舞台「桜文」

※舞台内容に触れてます。

花魁という馴染みのない時代の物語に果たしてついていけるのだろうかと観劇前に思っていたが、そんな考えは杞憂に終わった。

時代は違うが、欲求の末に起きる悲劇が見慣れないものではなかったからかもしれない。

欲に目が眩んで裏切る者、嫉妬で関係を破壊させようとする者、儲けのために写真を撮る者、他人の不幸を見て安心する者、良かれと思い放った言葉で相手を傷つける者。

新聞の編集者が小説家を売り出そうと、写真を撮り話を盛った記事を書き悪びれもせず、「注目を集めたければ、まずは写真。」と言った時のグロさ。
台詞と分かっていても殴りたくなる（）

桜雅の初見せの時に、桜雅を引き留めに入った少年が殴り殺され、その事実さえも金で消された場面。暗転して血だらけの少年が横たわっているのを見た時思わず眼を閉じたくなった。

霧野にしか話していなかった自分の過去を新聞の連載にされた時、霧野に裏切られたと思い笑いながら泣き叫んでいた桜雅の悲しみに心が握りつぶされそうになる。

気を病んだ桜雅の目。
一切の光もない真っ黒い目。
どこを見ているのか、何が見えているのか、考える隙さえ与えない。
目だけで絶望を表現する桜雅、久保さんにただただ衝撃を受けた。

身請けにされた桜雅の前にやっと現れた霧野、誤解が誤解を生み桜雅に刺された時、あぁ誰も幸せにならないんだなというのが重たすぎて…。

霧野を自分が刺したことに気づいた桜雅が自身の眼をかんざしで刺した時は思わず息を止めた。

最後に桜雅のこの物語が書かれてる巻物を読んだ女が「私幸せだわ〜」と叫びながら男に泣きつくシーンが1番残酷で現実的でグロかった。
人の不幸を見て安心する恐ろしさ。

欲望が絡みあった結果、誰も幸せにならないのをただただ見ていることしか出来ないのも現実的でグサグサと突き刺さる。

人間の醜さ恐ろしさがまざまざと目に浮かび、観るにも相当体力のいる作品。
演じられてる方々の体力精神力に感服。

全ての演者の迫真に迫る演技が目の前で見られて舞台の凄さを痛感しました。
とても素晴らしい舞台でした。

どうか無事に千穐楽まで駆け抜けられますように。

※久保ちゃんフランス語めちゃめちゃかっこよかった。
 白塗りしても普段とあまり変わらないのも可愛かった。
人間の頭一個分くらいある高下駄履きこなしてる久保様恐れ入りました。