整理回収機構と三宮一貫楼⑦
月曜は仕事(三宮一貫楼)ネタ
↑のつづきです。
整理回収機構(以下RCC)との付き合い当初から担当辰己氏が印象的に使う言葉、「うち銀行と違いますから」。
私たち親子の修羅場にもその言葉を添えるように述べて来ます。
「それでも・・・」と母親は辰己氏の言葉を疑うように続けようとします。
そんな母親に対して辰己氏は、
「奥さん、わしな。ボンが電話かけて来てくれたんは嬉しかってん。」
その言葉には私も含めて親子で、「はぁ?」な感じでした。
辰己氏は続けます。
「一貫楼さんよう頑張ってるけど、無理してるのは随分前から解ってましたよ。私らその道のプロですから。」
と入ってきた笑顔を崩さないままゆっくりと語りかけてくれます。
そして私にむけて、
「なぁボン、横のお母ちゃんの姿見てみぃ。」
見ると、辰己氏の優しい語り口に泣き崩れ、うわ言のように「すみません。すみません。」と繰り返す母親の姿でした。
「これがな。正直に生きて来たほんまの商売人の姿やで!覚えとき。」
この言葉には表面上は照れ隠しのように仏頂面を崩せなかった私も、心を打たれました。
「そしたら今月は15日にお願いしますね。それと来月も今のままやったら苦しいやろうから減額しましょ。250万円くらいにしとこか。」
またも親子で「はぁ?」な提案を辰己氏が示します。
「そんなんいいんですか?」
辰己氏がまたキメの笑顔で。
「うち銀行とちゃうねん。」
交わした会話の詳細は忘れましたが、回収を主な業務とするRCCは最大の回収を目指す組織であるということ。
繰り返しに出てくる言葉のとおり、銀行ではないのでニューマネーを出さない代わりに、われわれが打診された減額は支援の一環でやってくれたのでしょう。
あと、辰己氏が言いたかったのは、私が今回のことに味をしめて毎回屁をたれることがないよう母の姿勢を見習えということ。
母には、無理を繰り返すことで企業体力と経営者としてメンタルを削ることはよくないという警告の意味あいがあったように思います。
かくして、RCCは返済額に関しては交渉が可能ということを学習した私はお付き合い中、更に二度ほどの減額交渉を正面からお願いして、その後はこの時に比べ楽な舵取りができたように思います。
あれだけ行く前は恐れていたRCCですが、実際に付き合ってみると本当に血も涙もある回収を体現してくれたと大きな感謝を持ち始める私でした。
うちの担当在任中に辰己氏から教わった数々のことは、その後の私が経験する銀行交渉の礎としてしっかり息づいています。
対RCCは雪解けのような雰囲気だったのですが、この辺りを境に先代夫婦、とくに母との意見対立が目立ってくる時期になります。
お互いに目標は同じなのに、アプローチの違いに苛立ってしまうという同族あるあるが次回から始まっていきます。
いやだ。怖い。書きたくない(笑)
(つづく)