遺品の中にあった、折り畳み式の携帯電話に画質の粗い写真が入っていた。
もう会えない人は、一緒に写っている二人の方に身体を向けながら一番左に立って笑っていた。

その写真の光景は、私にとって記憶にはない場面だった。そして記憶にあろうがなかろうが、写真はたった今現実に存在したばかりで、過去でもなく時空を超えてもなくひたすらに目の前にある光だった。この瞬間この場所に存在を証明するただの光だけがあった。

確かにそこにいた彼を思い出す。もし宇宙に太陽がなければ、世界に光が当たらなければ、私は彼に反射する光を認識できず、彼の存在をこの瞳に認めることはなかっただろう。触ればそこにいたかもしれないが、どんな形の顔をして、どんな色の皮膚なのか、わかるはずもなく、そうするとあの目尻の下がった、日本人の平均よりも少し色黒の彼が、そこにいたけれどいなかったことになる。

この携帯は、もういない彼のことをよく知っているなと思った。何度も見たが、少し粗いけど、彼だった。自ら発光する携帯の液晶に、彼の光だけが閉じ込められていた。

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