〇〇と僕『ね』~猫と僕~
猫が欲しいにゃー。
……。
失敬。
ちゃんと書こう。
僕は猫が欲しい。
しばらく前から、猫がいる暮らしに憧れを抱いている。
そして先日、その憧れは激しい風を伴い急速に加速した。
9月の初めのパッカーンと晴れた日に、僕は散歩に出かけた。
半袖で黙って立っていると若干肌寒いが、歩いているとちょうど良いくらいの気温。
最高。
しかし、山にハイキングに行くことは出来ないし、大好きな動物園にも行けない。
家に居れば、珈琲をがぶ飲みしながらルマンドを食べるくらいしかやることがない。
ってなわけで、僕は散歩に出かけた。
目的もなくひたすら青梅街道を西へ西へと進む。
さらさらとした心地好い陽を浴びながら、へらへらと進む。
スーパーを通り過ぎ、くら寿司を通り過ぎ、小さな神社を通り過ぎ、延々と真っ直ぐ進む。
そしてそこそこ大きな交差点へ。
信号は赤。
車がいなくても赤信号は渡らない。
たとえ歩行者の信号無視という小さな罪であってもカルマは確実に蓄積し、閻魔大王による最期の審判の時、容赦なく地獄行きを言い渡されるのだ。
僕は天国に行きたい。
ってなわけで、信号が変わるのを待つ。
なかなか変わらない。
やることがない。
やることがない時はキョロキョロするに限る。
キョロキョロ。
そんで左を向いた時、僕の目に楽園が飛び込んできた。
楽園とは、そう、ペットショップである。
キョロキョロはおしまい。
僕は導かれるように楽園へ足を踏み入れた。
入ってすぐ、左でワンワン、右でニャンニャン。
まさに楽園。
カルマが溜まっている人間にはたどり着けない境地である。
そら見たことか。
ゲージの前に立ち、順番に猫を眺める。
周りの人からよく「瞳が心の鏡になっていない。」と言われてきた僕の目も、この時ばかりはトロンと溶けて多幸感を写し出す。
はぁ、可愛い。
みんな可愛い。
是非とも連れて帰りたい。
しかし、値札を見た瞬間、蜘蛛の糸をちょんぎられたかのようにサッと現実に引き戻される。
昔バンドメンバーで金を出し合って買った8人乗りの中古車より高い。
1人も乗れないのに。
現実を突き付けられた僕はとぼとぼと楽園を後にし、歩いてきた道を家へと引き返した。
しかし、諦めたわけではない。
その日以来、猫を飼いたい欲は日々強くなっている。
もちろん、金はない。
たとえ購入資金がたまったとしても、その後養っていく力が僕にはない。
というわけで、僕は猫のいる暮らしのために働く。
がむしゃらに働く。
命を削っても働く。
そしていつの日か、僕は本当の楽園で暮らすのだ。
ちなみに僕は極度の猫アレルギーである。
猫を飼っている人と話しているだけで症状が出ることがあるほどの猫アレルギーである。
しかし、猫を飼い、猫アレルギーが治った人に出会ったことがある。
ということは、僕もきっと治る。
きっと……。
いいや、絶対に治る。
根拠はない。
金もない。
あるのはただ、猫と暮らしたいという強い気持ちだけだ。
『にゃんぞぬデシ / 勘違い心拍数』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO 池守
『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!