私の覇気つよくね?
蝉が私の真横で死んだ。
ブーンと音は聞こえていた。確実にそれは羽音だった。
うわ、けっこうな大きさの虫飛んできてるぞと私が関知した瞬間、私の真横までとんできた蝉が急にぼとっと落ちて死んだ。
さっきまで激しい羽音を立てていた蝉が私の覇気にでもやられたんかという具合にぼとっと落ちて「こりゃまいった」というようにあおむけになって死んでいる。
あまりのことに私は事態をつかめずまた自分で自分が怖くなり足早に家に帰った。あんまりにも驚いたので「えっしんだ!?」「えっ!?」「こわっ」と声に出ていた。声に出しながら帰った。
夜道は怖いこともたくさんあるが楽しいこともいろいろある、
飲み屋街を歩いているとお兄さんがご機嫌に歌っている。
「むぎわらのぉーぼぉしのきーみがゆれたまりーごーるどににーてるーふふふんふふんふんふんふんふんー雨が降り止むまではかえーれなーいー」
ちょっと待ってほしい。前半は確実にマリーゴールドだった。鼻歌もマリーゴールドのメロディだったどうして急にLemonがでてきてしまったのか?
マリーゴールドだったはずなのにどうして急にそれが実をつけ果実になってしまったのか?彼の脳内で何が起こったのか?一瞬で起こった植物の成長に私の脳が追いつけず笑いをこらえるのに苦労した。
笑いを堪えぐっと飲みこんだころにはお兄さんは道路の向こう側へ消えていた。一体次には何をうたっているんだろう。ほんのちょっぴり、気になる。ほんの、ちょっぴりね。
今日は帰り道に見かけたワンピースに心奪われてしまい購入の検討をしている。今月は髪を切りに行ってしまったし我慢すべきなのだが…。
今日一日悩んで明日の帰り、また見に行くことにする。
そしてきっと先延ばしで悩むんだ。ならばもう、買ってしまえばいいのにね。
おわり。
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