インコが喋りすぎる。
山登ったらさ、疲れるじゃん?
多分。
達成感とかすごいって言うから、相当だと思うよ?
あんまり分かんない?
じゃあ説明するけどさ。
まず、道は基本的にずっと坂。
これはキツイ。
俺たちがもし球体だったとしたら、気を抜いた瞬間に転がり落ちちゃう。
やばいよね。
そんで、地面はデコボコ。
これは疲れる。
足首捻っちゃったりして。
まさに自然って感じ。
デコボコだから、仮に俺たちが球体だとしても、溝みたいなところに引っかかって、あんまり転がらない。
めちゃくちゃ疲れそうだよね。
でさ、あの話知ってる?
なんか、海外の拷問的なやつ。
ネットで100回は見たことあるアレ。
緑の部屋に閉じ込めると、その反対の色の赤を見たくなって、自分で自分を傷つけて血の色を見るってやつ。死んじゃうやつ。
思い出してみ?山。緑じゃない?
ね?
山で死ぬ人って年に何人もいるじゃん?
俺、あれってそういうことだと考えてるんだけどさ。
お前はどう思う?
5分やるから考えてみ?
ピヨピヨ
でさ、なんか登山って独特のルールがあるらしいじゃん。
「下りの登山者は、登りの登山者に励ましの言葉をかけるべし」ってやつ。
「頑張れ!あとちょっと!」とか
「頂上まであとこれくらいですよ!」とか言うらしいよ?
知ってる?
俺も最近知ったんだけど。
これってさ、優しさに見えて全然そんなんじゃないよね?
だってさ、山って達成感のために登るんでしょ?
「ああーよく頑張った!、お疲れ様、自分!」ってことでしょ?
でもさ、そんなことを思ってる途中で浮かんでこない?
さっき声かけてきてた人のこと。
あ、頑張って登ったけど、同じくらい頑張った人が他にも結構いるんだな、って。
あれ?そういえばあの人たちそんなに疲れてなかったな、って。
そうなんだよ。
あのルールって、励ましでもなんでもなくて、攻撃なんだよ。
そういうこと言って、取ってんの。
マウント。
山だけにってことね?
え、分かってる?
そう、だから俺、山は登んないの。
なんか疲れそうじゃん。
え、分かんない?
ピヨピヨ。
だって山ってさ、、、
(文責:黒瀬)