。
参加をするにあたり私は、アウトドア用品を扱うショップスタッフとして、
また、アウトドアマンとしてのレベルアップ・商品の使用確認など、
学級委員長の様な使命感を持ってイベントに臨みましたが
実際に得たものはもっともっと大きく
アウトドアショップスタッフ以前に、もっと人間としての根源的な部分、
自分が「76億分の1の人間」であるという実感。
少々意識が高いフレーズで、自分で言っていて多少の恥ずかしさはあるのですが、
耳を赤くしながらも胸を張ってお伝えできます。
「人間ってスバラシイと。」
今回のイベントは、
3日間にかけ
累計標高1,851m
総距離48km
参加者は世界各国
順位を競うのではなく
定められたルートを使ってゴールを目指す。
ただ己と向き合い、前へと進む非常にシンプルな内容。
いざ歩き始めてみると、香港特有の“湿度が高く蒸し暑い気候”がどんどん体力を削ってきます。
また、スタートから急な登りが多く、参加者たちは早速洗礼を受けています。
スタート時は大勢で歩いていた参加者も各々のペースに散らばり
自然と同じくらいのペースで進む人達がまとまっていきます。
抜きつ抜かれつ、似た顔ぶれが同じ方向を目指していく事で小さな一体感が生まれ始めました。
特に、後ほど登場するシンガポールから参加された女性3名組とは1時間毎くらいに遭遇していました。
それぞれが疲労している中、笑顔で「Hi!」と声を掛け合い、
鼓舞する様な、わかち合う様な、支え合う様な...
テキスト媒体のnoteではあり得ない事なのですが、文字では表せない空気感がそこにはありました。
初日の宿泊地ではイベントスタッフが全力の笑顔で迎え入れてくれ、何を話しているか全く分かりませんでしたが
疲れた体に暖かく心に染み渡ります。
例えるなら”休日の朝に飲むホットコーヒーの様に“とでも言いましょうか。
ちなみにその後ろでは野生の牛が2頭暴れていました。
2日目ともなると、前日の同ペース組の顔ぶれとは「今日もよろしく!」的な感じで気も知れた仲です。
ちなみにこの解釈は「Hi!」の主観的意訳ですが、前日の苦労を共に乗り越えたという点で心が繋がったので、誤訳ではないはずです。
いや、誤訳では無いと確信を持ってお伝えします。
2日目という事もあり、道端の岩に腰掛け、肩で息をしている参加者もちらほら...
かくいう私も「ゼェ...ハァ...」
そんな時、
「Are you OK?」
そう、昨日のシンガポール三姉妹でした。
笑顔で「OK!」と返すと、彼女たちも少し一緒に休憩をとる事に。
他愛もない会話を、ボディランゲージ9割、英単語1割で繰り広げつつ、しばしの異文化交流。
「二日目の道は昨日にも増して過酷だね」
「そうね、早く帰ってママの海南鶏飯が食べたいわ」
なんて話しているつもりでしたが、
どうやら
「今日の道は牛のウ●コまみれでやばいわ!さっき踏んじゃってまじで最悪!」
みたいな内容でした。
「牛」は聞き取れたのですが、「ウ●コ」が聞き取れず
綺麗なお姉さんに何度も何度も「ウ●コ」のジェスチャーをさせてしまって正直申し訳ないと思いました。
一生懸命ジェスチャーしてくれてありがとう。
読者の皆様、ちなみにですが「ウ●コ」のジェスチャーは国境を越えていますよ。
その日は浜辺でビーチキャンプ、2日目となる本日もスタッフの迎え入れ態勢は千葉県の某テーマパークに引けを取らない歓迎ムード。
キャンプ地のスタッフは私が日本人だと分かるや否や、知っている日本語を投げ掛けてきてくれます。
「しゃぶしゃぶ!」「しゃぶしゃぶ!」
(°_°)...?
読者の皆様失礼しました。誤字がございました。
「日本人だと分かるや否や、分かる単語を投げつけてきてくれます。」
テントを張り終えひと段落して、夕飯へ向かうとその日のメニューは豚しゃぶ鍋でした。
(;・`д・´)!!
スタッフさんごめんなさい。
晩御飯のメニューを教えてくれていたんですね。
何言ってんだこいつ?ってそれはそれは冷ややかな愛想笑いをして、本当にごめんなさい。
とても美味しかったです。
余談ですが、鍋のシメにはサッポロ1番の袋麺が出てきました。
なんと香港では、サッポロ一番がどこでも手に入るほど普及しており、日本よりフレーバーも多いんです。
確か1袋50円程度で、お土産がとても安上がりで済みました。
さてさて、イベントもラスト1日
最終日の足取りは、自分でも驚くほどに軽く
小躍りできちゃうくらいの軽快さ。
初めて肩を並べて歩くペースの速いグループは、ベテランと思しき方達が多く、どこかクールでかっこよく見えました。
颯爽と歩く姿に、「ウ●コ」の話しながら休憩するのも楽しいんだよって教えてあげたかったです。
48kmの道のりも残り数十メートル
ゴールにいる参加者・スタッフからは、私の姿が見え始めた瞬間から歓喜の声が
「ヒュー!」
「おかえりー!」
「おつかれー!」
遠目にその音や声を聴きながら「指笛って海外っぽい!」なんてノンキに思っていましたが
いざゴールゲートをくぐった瞬間には
無意識に右手の拳を高々と掲げていました。
誰に見せるでもなく、何をアピールするでもなく
ただただ自然と「やったぞ」と。
無事にゴールを成し遂げた自分が立っているここが、世界の中心だと思いました。
ゴールでは見慣れた顔もいて
一緒に写真を撮ったり、無事にゴールできてよかったと喜びを分かち合ったり
私は「日本が大好きなんだ!」と中華料理について熱弁してもらったり。
アウトドアが好きで、同じゴールを目指しているというだけの共通点。
ただそれだけの共有点が、言葉の壁を越え
深い絆を、熱い友情を芽生えさせてくれました。
名前も知らない人達だけれど、一生忘れられない人です。
自己紹介すらままならない語学レベルで、お互い爆笑が出来るんですよ。
人間ってスバラシイです。
「山を歩いた」のではなく、「ヒトと歩いた」3日間
私の一生の財産です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
FJALLRAVEN by 3NITY 新宿小田急ハルク 杉野でした(@^^)/~~~