違法の健康 (バレエショートショート)
大人バレエをはじめた生徒の一部はバレエレッスンの中毒者になる。始めた頃は恐々でもすぐにレッスン回数も増やし発表会にも出るようになる。
その中の1人に女医のサツキさんがいた。70歳。ずっと医療の第一線で働き最後に本当にやりたかったことをしようと決めた。それがバレエ。
しかし無理が祟って膝に負担がかかった。サツキさんは、レッスン前の更衣室で膝に痛み止めの注射を自分で打ちレッスンに臨む。
先生はサツキさんにストップをかけた。
「お気持ちはわかりますがきちんと治療をすませてください」
サツキさんは反論。
「これは違法ではありません。しかも私は医師の資格保持者です」
先生は拒否。
「いえバレエでは違法です。あなたが医師だろうが女王だろうがダメです」
サツキさんは泣いた。先生も涙ぐみその肩を抱く。
「ずっと待っていますから」
サツキさんは、ストレッチクラスに変わりバレエは見学だけにした。それでも上達はすると先生が諭したから。
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