⑩対極にある白と黒の物語
今日は「白」と「黒」、この対極的な色をテーマにして記事を書いてみたいと思います。この二つの色は、普段意識しなくても、どこかで必ず目にする存在です。うちの猫は黒白のツートンカラーで、家ではいつでも視界の中に入ってきます。
記事の最後に、ミーちゃんが登場しますので、ぜひ最後までご覧下さい。
「白と黒」この二つの色には、どんな物語があるのでしょう。
穢れのない純粋無垢な白
白は何色にも染まらない色とされています。「純粋さ」があり、穢れのない「無垢」な色です。白無垢やウエディングドレスは、「純潔」で「神聖さ」を象徴しています。
神を象徴する色でもあります。神社が「神々しい」のは、穢れのない聖地であるからこそ。神職に就いている方の衣装が白装束で統一されているのも納得しますね。
もうひとつ、白には「正義感」という意味もあります。これは後ほどお話ししますので、正義感という意味もあるということで、インプットしておいてください。
ネガティブなイメージで見られやすい黒
次は「黒」について書いてみます。みなさんは、黒にどのようなイメージを持っていますか?
この質問に対して、「闇」や「悪」といったネガティブなイメージを挙げる方が多いのではないでしょうか。
暗黒時代、黒幕、腹黒い、ブラックマンデーなどに良いイメージがありませんよね。ちなみにブラックフライデーは、お客さんが殺到して「黒字」になることから名付けられたそうです。(私も最近知りました)
他にもカラスを見ると「不吉」なことが起きるとか、「絶望」の黒とか。ネガティブイメージのオンパレード。これでは黒猫さんがかわいそうです。黒猫さん可愛いのに。
黒はネガティブな意味ばかりではありません。「高級感」や「重厚感」を感じさせ、「ダンディズム」な男性は黒が似合います。
白と黒の境界線にあるもの
先ほどインプットしてもらった「正義感の白」と「悪の象徴の黒」という見方で言えば、この二色は対極の関係にあります。「白黒はっきりしよう」はまさにこの関係性から来る言葉です。物事をはっきりさせたいという人間の本能的な欲求を反映していますが、同時に対立やストレスを生む原因にもなっています。
何かを「白か黒か」で決めつけようとすることで、その間にある中間(グレーゾーン)を見落としてしまいます。
実際には、白と黒は互いを引き立てる存在であり、一方だけでは完全な世界は成り立ちません。光の中の闇、闇の中の光。光のような存在として見られている人にも闇の部分はあり、闇の中から一筋の光を掴もうとする人もいます。
映画が描く光と闇の物語
白と黒、そしてその間に広がる曖昧さを象徴的に描いた映画があります。それは、クリストファー・ノーラン監督の「バットマン」三部作です。私の夫がこのシリーズを絶賛しています。ここからは夫の見立てを元に文章を書いてみます。
「バットマンビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイトライジング」の三部作は、光と闇、白と黒が対立するだけでなく、お互いを引き立て合いながら共存している姿が描かれています。
その一つがジョーカーというキャラクターです。ジョーカーは「完全な闇」の象徴で、混沌と破壊を体現する存在ですが、同時にバットマンという「光」を必要としています。ジョーカーが「君なしでは成り立たない」とバットマンに語る場面は、光と闇が対立しながらも、実は切り離せない関係にあることを示しています。
また、正義の象徴だったハーヴィー・デントが、悲劇によってトゥーフェイスという存在に変わる過程も印象的です。ハーヴィーは正義そのものだったはずなのに、闇に引きずり込まれることで、「人間の中には光と闇が共存している」という現実を突きつけます。この曖昧さこそが物語の深みを生み出しています。私たち自身の社会や人間関係にも当てはまる、光と闇の普遍的なテーマだと感じます。
さらに、「闇を単なる悪として排除するのではなく、受け入れた上で光を見いだすことの大切さ」です。バットマンが暗い牢獄から光の中へ這い上がるシーンがあり、闇の中の試練を乗り越えることで正義や希望がさらに強まることを象徴しています。
バットマン自身も、光と闇の両方を抱える象徴的な存在として描かれています。「完全な光」でも「完全な闇」でもなく、その間で葛藤しながら進んでいく存在として描かれています。これは、私たちが日常で直面する「正しさと弱さ」「希望と絶望」のバランスを象徴しています。
夫は「単なるアメコミヒーロー物では語れない魅力がある映画だ」と絶賛していました。
映画の中の光と闇の曖昧さは、今の社会における多様性や価値観の違いにも通じる部分があります。人間は矛盾を抱えているし、社会は白黒の単純な二極化では機能しない。生きるためには曖昧さを受け入れる勇気も必要というメッセージがこの三部作に込められています。
それができない苦しさが、今の世の中を象徴しているかもしれません。
その一つが「多様性」の議論です。
多様性の対立と押しつけのジレンマ
今、「多様性」が重要なテーマとして語られています。性別、文化、宗教、価値観…これらの違いを認め合い、共存する社会を目指すことが理想とされています。
しかし、多様性を掲げる風潮の中で、異なる価値観同士の新たな対立や、意見の押しつけが生まれています。
その一例が、「自分の正義や価値観を他人に押しつけてしまう」現象です。
多様性を尊重するはずが、「これが正しい」「これを受け入れないのは間違っている」といった主張が特にネットの世界で、相手を排除する形で表れています。この押しつけは、少数派から多数派に向けられることもあれば、逆の場合もあります。
SNSの中で、自分と異なる意見を「間違い」として攻撃する行動が目立ちます。多様性とは本来、互いの違いを認め合うことですが、現実には「自分の正義」を他人に認めさせようとする姿勢が、分断やストレスを生む原因になっています。
本来議論するべき多様性が違う方向に進んでしまっていると感じています。
本当の正しさとは?
「正義」とは、人それぞれに譲れない価値観の一部です。ある人にとっての正義が、別の人にとっては正義ではないとなることもあります。この正義の境界線が、人と人との考え方の違いを示しており、それを理解することが、多様性との向き合い方の鍵となります。
正義を語る上で重要なのは、「自分の正義を絶対視しないこと」です。正義を「自分にとっての正しさ」と捉えることで、他人の正義を否定するのではなく、対話の余地を持てる心の余裕が必要です。
多様性の議論では、異なる正義が衝突する場面が避けられません。その際に、相手を「間違っている」と断じるのではなく、「なぜそのように考えるの?」を知ろうとする姿勢があれば、共存の可能性がどんどん広がるのではないでしょうか。
しかし、現実にはこちらが理解を示しても、相手が寄り添ってくれないことがあります。この場合、どうすればよいのでしょう?
対立を超えるための新たな視点
対立や押しつけを乗り越えるためには、以下の視点を意識すると、共存と調和の持てる社会に変えることにつながります。
1、共存可能な範囲を見つける
すべての正義を受け入れることは難しいですが、互いに「譲れる部分」と「譲れない部分」を整理し、共存可能な範囲を見つけていく気持ちを持ちたいものです。
たとえば、仕事の場面ではお互いの価値観すべてを共有する必要はなく、共通のゴールに向けて協力していくことを考えるだけでも、社内の雰囲気は変わっていきます。
2、無理に相手を変えようとしない
自分の正義を押し通そうとするのではなく、相手が持つ正義を理解する努力をしてみたらどうでしょう。その上で、「違いがあるのは当然」と受け入れることで、無意味な衝突を避けられることもあります。受け流すことも一つの手です。
3、自分の心を守る境界線を引く
相手が寄り添ってくれない場合には、一定の距離を保つことも必要です。すべての人と完全に理解し合うのは現実的ではないため、自分の平穏を保つために「この部分は深く立ち入らない」と決めることも大切です。これは「赤」の記事でも書いたことで、立ち入るよりも超然とした態度でいることでもあります。
これらの方法を通じて、白黒つけてやると息まくのではなく、「違いを認めつつ共存する」道を模索することができると、世の中は変わっていくのではないでしょうか。
新しい自分色を見つけたい
白でも黒でもない、新しい自分を飾る色を見つけることができると、心はとても楽になるのだと思います。
その色は白と黒を混ぜたグレーなのかもしれません。もっと違う、自分らしい鮮やかな色なのかもしれません。
人に押しつけられたものでない「新しい自分色」は、あなた自身が選び、あなたのために作っていく色です。自由に選ぶことができる自分色が、あなたのこれからを明るく彩ってくれるはずです。
その色が、人と自分との違いを理解し、受け入れ、共存するきっかけにもなります。自分が作り出した新しい自分色と、相手が持つ色が混ざった時の色合いを想像してみるのも楽しいですね。
まとめ:調和の時代へ
多様性と対立、正義と押しつけのジレンマ。現代社会は息苦しくなっていると言われています。でもそんな時代はもう終わりにしましょう。白と黒のように対極にあるものが共存するからこそ、私たちの世界は美しいのです。
好きな色、気になる色、受け入れてみたい色。濃い色もあれば淡い色だってある。色彩は豊かです。そこから新しい自分色は必ず見つかります。自分を大切にしながらも、他人を受け入れる柔軟な心が必ず宿ります。
私は、この世界は調和のためにできたものだと思っています。どんな複雑な時代においても、人は調和する生き物なんです。
価値観は人それぞれです。そこはお互いに尊重しながら、共存できる世界を実現させましょう。
カラーセラピーの世界では、白と黒は、どちらも全ての色が含まれているとされています。実際に全ての色の光を混ぜると白になり、全ての絵の具を混ぜると黒になります。白にも黒にも、全ての可能性があり、今を変える力があるのです。
あなたの色は、どんな色ですか?どんな自分色を見つけますか?