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春告魚を、盛夏に頂く

 近くのスーパーで尾頭付きの春告魚を見つけた。
このスーパー、どちかというと一般消費者向けというより、業務用スーパーの部類に属する為、青果はもとより精肉鮮魚に至るまで、一品每の内容量がかなり多めで、独身者や核家族向きとは言い難い。
 しかしその価格と鮮度は申し分なく、特に定休日明けの木曜日には、
他のスーパーでは切り身でしかお目にかからぬような、体長1メートル以上の太刀魚だったり、鯛、鰤、平目等の大型魚が、一匹なりで販売されることが珍しくない。
 
 商店街で店を構えていた昔の魚屋は、かち割り氷を敷き詰めた冷蔵ショーケースに生前の姿のままの魚を並べて売っていたが、最近のスーパーはその殆どが切り身で売られている。


 以前、「近頃の若者のなかには、鮭やサバ等の大衆魚と呼ばれる魚が、切り身の姿のまま大海原を泳いでいると勘違いしている人が本当にいる」という冗談のような話に驚愕した記憶があるが、トリニクってナンタラ?というテレビ番組まである昨今、大袈裟に驚くほどの事ではないと若者から一蹴される程度の話なのかもしれない。
 肉より魚の私は、何度かそれらの魚を目にし、買って帰って食べたい衝動に駆られたのだが、切れ味のなまくらな文化包丁しかない我が家では、一匹なりの大型魚をおろすなど、土台無理な話と諦めざるを得ないのが実状だった。

 しかし、しかしである。さほど大きいものでなければ、煮付けか焼き魚なら、鱗を落として、内蔵だけを処理すればなんとかなるという盲点に気付いてしまったからいけない。
 
 体長30センチオーバーの本メバル、税込598円で購入し、勢い勇んで自宅まで持ち帰り、クックパッドのレシピを、斜め読みして作り上げた一品が上の煮付けである。
 冷蔵庫の隅で燻っていた白ネギを白髪ネギならぬ、ひやむぎ程の太さの細切りにし、見てくれだけはいっぱしのメバルの煮付けを完成させた。
 そして魚本来の味を損ねぬよう薄味に仕上げたお陰で、驚くほどいい感じに出来上がったこのメバル。
流石、煮魚のレギュラーメンバーだけの事はある。素人がこさえてもそれなりに旨いのである!
 
 大手スーパーでもこの魚の近隣種にあたるガヤメバルという魚がよく売られているが、本メバル、金メバルと言われるいわゆる正統派メバルとこの魚は、全く別物と言っていいそれほどこの本メバルは繊細な味なのである!   (多分)

 
 円らな瞳のメバルちゃん、近年はソルトルアーフィッシングの格好のターゲットとして釣り人からも絶大な人気を誇る。
 日本全国、正に津々浦々、港の堤防からでも、乗合の釣り船からでも気軽に釣ることのできる魚種であり、また針掛かりした時の小気味いい引き味は独特のものがある。
 然るに残念ながら、このサイズのメバル、素人には滅多につり上げることなど叶わないという事実を最後に伝えておかなければいけないだろう。
残念ながら自分は、リリースサイズのメバルちゃんしか釣ったためしが  

 ない

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