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映画「スターウオーズ」と黒澤明の「隠し砦の三悪人」の接点

「隠し砦の三悪人」って、どんな映画?

昭和時代に<はまった映画>を選ぶと(これだけではないが)この二作が<地区代表選手>となる。地区はエンタメ部門。作品の質としては「隠し砦」がトップ、8mm映画との出会いを作ってくれたものとして「Star Wars」(※)。8mm映画との出会いはこちらで書いた。

当初、この二作品は私の中で繋がりがなかった。

つながったのが「Star Wars」を見てからずっと後の事。最初に見たのが「Star Wars」、後で見たのが 「隠し砦」 。結果、私は 「隠し砦」 のすごさに気付いたので、ここでは「隠し砦の三悪人」 (※)について書く。

制作:1958年
分野:時代劇
撮影:白黒、ワイド(TohoScope)
時間:2時間19分

物語をひとことで言うと
戦国時代。敵の手から逃れた姫を旗印に、お家再興のため活躍する武士と農民の活躍を描く。

戦国時代のとある場所。3つの武家(山名、秋月、早川)が覇権を競っている。山名家に圧迫され国を追われた秋月家は、秘匿した黄金(軍用金)と姫君でお家再興を図ろうとしていた。

一方、雇われ侍となって戦に加わった欲深い二人の農民が、落ち武者となって早川領を目指し逃げていく。途中、二人は拾った木片に金貨が仕込まれているのを発見。秋月家の軍用金が落ちているではないかと疑いあちこち探す。そこに山賊らしき目つきが怖い謎の男が出現。二人は無視しようとするが男はつきまとう。

謎の男は二人を仲間にしようと考えたのか、山深い隠れ家に無理矢理連れて行く。山賊も動きがとりにくく仲間が必要らしい。二人の農民は謎の男に脅かされ荷物運搬役となり、不思議な旅に導かれていく。

ベストワンのエンタメ作品

私にとってはベストワンの日本エンタメ作品。これほど入れ込んで見た作品は無い位で、映画館でも複数回見ている。今は無き「銀座並木座」での鑑賞後は、記憶をもとにシナリオ起こしもした。

映画館を出て家に帰り部屋に籠もって一気に採録したノートが今も残っている。全場面を採録、物語の展開を振り返っている。今読み返して見ると抜けもあり判別不能な箇所もあるが。

当時と、今思い返しての印象は全く変わっていない。採録ノートのおかげで記憶が途切れないせいかもしれない。

1977年、京橋のフィルムセンターで開催された黒澤明特集

印象的なシーン

落城する城から群衆がなだれ落ちてくるモブシーン。主演の三船敏郎(※)が敵の大将を演じる藤田進(※)と槍で対決する場面は、音響効果による緊張感もすごい。

農民と山賊が出会うちょっとユーモアあふれる場面。三船敏郎が敵の武将を馬で追いかける場面。火祭りのミュージカルのような演出。秋月の姫が妹を想う場面。痛快な裏切りごめん!の場面。

白黒長編映画だが白黒に思えず飽きる場面は全く無い。見所満載のすごい作品。

リメーク作について

後年(といっても、ごく最近)リメークされた事に衝撃を受けた。オリジナルのレベルが高すぎ、リメークのハードルは極めて高い。ずっと誰も挑戦していないし、今後もきっと無いだろうと思っていた。

だからリメークが出たと知って愕然。幸いなことに黒澤明版とは全く違う内容らしい。それはそうだろうと思い安心した。後で触れるが、ジョージ・ルーカス(※)だからこそオリジナルを活かして全く別物に仕上げられたのだと思う。

下はStarWarsオフィシャルサイトから、1作目のトレーラー。

StarWarsとの類似性

戦で手柄を立て褒賞を得ようと欲をかいた農民二人が負け戦側になって逃れる場面、同じ村出身の二人(千明実(※)と藤原釜足(※))が互いにののしりながら歩いて行く場面は、後にジョージ・ルーカスによって制作された「Star Wars」のC3PO、R2D2のモデルになったと言われている。改めて見ると千明実がC3POに見えてくる。

往年の映画ファンなら周知の通り、ジョージ・ルーカスは黒澤明の大ファンというか(黒澤明の撮影を見学した際の彼の反応の様子からも)信仰者。

「Star Wars」のプリンセス・レイアを巡る物語は、「隠し砦の三悪人」の影響だけではないとジョージ・ルーカスがインタビューで語っている。一方、第一作は「隠し砦の三悪人」から頂いたシーンがあると黒澤明に直接告白しており、その経緯を黒澤明本人が語っている。

実際に二作品を比較すると物語の骨格に加え、多くのモチーフを得ているように思える。農民二人が褒賞をもらうシーンは「Star Wars」1作目のラストシーンをイメージさせる。

ジョージ・ルーカスが黒澤明から受けた影響については、アメリカ大使館の情報からも確認できる。
https://amview.japan.usembassy.gov/japanese-directors-lasting-influence-on-american-cinema/

主演女優の比較

「隠し砦の三悪人」の姫の役には上原美佐(※)という素人の女性を抜擢している。上原美佐はその後1作だけ出演し引退してしまった。この作品の姫としてだけ存在したような、他の作品に現れない希少な女優。同姓同名の若い女優がいるようだが、多分関係はないと思う。

一方の 「Star Wars」の姫を演じたのは キャリー・フィッシャー(※)で、彼女は映画界のプリンセスだ。母がデビー・レイノルズ(※)という女優で往年のミュージカルスター、「雨に歌えば」(※)にはジーン・ケリー(※)と出演している。

剣術に見る類似性

「Star Wars」 の剣術は黒澤明などの日本の作品から影響を受けていると思う。ジュダイの騎士は日本刀のようにライトセーバーを両手で握って使いこなす。近代の西洋剣術といえば代表的にはサーベル、身近ではフェンシングになるだろうが、日本刀とは持ち方が全く違う

ライトセーバー は日本式の剣術と同じような持ち方になっていて正面から敵と対峙する。 「Star Wars」 後期作品では長刀のような剣も登場している。下記オフィシャルサイトのキャラクターがそれなのだが、私には 「隠し砦」 で藤田進が演じた敵将を模したような気がしてならない。

https://www.starwars.com/databank/darth-maul/


この作品に出てくる「裏切り御免!」は、昔ちょっと憧れた。会社員にも通じる生き方だと思う。どうせなら、まともな上に仕えたい。

キャスト、監督、スタッフ、制作会社など

キャスト
出演:三船敏郎、藤田進、千明実、藤原釜足、上原美佐

監督、スタッフ
監督:黒澤明
脚本:菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明
音楽:佐藤勝

制作会社、配給会社
制作:東宝

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