見出し画像

これからの医師はどう生きるべきか?キャリアと社保と税について

最近はあまり文字を書く事をしていませんでしたが、久しぶりに筆を取りました。

理由は明確です。大きな時代の変化を前に、これは1つ、古くから僕のことをフォローしてくださっている方には伝えたいと思ったからです。

とはいえ、あまり広く知れ渡ってもらうと困る部分もあります。なるべくご自分の中で留めておいて下さい。

昨今は様々なニュースが飛び交いますね。

やれ診療報酬が改定だ、人が足りない、在宅医療の医師がショットガンで撃たれて亡くなった、働き方改革で宿日直許可になる、本当に色々とあります。

と思えば、美容大手グループのSBCは、ナスダックに上場予定のようです。無借金で年間100億円のM&Aを行い膨張するこの組織は、まさに日本が産んだ美容医療業界の巨人と言えるでしょう。

この記事を読むと、病院経営の最大の問題点であるBS、建物部分をREIT化し、経営効率を高め、しっかり株価を高めようとする意識がある事がわかります。

またLVMHをブランディング戦略の引き合いにだしており、MAの戦略も素晴らしく、もはや美容と言ったらSBC、という世界観に気がついたら入ってしまうのかな、とも感じますね。


完全に時代は変わった

ここで言える事は、完全に時代が変わったという事です。もう数年前とは、全く異なる景色に到達しています。

数年前、こうなる事を誰が予測できたでしょうか?

大筋では予測できていたとしても、ここまで劇的に、部分的には業界が壊れるようなダイナミズムが生まれるとは、誰も予想できなかったはずです。

このような完全に変化した日本の医療業界があっても、我々医師は生き続けなければなりません。

特に、まだ若い医師は、これからの医師としての人生をどう歩んでいくべきなのか、悩む人も多いと思います。

時代が変わった、まずはそれを認識し、今までの当たり前は一旦ゼロに切り替えて、フラットな思考で重要な意思決定をしていく。

まずはこの心構えが基本だと思います。


これからも人手不足は続くのか?

続くと思います。

日本の生産年齢人口は、実は1995年にピークを既に迎えています。しかし女性の労働参加率向上によって、カバーされてきました。

今はそれも限界を迎え、純粋に生産年齢人口が減り続け、サービスの受益者である高齢者は減らないので、本来ならば彼らが高いコストを支払ってサービスを購入するのが普通ですが、保険制度によってそれらはカバーされ、社会保険料という形で現役世代の負担となっています。

唯一この話で希望が持てるのが、外国人労働者です。現在、ラピダスが北海道に、TSMCが熊本に巨大な工場を作っていますが、日本の製造業としての生産能力・生産効率はやはり高く、これらの競争力のある外国の半導体製品を作って輸出する事による付加価値が、国に恩恵をもたらすならば、日本円には一定の魅力があり、円を求めて諸外国から労働人口が入ってくる事はあり得るでしょう。

よく「既に日本の方が給料が低い」という意見が出ますが、それは大手の大企業同士で比較するからであって、もっと粗悪な労働力は大した仕事につけていないのが、発展途上諸外国の実情である事には変わりありません。

どれくらいの付加価値を日本にもたらすか、日本円の魅力がどれくらい保たれるか、どれくらいバルブが開くか(外国人労働者が入ってくるか)、これらが絡み合い決定されるのが、今後の日本の人手不足問題です。


これからの日本の医療は全体的にどうなる?

様々な方面から、国民皆保険へのアクセスは制限され、不自由で融通の効かないサービスとなるでしょう。

それが嫌なら高い金を支払う事になるでしょう。

理由は明確です、上記のようにサービスの受益者である高齢者が増え続け、それに対して外貨を獲得し利益を国民にもたらす人間の数が減るからです。

形は様々でしょう。

国民皆保険の負担率の値上げ、これは限定的だと思います。政治が変わらない限り。政治家は国が手動で大量の票田を持つ高齢者にとって不利になる施策を行いません。

国は国民皆保険が崩れるとすれば、政治のせいではなく、医師達のせい、という形にもっていきたいはずです。

そうすれば、票田は可能な範囲で保ちながら、邪魔な国民皆保険制度を壊せるのですから、一石二鳥です。

そのために必要なのは、まず1つは医師がサービスを提供しない事。診察や治療を拒否する事、諦める事です。

医師がサービスの提供を諦める時は、どんな時でしょうか?

まず1つは、インフレで周りの給料が上がっているのに、自分の給料が上がらない時です。診療報酬を段階的に削ればこれは達成できます。実質的に削らなくても、インフレ率に見合わない小幅な上昇で、ジリ貧にしていけば良いので、正直これはそんなに達成が難しくないと思いますね。

患者数が減っていないのに、医師の労働力が足りず、1人あたりの労働が過重労働になる事です。自己研鑽、万歳。

そして次に、物理的に病院の数が減る事です。遠い病院まで行くのは大変ですからね。

病院の数を減らすために必要なのは、本当にハイレベルで急性期な治療の報酬は下げずに、コモンで大した事はないが、クリニックでは対応できず総合病院である必要がある手術や治療の報酬を下げる事です。中途半端な病院はこれで潰せます。

これらの医療アクセス制限の形は全て予想です、当たっていない部分もあると思います。しかしそこはどうでも良いです。本質的には、医療のアクセスが制限され、まるでイギリスのような「骨折6ヶ月待ち、嫌なら自費でどうぞ」みたいな形に、少しずつなっていくと思います。

そういう意味では、眼科とかは生き残るでしょうね。白内障の手術、自費で片目20万円、両目30万円なら、高齢者も清掃のバイトとかして自分で稼いで、なんとかしようとするんじゃないでしょうか?

逆に骨折とかはものによっては100万円単位でかかりそうですから、人によっては諦めるでしょうけどね。


先に看護師が足りなくなる可能性はある

看護師さん、どんどん医療業界から撤退してます。

数字に出てくるのは数年後かもしれませんが、現場感覚的には本当に顕著です。

自由診療への移行も加味すると、保険診療を続ける看護師さんの数って、本当に激減していると思うんですよね。

看護師不足によるサービス提供不可によって、病院がつぶれていく。

それが病院の集約化を生み出すので、ある程度集約が進めば、サービス提供する人材という意味では揃うと思います。

ただまあ、上記の通りで値上げできない、できても限定的なので、結局病院経営はほぼ成り立たない。

結果、アクセスの制限された形骸化した国民皆保険になるとは、思いますね。

形骸化と人材不足による経営圧迫、それによる病院倒産と集約化。これらが同時進行的に進むでしょう。


日本の医師の取る選択肢は大きく2つ

以下の2つです。

  1. 海外も考慮し専門医を取得、医師としてのスペシャリティを磨く人的資本コース

  2. 早期にマネタイズ、金融資産コース

どちらかです。

1の場合、日本の外でも部分的に日本の医師免許は使えるらしいのですが、日本の専門医を持っていないと通じないケースもあるようです。

こちらのケースの場合は

  • 人的資本を高める→後からゆっくりマネタイズ

が戦略の基本なので、専門医を取得するのが目的というよりは、専門医程度は取得できるような磨き方をしないとダメかなと思います。

1のコースのメリットを多く享受できる人は、若い先生です。今まだ学生、みたいな方は考慮するのも良いと思います。

逆に、一昔前まではスタンダードだった「専門医を取得してからのんびり開業」みたいなキャリアは、少なくとも経済的なリターンにおいてはトータルで筋悪になったと思います。

考えてみて下さい、ちょっと前までは

専門医を取るのは当たり前、学位をどうする?

みたいな議論が、ありましたよね?今は誰もしていませんけど。そういう事です。

2の場合、こちらは昔は色々な手法がありました。

代表例が不動産です。

しかし今は、もはやどこまで値上がりするのかというキャピタル狙いの投資になっており、ちょっと素人が参加するにはゲームとしての難易度がかなり高い状態です。

いえ、正確に言えば今でも安く不動産を買うチャンスは全然あるのですが、素人が参加してもゲームに入れてくれません。業者間で飛び交う情報網の外に弾かれている間はそのチャンスは回ってこず、情報網の中に入るには「まず買う」必要があり、事実上は素人のゲーム参加が不可能に近い状態になっています。

そういった飛び道具が難しい昨今で、やはり医師としてなんとか早期にマネタイズする、という流れが来ているのは感じます。


勤務医か、開業医か

勤務医か開業医か、という話ですが、ここで軽く触れておきます。

よくXで

開業医は経営リスクを負っているから、勤務医以下になる事はない

と言われていますが、これについてはダウトだと思います。

ここから先は

4,949字

¥ 4,980

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?