Black Bird
世の中には、カラスを専門に研究をしている人がいるということを知る。
そりゃなにかにつけ研究しているひとがいるであろうが、毎日のように目に入ってきて、あまりいい噂を聞かない鳥のことを研究しているとは興味深く、話を聞いた。その人が出している本もさっそく読んでみたが、「へー」と感心させられることしきりであった。
ちまたでは「いじわるされた人のことは覚えていてやり返してくる」だの「あの大きなくちばしでつつかれる」だの言うが、実際のところはあえてカラスから人に近づいてくることはないし、くちばしを使って攻撃してくることはないらしい。なぜならば、もし反撃されてくちばしを相手にとられてしまったら、カラス自身にとっても致命的であるからだという。攻撃されることがあったとしても、足でけられるくらいらしい。まあよく考えれば、人間の方が圧倒的に大きく力ももっており、それに対して彼らは飛ぶという、人間がどうにもできない能力をもっているのだから、空に逃げるが勝ちである。
そして彼らは、われわれ人間の行動をよく見ているとのこと。
改めそこらにいるカラスをじっくり見てみると確かに、彼らは人の目をすごく気にしているのがわかる。
地面におりてなにかをついばんでいるカラスを観察していると、「そちらのことは気にしていませんよ」のフリをして、実はすごくこちらを見ている。
こちらが歩き出せばカラスもちょこちょこと歩き、立ち止まると向こうも止まる。三歩進むと、カラスも3ちょこちょこちょこ、一歩動くと、カラスも1ちょこと歩く。
超意識されている。
だけれども、カラスは首を左右にふりふり「見てませんよー、気にしていませんよー」というフリをする。(ように見える)
おもしろいのでそんなことを繰り返してたら、あきれられたのか、どこかに飛んで行ってしまった。
もしかしたら、うちの界隈のカラスたちに「あいつはじろじろ見てくる」と変質者扱いされているかもしれない。
今働いているオフィスはそれなりに高層階にあるが、その窓の外枠にカラスがとまっていることがある。こちらのとの間にガラスという壁があるとわかっているのか、こちらが注意を向けても逃げはしない。
そして今度は向こうがこちらを見張っている。
地理的に我が家の近所のカラスと同じ個体ではないはずだが、カラスネットワークを通じて、やり返されている気がしてならない。
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