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《#夜行バスに乗って》お尻拭き職人の話

どうも。3児のパパです。
ウソじゃないです。3児のパパです。
長女さん(8歳)と次女さん(5歳半)、
3女さん(3歳半)を絶賛子育て中です。


やってしまった・・・・。
完全に締め切りを忘れてました・・・・。


ということで、締め切りを1日過ぎてしまいましたが、
当然のように投稿してみたいと思います。

以前途中まで書いてたお尻拭き職人の話2が
企画内容にぴったりだったので、
刷り直してみました。



序章

 一体いつぶりだろう。次女さんが1歳の時にディズニーランドに行ったから、4年ぶり?東京に出かけることになった。

 最近はオンライン研修ばかりだったから集合形式の研修なんて本当に久しぶりだ。しかも東京。総務からは朝一の飛行機で行けと言われたが、強気に拒否して夜行バスで行くことにした。研修は13:00から。バスで行けば東京で過ごす自由時間が増える。三姉妹が生まれてからは、コロナ禍も重なり、遠出の旅行にはほとんど行っていない。まぁ、出張なんだから、旅行とは違うんだけど。ただ、せっかくの東京だから少しぐらい自由時間を楽しみたい。

 出発時間の少し前に車内に乗り込んだ。僕の住む帳面町は結構な田舎、そして今日が平日ということもあってか、乗客は本当に少ない。座席は前から3列目か。まぁ寝るだけだし、どこでもいいやと思っていたが、あることに気づいた。

 一番後ろに赤ちゃんが乗っている。しかも双子。

 珍しいなと思い眺めていると、お母さんが申し訳なさそうに頭を下げてこられた。

「この子たち夜はぐっすり寝る派なんで、泣いたりはしないとは思うんです・・・。バス会社さんには連絡して、他のお客さんの座席とは距離を取ってもらったんですが・・・。すいません、ご迷惑ですよね。」

「あっ、大丈夫ですよ。うちも3姉妹いるんで。」

「本当にすいません。どうしても急用で、明日の朝に東京につかないといけなくなって。」

「大変ですね。」


育児をしてると、どんなに頑張っても人に迷惑をかけてしまう状況がある。実際夜泣きしてしまったら、他の乗客の眠りを妨げてしまうだろう。関係のない他のお客さんに、それを我慢しろというのも違うと思う。
ただ、それでもどうしようもできなかったんだろう。自分も人の親として、何かあったら、助けたいなと思った。


「もし泣いたらあやすの手伝いますよ。」

「えぇ、悪いですよ、そんな・・・。」

「まぁ、こういうのはお互い様ということで。」


「私が抱っこするから大丈夫だよ!」


ピョコンと小さな女の子が出てきた。
小1くらいか?双子ちゃんのお姉ちゃんなんだと思う。

「へぇ~、偉いね。いつも抱っこしてあげてるの?」

「そうだよ!だってお姉ちゃんだもん!」

「ちょっと、声大きいよ。もう寝なさい!」

「え~~~~~。」


仲のいい素敵な家族だなと思った。
とりあえずもうすぐ消灯時間なので、
会釈だけして自分の席に戻ることにした。

乗客も他には3人。お爺さんと、金髪の若いカップルが乗っているだけ。
まぁ、何とか穏便に夜が明けるといいなと思い
目を閉じた。


異変


ズドンっ!


何かが揺れたような気がした。
地震?いや気のせいか?そう思って辺りを見回すと、先ほどのお母さんがアタフタしている。

手荷物から何かを取り出そうとしているみたいだ。そうか、あの赤ちゃん、ウンチでもしたのかな。大変そうだけど、泣いてないのが救いだな。事前にお母さんがバス会社に交渉してくれていたせいか、座席は他の乗客と離れていて臭いも届かない。

大丈夫だろうと思った矢先、お母さんの異変に気が付いた。

動きが変だ。もしかして・・・。車酔い?倒れそうなお母さんが必死にお尻を拭こうとしている。

ダメだ!乗り物酔いの時にお尻を拭くだなんて自殺行為だ!もう、こっちの世界に帰ってこられなくなるぞ!やっぱり無理だ。道具を出すだけで精一杯。倒れそうなお母さんがごめんねと言いながら、何とか頑張っている。

違う、謝らなくていい。貴方は本当に頑張っている。しんどい時は誰かに頼っていいんだ!

気付いた時には体が動いていた。


「すいません。お母さん。僕が・・・拭きます・・・!」


パラレルワールド


道具を受け取り、お母さんには休んでもらうことにした。幸い人見知りもないおとなしい赤ちゃんだ。自分の子供を拭くようにサクッと終わらせよう。


そう思って、オムツを外した瞬間、それが目に飛び込んできた。

妖しく光る一振りの懐刀。

まさか、この子は・・・・。男の子????

そんな。お尻拭きを6年重ねたものの我が家は3姉妹。男の子のオムツ替えなんて未知の世界。これまでのノウハウが通じぬパラレルワールド。

お母さんが心配そうな顔でこちらを見ている。


「大丈夫ですか?」

「はい、我が家は3姉妹なので、、、。恥ずかしながら男の子のオムツ替えは初めてなんです、、、、。大丈夫です。これでも、家では毎日拭いてるんです。妻からはお尻拭き職人だね、なんて呼ばれてて。だから大丈夫・・・っていうのは、自分でも何言ってるのかよくわかんないですけど。大丈夫です。責任を持って拭かせてもらいます。」


そうだ。大丈夫。基礎は同じはず。そして俺も男の子。自分の身になって考えれば出来るはず。俺なら、俺ならどう拭いてもらいたい?俺なら・・・。

お尻拭きの基礎はたった一つ。どう拭いてもらいたいかを突き詰めること。そして正解は絶対にわからない。相手は赤ちゃん。答えを聞くことは出来ない。だからこそ、想像し、自分のベストを尽くす。それだけだ。そうだ。絶対に拭ける。絶対に拭いてみせる。


常闇


「消灯時間となりました。只今より消灯いたします。」


「え?」


不意に闇が広がった。あまりにも突然のアナウンス、からの消灯。そうか、いつの間にかそんな時間になっていたのか。

乗客は我々だけではない。眠りたいお客さんもいる。むしろ夜行バスなのだから、決められた時間には消灯するのが当然。だが、あまりにも酷なタイミングだ。これから拭こうと思った矢先の暗転。

「大丈夫ですか?」

「はい、、、何とか。家でも夜はある程度暗い中拭いてるんで、何とかなると思います。何とかします。。。」


とはいえ、このままでは正直厳しい。あまりにも暗い。手の感覚である程度までは拭けるが、細かい拭き残しまで対応できるのか。

心の眼で。というのは無理だ。俺の心に眼とか無いし、そういうんじゃない。今ある状況の中で何とかしなければ。スマホを・・・。いや、絵的に変態だ。


そう思った矢先。


「ほら、これでどう?」

お姉ちゃんがさっと立ち上がり、カーテンを開けてくれた。差し込む月明かり。月夜に浮かび上がる真っ白なお尻。なんて見事な。まるで宝石のようだ。

「ありがとう、お姉ちゃん。本当は誰かに助けてもらいたかったんだ。本当にありがとう。これで、集中して拭ける!」


なんて素敵なお姉ちゃんなんだ。

「優しいね。」

「お姉ちゃんだからね。普通だよ~。」


いつも、お母さんを助けてるんだろうな。こっちまで嬉しくなる。よし、このまま拭き進めてば大丈夫だ。


激震


気が緩むのを待っていたのか、それは唐突に始まった。


ガガっ。

??

小刻みな揺れが続く。


ドンっ!!!

今度は大きく左に揺れた。だめだ、何かを掴んでいないと立ってられない!
もしかして、工事区間に入ったのか??まるで洗濯機に放り込まれたみたいな揺れ。

くそっ、左右に振られるっ、、、。手元が安定しない。後少しのはずなのに。。。糞、諦めないぞ。このお尻は傷付けさせない!必ず無事に綺麗にして、贈り届けてやる!


ズドンっ!!!!


????


今までとは全く違う。この音。あっちの赤ちゃん?
まさかこれは・・・。

「同時多発糞・・・。」


戦う者達


ダメだ!流石に2人同時だけは無理だ!しかもこの揺れ、いつまで続くんだ。お母さんの顔色が更に悪くなってきた。さすがに加勢は期待できない。クソ、俺だけで何とかしないと。


「わたしががんばるよ。やったことないけど・・・だっておねえちゃんだから。」

お姉ちゃんっっ!!クソゥ!流石に厳しい。こんな揺れる車内で、子供にお尻を拭かせるわけにはいかない。怪我したら元も子もない。何とかできないのか!まずい!まずい!!

「もう黙っちゃいられねぇ!!(小声)」

なっ!?先頭に座ってた金髪のあんちゃん??!!


「あんたっ!(小声)」

「お前は座ってろ。まだつわりがキツいだろ。(小声)」


「なぁ、おっさん。最初からあんたらのやり取りは見てたんだ。さっきまで尻込みしてて本当にすまねぇ。俺、半年後には親父になるんだ。今は拭き方とか全然わかんねぇ。でも、なんとかしてぇ。拭き方、教えてくれねぇか。(小声)」

「・・・・へっ、何だよ。あんちゃん。勝手にただのチャラ男だと思ってたよ。こっちこそすまねぇな。あんた、最高にかっこいいぜ!(小声)」

「まずは道具の確認からだ!頼りにしてるぜ!」

「道具はわたしわかるよ!」

「お姉ちゃん、ありがとう!全員で乗り越える、否、拭き越えるぞ!!」


なんて嬉しい誤算。こんなところにも職人の卵がいたなんて。俺達は一人じゃない。絶対に拭ける!


お尻拭き職人


「おい、おっさん??!!なんか凄いことになってるぜ。量が、、、。なんていうかその、前からも、、、。やばいぜ、これ、、、溢れそうだ、、、。」

??!

しまった。よく飲みよく寝るタイプのわんぱく小僧。よりによって大噴火だったか。

「まずは落ち着いて少しずつ拭くぞ。もう少しでこっちが終わる。それまで何とか耐えてくれ。」


「うぁぁぁ!!!暴れ出してきたぁ!!そんな!どうすればいいんだよ!!やばい!やばいって!!」

「頑張って!あんた、頑張って〜!!」

まずい。
いくら志が高くてもお尻拭きは積み重ね。
産まれたての少量拭きから、少しずつスキルアップしていくのが本来の姿。
いくら何でも、いきなりの大噴火はフォロー無しじゃ流石に無理だ。

「くそっ!あと少しだけっ!あと少しだけ頑張ってくれ!もう少しでこっちが拭き終わるから!!頼む!!持ち堪えてくれ!」


ズドンっ!!!!


??

そんな、拭き終わりかけたこっちの子が、まさかの第2波だと?!


「うわぁぁぁ!!!畜生!畜生!絶対諦めねぇぞ!!!
 諦めてたまるかぁぁぁあ!!!」

「あんたぁぁぁーーー!!!!」



「まったく、見ちゃおられんわい。」


っっ?
おじい、、、さん??

「何だよじいさん!!!
こっちは今それどころじゃ、、。」

「ちょっと待って。
 その腕の傷はまさか、、、。
 あなた、、、まさか伝説の、、、。」

「まったく、引退したつもりだったんじゃがのー」


高度成長期に独自のお尻拭き理論を提唱。
日本のお尻拭きを20年早めたとされる
伝説のお尻拭き職人。
鏡面仕上げのマサさん!!

「あんちゃん、
 わしは腕がもう上がらん。
 アドバイスしかしてやれんが、後ろにつくからの。
 よろしく頼むぞー。
 あと、さっきのは最高にカッコよかったぞー。」

「じいさんっっっっ!!
 ありがとう!!頼りになるぜ!!!」


「ほれっ、目の前に集中じゃ。
一気に片付けるぞぃ。」


うぉぉおぉぉぉ!!!!!!


・・・・・


「はぁ、はぁ、はぁ。
 終わったのか???」

「おぅ、終わったよ。お疲れさん。」

「ほほほ。初めてにしてはいい拭きじゃったぞい。」

「あぁぁぁー。疲れた。しんどおおぉぉぉ、、、。」


「きいろいかみのおにいちゃーん!!!
ほんとにありがとう!!!」


「おお、お姉ちゃん。
お姉ちゃんも色々ありがとう。
本当に助かったよ。
ママももうすぐ元気になると思うから、
こっちで一緒に座ってな。お菓子でも食べるか?」


「ううん。ほんとにありがとう。
おにいちゃんたち、ヒーローみたいだったよ。」

「ええー??
そんな事ないさ。当然のことしただけだよ。」

「そうだよ。困った時にみんなで協力するのは当然だよ。
それに俺たちはヒーローなんかじゃないよ。」

「俺たちは、お尻拭き職人さ。」


結論


ふうっ。

もっと早く準備すればよかったです。


この企画も4/1までやってるんで
暇な人は遊んでくださいね~。

今年4/1の眼鏡オジサン会場はくまさん家です。

今日も頑張りましょう。

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