消しゴム顔 (バレエショートショート)
ジゼル役の藍は狂乱の場が演じきれぬ。恋人に騙されたと知って死ぬのに。ウィリになって次の幕に繋ぐ重要なシーンなのに。ちなみにウィリは若い女性の幽霊でロマンティックチュチュを着て踊る。
先生は冷たい。
「演技が下手ね。ただの無表情ではダメよ。人間の顔は消しゴムじゃないのよ」
トイレで泣いていると奨励さんが小さな消しゴムをくれた。
「これを使うと余計な表情が消えるヤツ」
藍は無心に白紙に消しゴムを使ってすべてカスにした。気分転換になった。先生にもう一度踊らせてと願う。
ところが様子がおかしい。先生も相手も周囲の顔がない。なんと全員がのっぺらぼう。鏡を見ると藍の顔もない。ショックを受けて呆然とした。先生の声が飛んだ。
「いいわ、続けて」
同時に藍もコツを掴んだ。こういうのは上手も下手もない。理解した瞬間、藍も皆も顔が戻った。そのまま恋人への恨みを込めて狂う。
「よかったよ」
藍はほっとする。奨励さんにはお礼にグミをあげた。
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下は狂乱のシーン。ジゼル役のバレリーナ、恋人に裏切られて死ぬ女の情念をバレエで感じてください。
ヌニェス、約3分(抜粋版)
もう少し長いのがよければ、オシポワのこれを。(約8分)
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