見出し画像

Hi-uniシャープについて

Hi-uniは鉛筆や替え芯として現在も販売されており、三菱鉛筆の製品の中で最高峰と位置づけられている。以前はシャーペン、芯ホルダーなども販売されていたが、廃番になって数十年が経ち、実物があまり出回らなくなった。ネット上の情報も少ない。

そこで、今回は、幻となってしまった製図用シャープペンシル、Hi-uniシャープについて書いていく。

※本記事は本体, 取扱説明書, Twitter, 記事, 当時のカタログなどの既出の情報を再構成してまとめたものです。 参考資料は後述。

外観

紙パッケージ、プラのケース、本体、キャップ、取扱説明書で構成される。ケースの側面には型番と本体の色のシールがある。3050, 5050はカーボンを使用しているため、「UNICARBO」の印字。2050は「PRO USE」の印字がそれぞれ見られる。

外観(Hi-uni3-3050)

説明書は小麦色が1991年、青色が1999年のもの。前者は3051ffの記載、FFmaticの芯繰り出し量の表などの詳細が書かれているが、後者は3051ffの記載がなく、説明自体も簡略化されている。3051ffは少なくとも1999年までに廃番となったようだ。

本体

ハイユニ・シャープは製図専門家用として、低重心設計思想に基づいて作られた。そして、書きやすさを求めた結果、新素材、加工技術、新機構にこだわった最高峰のシャープペンシルが生まれた。

発売は1983年。2000円モデル、3000円モデル、5000円モデルで展開。ぺんてる社のメカニカが3000円なので、当時でもいかに高級だったのかがよくわかる。

上から5-2050(黒), 5-3050(グレー), 5-5050(黒)。3051ffと5050は、口金付近のリングを人差し指で軽く手前にノックすることでFFマチックが作動、芯が繰り出される。

綾目格子が彫刻されたステンレス製のグリップ(直径8.2mm)は、表面が摩耗しにくく、傷に強い設計となっており、長時間の筆記でも疲れを感じにくい。

カーボン・グラファイト軸(unicarbo)を採用した3050, 5050は、より低重心で、しなやかな書き心地を実現した。

そして、FFマチック(指先ノック, Fast-Finger matic?)により、軸を持ち替えることなく、指先で軽くノックすることで芯を繰り出すことができる。この機構をペン先に搭載することで、より低重心になるというメリットもある。

このような特長をまとめたのが以下の表である。品番ごとに軸の素材、機構の有無といった大きな違いから、クリップの色、印字、カラー展開といった細かな違いまで様々だ。

ハイユニ シャープの機能と特長(説明書より)

実態

高級な製図用として売り出されたハイユニだが、1998年のカタログ掲載を最後に、製造中止となった。ハイユニにはいくつかの欠点があった。
1つ目は、FFマチックの壊れやすさだ。内部のスプリングやラバーパーツが劣化などが原因で痛むらしい。そのせいで何度も修理に出している方もいる。また、FF関連の繊細さから、口金だけが別売りされていたそう。この壊れやすさのせいで、3051ff, 5050を入荷する店は少なかったようだ。(2050, 3050は入荷する店舗はそこそこあったそう。)

基本的にボールチャックを採用しているシャーペンは壊れやすいため、仕方ないといえば仕方ない。しかし、指先でノックするためだけにボールチャックを採用し、高価なコストがかかるのは解せない(それならオートマチック機構でいいじゃん)という声もある。

カタログより。FFマチックの内部の模式図。

※ボールチャックとは?
”ボールチャックでは芯を引き抜く方向ではチャックがリリースされるが、芯を押す方向(紙面接触時)では芯が後退することなくホールドされる。”
通常はオートマチック機構を持つシャーペン(オートマック、テクノマチックなど)に使われている。

シャー坊さんの記事より引用(https://note.com/mpgairon/n/nc9608c4bb5f5)
パイロット公式サイトより。オートマチック機構とボールチャックの説明図。

※FFマチックの詳しい仕組み
三菱鉛筆ハイユニFFマチック | アフィリエイトの文具評論家ブログ実装版The Critique of the Stationeries with an Affiliate blog (fc2.com)

二つ目は値段の高さだ。最低でも2000円、最高5000円の値段設定は高めである。グラフ1000といったクオリティの高い製図用が1000円で購入できる環境では、ロングセラー入りが難しいのは容易に想像つく。

FFマチックのDNAを持つ新たな現行品の登場

このように、FFmaticは実用に向かないロマン機構であり、そのまま廃番になって終えたことがわかる。しかし、この機構は決して無駄ではなかった。

2008年、三菱鉛筆はクルトガを開発し、9000万本を超えた大ヒットとなった。芯が少しずつ回転することで常に尖った状態で書き続けられる「クルトガエンジン」を搭載したシャーペンだ。

このクルトガエンジンとFFマチックから着想を得て進化したのが「自動で芯が出るクルトガ」、通称「クルトガダイブ」である。

以下が自動で芯が出る仕組みだ。
らせん階段みたいな青の部品の中で、筆記時のクルトガエンジンの回転によりピンクの突起が登っていく。やがて1回転してオレンジにたどり着く。高いところ(オレンジ)から低いところ(青)へ落ちる。その落差でノックされ、芯が出る。(文章では説明難しいのでしーさーさんの動画見てください)

クルトガダイブ公式サイトより。

これは、FFmaticの「指先でノックする」という発想を「クルトガエンジンが自動でノックしてくれる」という形に進化させたものともいえる。同時に、オートマチック機構の課題であった「紙面とガイドパイプがこすれることによる筆記時の違和感」が解消されている。

Hi-uniシャープの復刻の可能性はかなり低いが、通常販売が決定したクルトガダイブくんが意志を受け継いで、今後も頑張ってもらいたい。

参考資料

三菱鉛筆ハイユニFFマチック | アフィリエイトの文具評論家ブログ実装版The Critique of the Stationeries with an Affiliate blog (fc2.com)

Pentelが作った究極のシャープペンシル「orenznero」 #ぺんてる #orenznero | Digital Life Innovator

三菱鉛筆「クルトガダイブ」の自動繰り出し機構を分解して調べてみた|シャー坊|note

KURUTOGA DIVE | 三菱鉛筆株式会社 (mpuni.co.jp)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?