子供って、とんでもないところからパワーをくれる
昨日は息子の元クラスメイト、H君に会いに行って来た。
H君は息子が高校を卒業するまでのクラスメイトで、息子がカナダに行ってしまった後も時々二人でご飯を食べに行ったりしている。(もちろん息子はいない、笑)
血が繋がっていない息子の様な、友達の様な、ちょっと変わった関係である。
そんなH君は大変成績の良い子である。高校卒業時の試験(センター試験の様なもの)も良い成績を修めたので、そのままスムーズに進学できるはずだった。
だが、一度は進学をOKしたご両親(とお兄さんお姉さん)が、後になって「やっぱり(金銭的に)無理・・。」と言い出したため、やむなく次の年はギャップイヤーを取る事にした。(直前だった為、別の大学に願書を出す時間が無かったらしい。)
元々は海外の有名大学を目指していたのに、急遽、国内に目を向ける必要に迫られたため、色々考えた結果、国内の医学部に進むことにした。
インドで最も一般的なカリキュラムはCBSEと言うのだが、息子とH君が通っていた学校は別のカリキュラム(ケンブリッジ)だった。そのため、インド国内の医学部への進学の為に必要な基礎ができていなかったH君は遅れた分を取り戻す必要があったため、浪人を決心した。
すぐ次の年の試験の為に勉強していたが、コロナのためその年の試験は中止になってしまい、自動的に浪人の延長が決定した。
それからさらに2年浪人生活を続けた。
同級生が進学して大学生活をエンジョイしている間、進学できていないプレッシャーとの闘い、彼女(達)とのすれ違いと別れ、家族間の争い、そしてお父さんが亡くなってしまう、と言う数々の悲劇を乗り越えて、今回、ついに進学する事になったと連絡が来た。
高校を卒業して3年が経っていた。
「3Kさん。いいニュースと悪いニュースがあるんだ。」
H君はそう言って、進学が決まった事を連絡してきた。
「悪いニュース」と言うのは、別の州の大学に行く事になった事だったが、私には全然悪いニュースには思えなかった。
第一志望の公立の大学には行けず(学費が全然違う)、別の州の私立大学に進学が決まったので、9月から引っ越しして寮生活になると言う。
「医学部で忙しいから、5、6年ぐらいほとんどこっちに戻れないんだ。」
インド人は家族を大事にするので、離れてしまうのを寂しいと思っているのだろう。しかし、心の中では少し家族と離れるのがいいのではないか、と思っている。
H君は4人兄弟の末っ子で、上にお姉さん、お兄さん、2番目のお姉さんがいる。お兄さんお姉さん達は全員結婚していて、お兄さんと奥さん、そして昨年生まれた甥っ子が、H君とお母さんと一緒に住んでいる。
末っ子で男の子なので、家族に言われれば数々の用事をこなさなければならないし、お父さんが亡くなった今はH君の責任は前より重くなっている。
H君はできる限り家族の為に貢献できる事はしているのだが、逆に家族がH君に与えている影響がネガティブなものに思えて仕方がない。
まず大学進学に曖昧な許可を出したのは痛かった。H君の若い貴重な時間が無駄になってしまった。
そして、上のお姉さんは家族全員と揉めているらしく、その人間関係に疲れてしまっている様だ。
さらに、H君は20歳を超えた男性なのに、昼間に数時間外出しただけでも、母親から「一体どこに行っているの?何しているの?」と、お兄さん・お姉さん経由で電話がかかって来る。(お母さんは、最初は自分で電話をかけて来ないのだそうだ。)
H君によれば、「今は進学できていないから、よほど何かの理由がない限りは外出できないんだ。」との事だったが。
それはいくら何でもあんまりでは・・・・。
他人の私が口を出す事ではないけれど、「家族だから」と言う理由で、やる事はたくさんあるのに、できない事が多すぎる様な気がしているし、H君の勉強の邪魔になる家族間のもめごとが多すぎる。
家族の存在を全否定するつもりは毛頭ないが、少し距離を置いてもいいじゃないか。
頻繁に帰って来ることはできないようだが、大学の寮に入って勉強に集中できる環境にいる方が、きっと良い方向に向かうと思う。
「9月の始めには引っ越しになると思うから、その前に会おうよ。」と言うので、週末に会いに行って来た。
連絡が直前になったり、待ち合わせ場所を事前に指定しておらず、出かける前は若干イラついていたのは内緒だ笑
久しぶりに会ったH君は、前よりもぷっくりしていたが、思ったよりも元気そうで少しほっとした。
大学進学の状況や、住む場所の話などを聞きながら、お互いの近況報告をする。
H君はどうやら女運が悪いらしく、比較的いつも彼女がいるのだが、平均してお付き合いの期間は短い。
彼女が遊びのつもりだったり、
ケンカしたら即ブロックされて悪評を言いふらされたり、
詩を書いてその解説を送って来られたりと、
歴代彼女達は中々に濃いメンツがそろっている。
今はプライベートの時間を家族に全振りしてしまっているが、これからはバランスよくプライベートも充実させて欲しいなと思うのであった。
若いうちは恋愛も(本人がしたいなら)大事な人生の勉強である。
H君の希望のレストランに行って注文を終えると、「ああ~重かった。」と言って、プレゼントの箱をいくつか出してきた。
「3Kさん先月誕生日だったでしょ?」と誕生日のプレゼントを用意してくれたのだと言う。
しかも息子と一緒に。
この年になると自分の誕生日で大騒ぎしなくなるし、今は一人で暮らしているので、今年は忘れているに近かった。
それだけに覚えていてくれた人がいたことが嬉しかった。
H君の新たな門出のお祝いで、美味しいものを食べさせて、励ましの言葉でも言おうと思っていたら、逆に励まされてしまった。
これだから子供と言うのは油断できない。
時々、とんでもないところから、びっくりする様な喜びやパワーをくれる。それまでの全ての苦労が帳消しになってしまう様な。
アクセサリーはちょうど中指にぴったりのサイズだった。私がいつもつけている、独立記念日(=離婚)用に買った指輪と一緒にぴかぴかと輝きを放っている。
これからは、毎日、手元を見る度に二人の事を思い出して、嬉しい気持ちになるんだろうな。
H君の新たな門出を嬉しく思いつつ、勉強もプライベートも充実する事を心から願う。
H君、いってらっしゃい!