歌物語 吸血喫茶
はじめまして! 或いは、こんにちは。赤い電動車椅子の詩人ミカヅキカゲリです。
19世紀、英国――……。
弁護士のティモシー・ブラウンが或る夜、家に帰ると、妻と息子が惨殺されていた。血塗れの女が艶然と嗤う。
赤き月家族はみんな殺されて血塗れの女が剣を翳す
女はジェニーと名乗った。吸血鬼だと云う。ティミーの頸(くび)に白い腕を巻きつけて、「お前、好みだ。わたしのものになれ」と云った。そして、ティミーの血を吸った。
吸血鬼に堕ちしこの身は旅に出る我を愛する敵と供に
ティミーはジェニーに付き従って旅に出た。ジェニーからはげしく愛されて、ティミーもまたジェニーを愛した。が、同時に敵でもある現実はティミーを苛んだ。
ついに、ティミーはジェニーから逃げ出し、ひと
り旅をつづけるのだった。
旅をする我に降り積む二百年異形の村へと流れつきたり
或る異形の村に憩うティミーは久しぶりに身を落ちつけて、村に留まった。
ティミーが村に到着した日にうまれた娘ルナが13になった春日のこと。
全体主義国家は村をレジスタンス拠点と見なし攻め入ってきた
逃げまどう異形たち。ティミーは血塗れで虫の息のルナを発見する。
混血で力を持たぬ少女なら我が血を与え力与える
ティミーとルナはふたりの吸血鬼として旅をするのだった。
この血ゆえ昼生きられぬ我らなら夜間喫茶を各地で営む
どのくらいの月日が流れただろう。ティミーたちは、あの異形の村に立ち寄った。
異形郷今はすっかり別の街住人たちも異形ではなく
ティミーたちは、散り散りの異形たちに呼びかける。ふたたび集わんと。
全体主義国家は見なす一族の集いを勢力再集結と
ふたたび集った異形たちは、異形ゆえのちからで街を護った。
しかし、もはや、居場所はないのであった。
異形らは流離い続け永久になき安息の地と眠りを夢みて
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