穴の中の君に贈る#毎週ショートショートnote

「しっかりしろ！」
大きな声で、僕は目を覚ました。そこには見知らぬ中年男性が…。
「危ないところだった。掘り出せてよかった」
九死に一生をえた僕に、男性は尋ねる。「なぜ穴を掘っていたの？」
「ヨコイさんごっこをしていたんです。そしたら穴が崩れて…」
男性の表情が曇った。
「なぜ俺の名前を知っている？さてはスパイだな！」
「違います！えっ、アナタは旧日本兵のヨコイさん？するとココはグアム島ですか？だとするとアナタは1972年に発見されて日本に帰れるんですよ！」
「何を訳のわからん事を！出ていけ！」
ヨコイさんに追い払われ、ジャングルを駆ける僕。やがて呼吸が苦しくなり、意識が遠のいていった。

　「大丈夫？」…体をゆすられて目が覚めた。妻が不安げに覗き込んでいる。
「うなされてたわよ。ヨコイさんごめんなさいって…」
…夢か。確か、あの時一緒に穴を掘っていた奴がいたはずなのだが。どうにも思い出せない…。あれから50年、キミはずっと穴の中か。

（410文字）

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たらはかに様の企画に参加させていただきます。