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29歳ひとり暮らしの小説家の生活
思うに、生活に充分安定した、実りある骨組みさえあれば、どんなに激しい嵐がきても、その破壊的な影響に耐えることができるのではないだろうか。
年が明け、ぼんやりしているうちに2週間が経った。去年は、松本移住、イタリア旅行、ラオス旅行、文庫本刊行、京都新聞でのエッセイ連載開始など、公私ともにいろいろあった。2025年は30歳の節目の年でもあるので、生活の進捗とこれからのなんとなくの展望の希望を、備忘で残しておこうと思う。
おなじような生活をしている方たちの参考になるかもしれないし、ならないかもしれないけれど、暮らしについての読みものとして楽しんでもらえればうれしい。
【衣】
違和感のある服を捨てる。そして、着ていて幸せな気持ちになる服を着る。それを、自分でやる。自分の魂を、正しく楽しく、ただ外側に表すのだ。
臆さずに。
〈服の管理〉
所持している服飾品はすべてExcelとJUSCLOというアプリで一覧化している。ジュエリーや靴、バッグも含め現在の総数は58アイテムらしい。2024年は必要性の高い仕事着を多く買っていたので、今年は美しい服をほんの少しだけ手に入れたい。ファストファッションで済ませるのをやめて、タイムレスなアイテムを集めながら不要なものを削ぎ落としていきたいと思う。
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〈服を買うときのポイント〉
・アイロン不要か
・洗濯可能か
・気兼ねなく旅行にもっていけるか
・着心地が良いか
・見ていてうれしい気持ちになるか
去年は上記に加え、色を「黒」「白」「グレー」「青」に限定していたけれど、今年はなんとなく淡色の服も買ってみたい。
〈スキンケア・ヘアケア〉
服飾品とおなじく、なるべくシンプルにしたいと思って試行錯誤している。服もコスメもスキンケアも、とにかく選択肢が膨大でしんどい。SNSを見ていると目がちかちかする。もうこれ以上消費したくないという気持ちが、どこかにずっとある。過剰なもの、多すぎるものから身を引きたいという欲求に沿い、肌につける成分はできるだけ少なく簡素に、「やらない」スキンケア・ヘアケアをめざしたい。
肌負担の大きいクレンジングを使わずに済むよう、今後はミネラルコスメを集めていきたい。自分に合ったもの、必要なものを知りたいと思い、来月のETVOSのメイクレッスンに申し込んでみた。
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〈今年ほしいもの〉
これ以上消費したくない、という気持ちと、とはいえ生活の要素のアップグレードを楽しく志していきたい、という気持ちの両方がある。毎日使うか・長く使えるか・めざしている生活にふさわしいものか、という基準で厳選し、しっかり検討した上で購入していきたい。
パナソニック ナノケアドライヤー:今はサロニアのものを使っているけれど、毎日使用するものなのでアップグレードしたい。公式でサブスクもあるので検討中。
ALEXANDRE DE PARIS ヘアクリップ:仕事中まとめ髪にすることが多いので、美しいものがひとつあればテンションがあがりそう。
つげ櫛:今はリファのヘアブラシを使用しているが、この先何年も使うことを考えると耐久性に不安があるため、質の良いものに買い替えたい。
NIKE エアリフト:夏はoofosのリカバリーサンダルを普段使いし、海外旅行でも履いていたが、寺院や美術館に訪れることを考えるとエアリフトの方が便利だと思った。
MITTANの服:何年も纏うことを前提に服を作り、修繕や自社製品の買い取りも行っているとのこと。理念をあらわした文章も美しい。
PLEATS PLEASE ベーシックワンピース:気軽に洗濯できて、海外旅行に持っていける夏用のワンピースがほしい。
【食】
ふだんのごはんは、いつもの好きなおかずのローテーションでいいと思うのです。新鮮な材料を塩と油だけのシンプルな味つけで料理する。
〈献立の固定化〉
昔から料理が苦手だった。自分のつくったものを心底からおいしいと思うことはとても少ない。空腹感は執筆の深刻な妨害だという認識だったが、生理的な欲求を邪険に扱うのはあまり健全ではないなと思い、松本で一人暮らしをはじめるにあたってシステム化することにした。
①「やりたくないこと」「食べたくないもの」の排除
まず苦手な要素を炙り出した。炊飯器でまとめてごはんを炊いたあと、1食分にまとめて冷凍という手順がとにかく苦痛で、解凍したごはんもあまり好きではなかったので、炊飯器を手放して毎日片手鍋で炊飯することにした。前夜に浸水させておく手間はかかるが、炊飯器より格段に時短になり、とてもおいしい。
冷凍食品の食感が好きではなく、毎回つくりたての料理を食べたいと思い、電子レンジも買わなかった。あればやっぱり便利なのだろうけれど、今のところは事足りている。買い物用のリストも作成し、「ここに載っているもの以外は買わない」と決めることで手間も減った。
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②メンタル面
なぜ料理をしなければならないのか。料理の楽しさをどこに見出せばよいのか。調理の作業を苦痛に感じる理由は何なのか。そのような疑問や苦手意識を軽減するために『一汁一菜でよいという提案』『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』など、自炊に関する本を探して読んだ。
自分で稼いだお金で自分を養っている。栄養のあるものを食べている。凝ったものをつくらなくても、それだけでもう充分なのだと得心がいき、すこし肩の荷が下りた。
〈好きな器を使うこと〉
すこしでもテンションを上げるため、皿と箸、グラスを好きなもので揃えた。それだけでも台所に向かう勇気が出てくる。信楽焼の茶碗、高円寺のcotogotoで買った皿、松本の民芸店「陶片木」で購入した黒檀の箸などを主に使用している。
逆に、調理器具はこだわりがない。数年前に鉄のフライパンを買ってみたものの、うまく使いこなせなかったので、今は安くて手軽なものを使っている。去年買ってよかったのは、ニトリの使い捨てスポンジ。洗う手間なく廃棄できるのでとても良い。
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〈食事と創作〉
食生活を整えてゆくうち、書いている小説のなかの登場人物もまともな食事を摂り始めるようになった(=そのような描写ができるようになった)ことに、編集者の方に指摘して頂いて気づいた。たしかに、高校生のときに書いたデビュー作では人物になにを食べさせればよいのかわからず、お菓子ばかり食べている女の子を登場させたり、そもそも食事のシーンを書くこと自体避けていた。
実生活と小説の世界はほぼ関係がなく、だからこそ創作が好きなのだとずっと思っていたけれど、やはり切り離せない部分もあるのだ。ものをつくるひとは誰でも、食べたもののエネルギーを使って創作している。
【住】
もはや束縛もなく、気取りもなく、どんな種類の見せかけもなく、ただ単に、よいと思うものでありたいと念じ、それ以外のことは気にかけない生活だけがある自己のうちに。
〈掃除項目の固定化〉
料理と同じく、掃除も苦手だ。なにから手をつけていいかわからずぼんやりしているうちに、部屋はあっという間に汚れてゆく。生きているだけで汚れがたまることが、昔はほんとうに嫌だった。髪は抜け落ち、服から剥がれた繊維は埃になる。具体的な手順を考えるよりも、まず心のもちようから変えた方がいいと判断し、『家事か地獄か』『部屋とこころのシンプルな掃除』などの家事の本、さらに『ウォールデン 森の生活』や禅に関する本など、生き方を扱う本を片っ端から読んでいった。
清潔に生きることへのモチベーションが高まったところで、なるだけ少ないアイテムで、効率的に家じゅうを掃除できる手順と頻度を考えた。床の掃除はクイックルワイパーで、浴槽は入浴後にバスタブクレンジングで毎日かんたんに掃除し、日曜日に水回りや洗濯槽、排水口をまとめてきれいにして、シーツなどの大物も洗濯する。2ヶ月に1回は、エアコンや空気清浄機を掃除する。ルーティンにしてリストにすると、やるべきことが可視化されて取り組みやすくなった。
〈家計は封筒で管理〉
お金を使うことに、昔からうっすらと罪悪感があった。今ここで、こんなことに使っても良いのか。月の終わりに予算が足りなくなってしまわないか。
自分の好きなことに、適切にお金を使いたい。そう思っていたときに林總さんの『正しい家計管理』『不安な時代の家計管理』を読み、月の予算項目を封筒に仕分けてみることにした。
基本的な収支はExcelで管理し、月末に次の月に使うお金を銀行からおろす。その際、生活費とは別に、月の自由費の一部を「喫茶店費」「映画費」「銭湯費」など項目別に分けて封筒を作成し、決まった額のお金を入れる。外出する際は封筒を持っていき、中身のお金はすべてその月のうちに使い切って良いこととする。こうすることで、気兼ねなくお金を使えるようになった。それでも余ったお金は、月末に全て寄付している。
今年はなるべくクレジットカードを使う機会も減らしていきたい。
【まとめ】
インスタを見てくださった方から「丁寧に暮らしているよね」という旨のお言葉を頂くたびに、そんなに良いものでもないのだけれどと思う。内側から見た自分の生活は、全然キラキラしていない。ただすこやかに生きたい一心で、必死にいろんなことをいろんな方法で試しているだけだ。
精神的な不調の波や、生きているということの根本的なしんどさはどうしようもない。ならせめて、どうにかできることだけでもどうにかしたい。ルールはつくったが、ルールを守ることが目的ではない。ゆるやかに自分の生活を縛りながら、ときに弛ませ、ときに引き締め、生活をかたちづくることをたのしんでいきたい。
最後に、今年やってみたいことのリストを載せる。
海外旅行:去年は一人でイタリア・タイ・ラオスに旅行した。今年は台湾とネパールに行きたい。
早寝早起き:理想は0:00就寝8:30起床だが、なかなか守れない。SNSを見る時間を、すこしでも減らしたい。
ピラティスのパーソナルトレーニングを受ける:日頃パソコンにばかり向かっているせいかとにかく姿勢が悪い。自宅で軽い筋トレやストレッチはしているものの、一度プロに見てもらって体の正しい動かし方を知り、楽しく運動する習慣をつけたい。
次に住む街を探す:松本も大好きだけど、動けるうちにいろんな町を体験したいとも思う。次に引っ越すなら、海のそばの温暖な気候の町がいい。
YouTubeのチャンネル更新:おそろしく長いあいだ放置してしまっているが、久々にログインしてみたらありがたいことになぜか登録者数が増えていた。vlogを近々撮りたい。
Youtube:https://www.youtube.com/@hinakurasarie
Instagram:https://www.instagram.com/hinakura__/