ショートストーリー「キャラメルの箱の味」
小さな子供と老人が公園のベンチに座っていた。子供は、帽子を被っている。帽子には青葉保育園とある。
恐らく祖母と孫の関係だろう。この二人を見たのは今日で五日目である。二人は、いつもキャラメルを一粒ずつ食べているようだった。
僕は、彼らを視界の片隅において、コーヒーをゆっくりと飲む。
今日も変わらず老人が、キャラメルを箱から取り出す。それを子供は小さな手で受け取ると、すぐに口に入れた。
その時の嬉しそうな顔を見ると、少し気持ちが穏やかになるのだ。僕はコーヒーを飲みきると、缶を捨て公園から立ち去った。
*
私は孫の手を握りながら、夕日の中をゆっくりと歩いていた。口の中にはまだキャラメルの味がほんのりと残っている。
「今日はママ、何時に帰ってくるの?」
隣で孫がこちらを覗きながら聞いてくる。
「真ちゃんが賢く寝たら、帰ってくるかな。でも明日からは、早く帰ってこられると思うよ」
「今日も遅いのか、、でもお仕事だから仕方ないね」
この子の両親は共働きである。この子にとっては寂しい事だろう。少し可哀想に思うときもある。だからこそ自分が出来ることは、してあげようと思っていた。
孫を寝かして、母親が帰ってきてから、自分の家に帰った。自分の家に着くと、いつものようにキャラメルの箱を、自分の部屋の引き出しに入れた。これでまた一つ、孫との思い出が貯まった。しかしその時に一瞬だが、目の前が真っ暗になった。
*
俺は睡魔に耐えていた。聴こえてくるのは、意味の分からない言葉ばかりだ。祖母が亡くなったのは、昨日のことである。一週間前に倒れてからは一瞬だった。まるで、スーッと魂が抜けていったかのようだった。
俺はもしテロリストが入ってきたら、どうするかをシュミレーションしていた。
祖母のことが嫌いでは無かった。小さい頃に幼稚園の迎えに来てもらっていたのは、今でも覚えている。本を読んでもらったこともあるし、一緒にトランプをしたこともある。
しかし小学校に入り、中学校に入り、だんだんと会わないようになっていった。塾に行くようになってからは、殆んど会っていなかった。避けていたわけではないが、会いに行こうとも思わなかった。
お葬式が終わって、家に着くと着ていた学ランをすぐに脱いだ。それから、トイレに走った。実はずっと我慢していた。
「今からおばあちゃんの家に片付けに行くから準備して~」
トイレの外で母親が大きな声を出している。父親だろうか、慌ただしく走る音も聞こえる。
トイレから出ると、母親はもう準備を済ましていた。どうやら喪服のまま行くつもりらしい。
おばあちゃんの部屋のふすまを開けた瞬間に、懐かしい畳の匂いがした。
部屋に踏み入れた瞬間に机が目に入った。その時、俺はふとキャラメル箱の事を思い出した。保育園の頃に一緒に食べたキャラメルの箱を、おばあちゃんが集めていたのだ。
机の引き出しを開いてみると、そこには沢山のキャラメル箱があった。おばあちゃんとの思い出が貯まっていた。
俺は、箱を一つ手に取ってみた。すると中に何かが入っているのが分かった。
俺は箱をゆっくりとスライドさせて開けた。中には折り畳まれた紙と、キャラメルが二粒入っていた。
紙を広げてみるとそれは手紙だった。
真ちゃんへ 元気にしていますか?おばあちゃんです。真ちゃんは一緒にキャラメルを食べたのを覚えていますか?おばあちゃんは、真ちゃんとキャラメルを食べるのが大好きでした。これからも沢山大変な事や、辛いことがあるかもしれません。それでも忘れないでね。おばあちゃんはずっと真ちゃんを応援していることを。頑張れ、真ちゃん。 真ちゃんのおばあちゃんより
手紙を読むと涙があふれでた。俺はキャラメルを一粒口に入れた。
懐かしい、あの味が口の中に広がった。
おわり
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こんにちは。男子中学生の3maru14です。
どうだったでしょうか?まだまだ未熟なところは沢山あると思います。
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