恋愛成就のチケット 第四章
満を持して発売されたグレートトラバースの新曲は
TAKAKO FOREVERMORE だった
サヨナラはいらないよ
いつかまた元に戻せるさ
寂しくなったら思い出しておくれ
あの束の間の幸せを
今はそっと
背中を見送るよ
いつまでも待ち続けるのは
俺の勝手なんだから
TAKAKO
男っていう生き物はね
どんなに離れていても
愛に生きられるものさ
TAKAKO forevermore
自分のことを歌った歌だと思うと隆子は、無性に可笑しくひとしきり笑ったあと、何故か込み上げてくる何ともいえない切ない思いにさらされた。
「どいつもこいつも、そんな気持ちでいたんだったらどうしてもっと早くに言わないのかな?」
「今ごろになってそんな風に蒸し返すの反則じゃん」
どう受け止めていいのか答えが見つからないまま隆子は、久しぶりに自分の方から浩に宛てLINEを送った。
今、聴いたよ、
メロディは別として歌詞はどっから見ても昭和歌謡じゃん!
それにお前、そんな思いでいたんだったらどうしてあの時私を棄てた?
はっきり言って今ごろになってそんなこと告白されても返答に困る
いけ好かねえ野郎だな全く
本当の自分の気持ちとは裏腹な、賛辞を送るというよりむしろ、浩の行動を咎めるような口調のメッセージを書き上げたはいいが思い止まり、送信せずに削除しかけたところに、時を同じくして浩からの返信が届いた。
それはお前の勘違いだよ。
隆子の事を俺のほうから棄てただなんて一度も思った覚えはない。
俺だって突然家に帰ったらお前の持ち物一切がなくなってて、もぬけの殻になっていた部屋の様子に愕然とした記憶しかない。
ほんの些細な、行き違いが招いた別れだった。どちらかの心が他の異性に傾いたとか、一緒に暮らさないと見えてこない生活習慣の違いや見解の相違が原因の別れでなかったことが、今になって初めてはっきりした。
言葉足らずの二人のうちのどちらかが、素直に相手に対して思うところを打ち明けていたなら二人の関係は違った方向に向いていたのかもしれない。
何処で行き違ったのか、どんなに思いを巡らしても答えが見つからない隆子の思いに、示し逢わせたかのように喫茶店のママ洋子から突然の電話が入った。
まだまだこれから
お詫び 自分で書いておきながら第三章で主人公の名前吉岡隆子を、松井隆子としてしまいました。(私にはよくある話です)
皆さんに気付かれぬようこっそり編集し直したご無礼をお許しください。