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『めうしのジャスミン』
ある日めうしのジャスミンは、素敵な帽子を拾います。
自分にピッタリと似合うその帽子をご機嫌に被っているジャスミン。
そんな他とは違うジャスミンを見て、農場の仲間達は気を悪くします。
「ジャスミン、おねがい」ひつじのローズがいいました。「自分だけ、みんなと ちがっているのは いやでしょう?」
けれどもジャスミンは、毅然としてこう言うのです。
「あなたは、あなたのおもうように すればいいのよ」と、ジャスミンはいいました。
「それでいいんじゃない?わたしは、わたしのおもうようにするわ。だれでも、その人らしくすればいいのよ」
まるで社会の縮図の様な農場の世界。
みんなと少しでも違うと、奇異な目で見られ、噂話をされる。
個性を尊重することが大切だといわれる世の中になってはきているものの、実際はまだまだ同調圧力も強く、枠内に収まることで安心感を覚える大人も多いのが現実です。
社会性を身に付ける様になる時期の子ども達もまた、他人と比べて自己評価をしがちです。
それはそうした発達段階だからこそ、仕方のない部分もあります。
だからこそ、そうした時期の子ども達に、「自分らしくいることこそが素敵」なのだと伝えてあげたい。
人を客観的に見ることができる様になる時期だからこそ、それぞれの素敵なところを受け入れてあげられる心を持って欲しい。
いつでもしゃんと背筋を伸ばし、自分らしさを大切にしているジャスミンは、わたしにとっても憧れの存在。
ジャスミンの様に強く居られないこともあるかもしれないけれど、心のどこかにジャスミンの強さと美しさを覚えておいて欲しいと思います。
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ロジャー・デュボアザン 作・絵
乾侑美子 訳
童話館出版 1996/07