【短編小説】スティール。
生まれた瞬間から名前が自動的に決まり、意味を表す世界。
スティールちゃんは、「ス」が頭、「テ」が上胴体、「ィ」が下胴体、「ー」が両腕、ル」が両足の女の子で、祖母の遺伝から、頬に「 ゛」が付いているのが特徴でした。
スティールとしてただ生まれたその子の意味は「盗む」です。
そのため、周囲からは忌み嫌われた女の子でした。
確かに、その文字の意味合いを強く能力として持ち、彼女はモノや人を盗むのが得意ではありました。
でもそれは、誰かから頼まれた時にしか使っていなかったのです。彼女は根っからの「良い子」でした。
そんな彼女はある日、ふと思いました。
『そうだ!私と違う文字の子をくっつけて、違う意味のグループになれば良いんだわ!』
そう考えた彼女は、スティールの力を使って、ある男の子を呼び出しました。
「なに?」と「余談機」君は鬱陶しそうにこちらを見てきます。彼は、人と話すのが大嫌いです。
「私とグループになって、素敵な意味を持つ人たちにならない!?」
そう言った途端、余談機くんの表情が、キラキラと輝きました。
そう、かれも、余談機として、余談ばかり話す機械として、一度話し始めれば止まらない要らない機械の男の子として、周りから必要とされていなかったのです。
だからこそ、人と話すのがトラウマになって、人嫌いになってしまったのです。
「やる!やるやる!」
そうして、二つ返事で余談機君は承諾しました。
「今ここには、『スティール』と『余談機』がいるけど、あとはどうするの?言葉は考えてるの?」
余談機君は、不安げにスティールを見つめました。
スティールには、考えがありましたが、彼女が言うことを聞いてくれるかは正直不安でした。
「うん、もう一人考えてはいるんだけど…正直不安」
そう言いながら、二人は重たげな様子「隠然」ちゃんを呼び出しました。
「ね、ねぇ、隠然ちゃん!私達のグループに入ってくれないかな!?悪いようにはしないからさっ!」
しどろもどろに、でも、彼女なりに一生懸命言葉を紡ぎます。
でも、
「私、貴方たちの奴隷になんてならないわ」
と、バッサリ断られてしまいました。
あっと、言い方が悪かったのだと気付き、『そんなつもりはなかった』、という言葉を続けようとした時、
「もう用が済んだなら、バイバイ」
と、隠然ちゃんは消えてしまいました。
そういうわけで、2人は作戦を練らなければならなくなりました…が、スティールが考えてる間も余談機君の話は止まらず、話を止める気配もありません。
彼との付き合いが長い彼女も、長い時間彼と一緒にいると疲れが出てきます。
はぁ、とため息が漏れた瞬間。
「僕たちが仲間に入れようとするから駄目なのかなぁ…」
と言う言葉が耳をよぎります。
はっと、頭がクリアになる感覚にスティールは陥りました。
そうだ、そう言えば、上から目線で隠然ちゃんに話しかけてしまっていた…緊張して怖がらずに正直に話せば分かってくれるんじゃないか。
そう、思った。
「有難う、余談機くん」
頭に?を浮かべる彼をよそに、もう一度スティールで隠然ちゃんを呼びだします。
「……」
あからさまに嫌そうな顔をし、すぐに消えようとした隠然ちゃんに向かってスティールは叫びます。
「待って!隠然ちゃん!私、さっきは言い方を間違ってた!私達の仲間になって欲しいんじゃなくて、私が隠然ちゃんのお友達になりたかったの!余談機くんも一緒に、楽しいグループになれれば、きっと世界が変わるんじゃないかと思ったの!だから、さっきは…ごめん。」
彼女が、消えようとした身体の動きを止めました。
「改めて、私とお友達になって下さい!」
しばらくの沈黙の後。
「しょうがないなぁ…」
苦笑と少しの嬉しさを滲ませた声が降ってきました。
そしてその時、ためらいながら言いつつ、隠然さんの笑顔が垣間見られたような気もしたのです。
ここで、『みんなー、すてきでいるんだよ』会が開かれたのでした。
「そうだ!そうだよ!私たちで作ろうとするからいけないんだよ!」
「????」
余談機くんは、良くわかってない
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