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【時代】 中島みゆき

今はこんなに悲しくて泪も枯れはてて、もう二度と笑顔には,なれそうもないけど・・・・・・

大石吾郎のコッキーポップ『ヤマハポピュラーソングコンテスト、通称ポプコンの入賞曲を中心に流したラジオの深夜放送』が時代との最初の出会いである。

恥ずかしながら今、忘れかけていた記憶を甦らすために、インターネットの情報を参考にして書いている。まず初めに大石のオープンナレーションについて書かれた一文が目に留まり懐かしく思い出されるので、ここに書きうつしたい。

『黙っていれば友達になれない、叫ばなければ消え去ってしまう。私たちが生まれてきた時から育ててきた何かを伝え合うために、ちぎれかけた世界の心と心を繋ぎあうために、私たちの歌が今ここにある』

誰が思いついたのか知らないが名文である。40年以上前の10代だった頃の私が、目を閉じると瞼の奥で私に、笑いかけてくる。番組の構成は、大石のナレーションに続きその年のポプコンの入賞曲のイントロへとつながったと記憶するが、ある日の夜、突然耳に飛び込んできたフレーズが「今はこんなに悲しくて・・・・」歌の挿入部分だった。それまでにも小坂明子のあなた(失礼な話だが初めてこの歌を聞いた時、どこのうら若き乙女が御歌いか? とドキドキさせられた思い出がある)や、その後の本人からはイメージが湧かない葛城ユキの木曽は山の中とか、素晴らしい名曲の数々が歌い継がれていたが、中島みゆきの、「時代」を聞いたあの時の驚きは、はっきりと昨日のことのように甦る。ウイークデーの深夜、オールナイトニッポンの前に放送されたコッキーポップは、丁度高校受験と重なった時期で、欠かさず聞き続けた。当時使った安物のポンコツラジオは時に怪しい外国放送の電波を拾い肝心なところで茶々を入れたため、腹に据えかねよく八つ当たりしたものだった。

時代は、それまで聞いたことのない類の歌だった。他のどの歌とも違う独特の世界観のようなものが、当時からはっきりと歌の中に主張されていた。いきなり始まる独白のような歌詞、明日への希望を抱かせる耳障りの言いメロディー、中島みゆき=時代のイメージはその後も長きにわたって続いた。当時高校生だった私は、この歌の魅力をクラスメートにも知ってもらいたくて、林間学校へ向かうバスの中で歌ったことや、友人の結婚式の披露宴で熱唱?し、歌詞の内容が披露宴には不向きだと顰蹙を買った思い出がある。40年以上たった今も変わらず活躍する彼女のことを、デビュー当時から知ることができたことを嬉しくさえ思う。時代をリアルタイムで、自宅のベッドの中で一人聞けた私は、ある意味幸せだったような気がしてならない。

この文章をお読みいただく皆さんも、この先何かで心が折れかけた時、ぜひもう一度聞き返してほしい。特効薬まではいかないにしろ、傷ついた心の諸症状の緩和ぐらいの効果は期待できるかもしれない。


追記 今でも歌詞カード無しで口ずさむことのできる曲         世良公則&ツイスト(あんたのバラード)               NSP ニューサディスティックピンク(八十八夜)          円広志(夢想花)           etc・・・・・・

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